言い訳
「「ごめんなさい!」」
私達は向き合って同時に謝った。シュー様は、ごめん、だけだったけど。
私達は元の宿に戻ったものの、扉が壊れてしまっていたから別部屋を用意してもらった。けど、部屋がどうも足りなくて私だけ1人部屋を使わせてもらい、他のみんなは2人部屋で雑魚寝するみたいだ。
リード様やナッシュさんは後処理で走り回っている。シュー様はすこしだけ抜けて来たらしい。
「戻るのが遅れてごめん、こんなに怪我をして…」
私の腕や膝には転んだ時にできた擦り傷がいくつか出来てしまった。けれど、もし拐われたら、と思うと安いものだ。手当ても終えて包帯を巻いてもらっているからちょっと大げさなくらいだ。
ううん、と首を振った。
「シュー様達が間に合うように急いでくれたおかげで助かりました。本当にありがとうございました」
シュー様は無言だ。奥歯を噛み締めているようだ。
あの、と私は尋ねた。
「エリゼさん達は大丈夫でしたか?」
「ああ、彼女の家に身代金要求するつもりだったらしい。かすり傷ひとつなく無事だよ」
良かった、と胸を撫で下ろした。
それより、とシュー様は私の手を握った。
「どうしてさっき僕に謝ったの?」
「…その、助けてもらった時、すごく怒っていたみたいだったから。心配をかけてしまって申し訳なくて」
「リィナのせいじゃない。あんな罠に引っかかった僕達が悪いよ」
「でもエリゼさんの件も時間がなかったから仕方ないです」
私は手を握り返した。シュー様のせいなんかじゃない。絶対に。
「リィナ」
「はい」
シュー様は真剣な顔をして私を見た。
「さっきロニーから状況を聞いたけど、きみがあんな無茶をする必要はなかった、必死だったと思うし、追い詰められて判断力が落ちていたとは言え、山賊を煽るようなことはするべきじゃないよ。…今度もし同じ状況になっても絶対無茶はしないでほしい。僕が絶対助けに行くから」
「…でも」
「リィナ」
顔が近づいて唇ごと言い訳が食べられた。
ぽーっとなった頭でシュー様の真剣な顔を見る。
「きみは僕のすべてだ。それを忘れないでほしい」
私は赤くなりながら頷いた。




