帰還
私達は山賊に後ろ手で縄に縛られて広場に集められた。ロニーも身代金が見込めると思われたのか、隣に居る。他にも年頃の女の子を中心に何人か集められていた。言うまでもなくみんな泣いている。掠奪された品物もその辺に無造作に置かれている。
「姉ちゃんのバカ…」
「ごめんなさい、ロニー」
顔を腫らしたロニーと小声でこそこそと話す。近くに見張りが居るからだ。
「少しでも時間稼ぎがしたいな」
「…ロニー?!あなた何言ってるの」
「姉ちゃん、…僕は後で為す術なく殺されるくらいなら今の冒険を選ぶよ。兄ちゃん達だって出て行ってからかなりの時間が経っている。そろそろ帰ってくるはずだ。実力はわからないけど騎士団に所属しているくらいだ、3人共訓練を受けたプロだし、言っても素人の寄せ集めの山賊に遅れを取ることはないだろう、今のところ幸いみんな抵抗せずに従っているようだから、まだ死人は出ていない。仕掛けるなら今しかない」
「わかった。でも今度は私がする」
「?!姉ちゃん、何を」
「だって私なら最悪今は殺されないけど、ロニーが次何かしたら殺されちゃう。お願いだから今度は私の言うことを聞いて」
そのあと少し相談をして、山賊が帰る段取りを取ろうとしている時に行動に出た。
手は縛られているけど、足は縛られていない。
私は無理な体勢から起き上がると森に向かって走り出した。
おい待て!という言葉を背に走りだす。
走って走って。
森に入る直前で引き倒された。
「もう逃げられないなぁ?」
殴られる、と目を閉じたその時に風が走った。
「…リィナ」
「シュー様?」
息を切らせて無表情のシュー様が見下ろしている。私はぬかるんだところで、転んでしまって全身ドロドロだ。恥ずかしくなって少し目を逸らした。山賊がシュー様の足元で事切れていた。
あの一瞬で?ゴクッと息を飲んだ。
「なんであんな無茶をした?」
シュー様は縄を切って私を横抱きにすると顔を近づける。
「きみが追いかけられているのを見て心臓が止まるかと思った」
「ごめんなさい。時間を稼ぎたくて」
「…また後でゆっくり話そう。すぐに片付けるよ」
その後、シュー様達の圧倒的な強さに山賊達を制圧するのにそう時間はかからなかった。




