17:あさごはーん!
「というわけでおめでとー!」
「……ぁ、あの。今朝の五時なんですが。」
「ねむ……、プルモどこぉ……。」
「Zzz……。」
ん? あ、ほんとだ! いやごめんごめん。最近全然寝てなくてさ! 今日も徹夜してたの! そしたら時間感覚狂っちゃったみたいで……。マジごめんね♡ でも朝食食べ放題だからゆるして♡ あと畜生は寝るな♡
昨日メスガキの課した中間試験を無事突破した二人。折角だからイスズちゃんが大いにお祝いしてあげようと思ったんだけど……、運悪くお仕事が重なっちゃってね? 宇宙人がコンニチワして来たと思ったら、大空に異次元と繋がる扉が開いて『この星が我々が頂く!』みたいな奴が来て大変だったのの。
まぁ実際はコンニチワのコの時点で消し飛ばしてるし、異次元の方も『こ』を言い終わるよりも速く消し飛ばしたから問題は無かったんだけど、その後処理で色々手間取っちゃってさ……。
「晩御飯ちょっといい所のホテルをサプライズで取ってたんだけど、メスガキの方も急用で無理になっちゃったから泣く泣く断念したのよ。サプライズだから伝えてなかったけど、何もしないのは駄目でしょう? と言うことでイスズちゃんが手ずから朝ご飯作ってあげたってわけです。」
どやどや、と胸を張ってみるが、まだお眠なのか二人とも目をしょぼしょぼさせている。……い、いやほんとごめんね? でもこれ見たら多分許してもらえると思うから……。そう言いながら、魔法で隠していた机をぱっと開く。
最近滅多に自炊しないから久しぶりだったけど、結構頑張ったんだよ?
炊き立ての新米9升でしょ、味噌と具を変えた5種類くらいの寸胴味噌汁でしょ、砂糖塩出汁チーズの卵焼きピラミッドでしょ、時間加速して急速漬け込みしたお漬物軍でしょ、あとはパリパリに焼いたソーセージをたらふく……。
あ、他に食べたいのあったら言ってね? パン派だったらそれ用意するし!
「……凄い量。目、冷めちゃった。あ、これで大丈夫です。ごはんすき。」
「朝から凄い豪勢ですね。……いや量おかしくない?」
まぁ余ったの全部イスズちゃんが食べる前提で大量に作ったからねぇ。
あ、残しておこうとかは気にせず沢山食べてね。まだまだ成長期でしょ二人? なら体重なんか気にせず食べるべきだし、魔法少女は体が資本! 動いた以上に食べなきゃスタミナ不足で倒れちゃうからね!
「さ! 気にせず食べて。あとそこの畜生今すぐ起きなかったら飯抜きじゃなくて“チタタプ”にするけどいいか?」
「ぷ、プルモッ!? 今すぐ! 今すぐ起きて! 朝ご飯になっちゃう!!!」
「プもッ!?」
あら叩き起こされちゃった。残念。幼児用の椅子も用意してるからそれ使えよ畜生。
……そういえば妖精って食べたら美味しいのかね? 別に食べる気はないけど、ちょっと気になりはするな。どうせアイツ、元私の妖精程度だったら喰われても何の影響もなさそうだし、こんど見つけたら素揚げにでもして食べてやろ。
そんなことを考えていると、ゆっくりとだがちゃんと食べ始めてくれる2人と1匹。一応畜生用に幼児用のスポーンとかも買っといたんだけど、ちゃんと使ってくれているようだ。うんうん、美味しそうにしてくれてるし、作ったかいがあったよねぇ。
っと、イスズちゃんも食べよー。
「あ、そういえばなんだけど。ちゃんと2種類必殺技作った?」
「「2種類、ですか?」」
「ぷ?」
ありゃ、その感じまだメスガキも教えてない感じか。
昨日最後に必殺技の打ち合いみたいなので試験終わったでしょう? 結局メスガキに押し負けて二人とも吹き飛ばされたけど、合格は合格。それは良かったんだけどちょーっと『見た目』に寄り過ぎてる気がしてね?
「そもそもさ、必殺技って2つあるのよ。周りに人がいて誰かに『見せてあげる』用の必殺技と、文字通り『殺すため』だけに使う必殺技。」
私達魔法少女はみんなから平和を守る戦士的な役割もあるけれど、同時にその精神を守るアイドル的な役割も持っている。
つまり周りに誰かいる時の戦闘では、最後のキメ技としてめっちゃキュルキュルキャラランな技で締める必要があるのだ。イスズちゃんレベルに強くなって一撃で蒸発! とかできれば問題ないんだけど、目の前で血まみれの子が『大丈夫ですか?』って言いながら手を差し伸べてきたら怖いでしょ?
「だから威力はあるけど見た目重視な技と、殺傷力だけ高めた技を持っておいた方がいいよーって感じ。キャラ映えするしね! 確かルミナちゃんはもう一個いいのあったよね? 昨日使ってた奴。」
「あ、はい!」
「それじゃちょっと威力不足だから、もっと相手に慈悲の欠片も与えない無情な技を一個作っておこう。んでマシロちゃんは、両方一緒に考えよ。って感じ。今できるの木々を成長させるだけっていう見た目地味な奴だけでしょ?」
対メスガキのときた単なる魔力放出で何とかしたけど、あれじゃ威力も見た目も一切ダメダメな通常攻撃だ。……あ、別に責めてるわけじゃないからね? 軽く理論聞いただけで、ぶっつけ本番の始めてであれだけやれりゃ十分だ。むしろ才能あるって褒めちゃいたいぐらい。
ま、次の目標として頑張っていきましょうねーって感じ。
「「はーい。」」
「うんうん、良いお返事。」
「あ、お味噌汁美味し。……それにしても威力かぁ。」
ちるちると麦みその味噌汁を飲みながらそう呟くミズキちゃん。
地元で編み上げたミズキちゃんの必殺技、結構カッコいい感じだったよねぇ。こう幻影で一気に3人に分身して、そこから光の剣で一気に切り裂くか、3人同時のビームを放つ奴。アレ普通に切ったり撃ったりする方が威力あるけど、アドバイス受けて三人に分裂した感じでしょ?
「あ、はい。折角光で幻影作れるのなら、それを上手く使えばーって。」
「確かに見た目には良いし、錯乱にも使えるけど、“威力”って面ではあんまりだよねぇ。……というかミズキちゃんの場合“光速”でもの投げつけた方が強いと思うよ。」
「「あぁ……。」」
話を聞いていたマシロちゃんも一緒に、頷く彼女達。
この前メスガキが実演してたけど、光速で物体を放射するって結構な大事だ。魔力で周囲への影響を抑えることが大前提だが、光よりも速く動けるか、異常に勘が良くなければそうそう避けることが出来ない攻撃だ。まだちょと構築・構造のお勉強が足りないから難しいかもだけど、その再現だけ目指してやってみるってのは十分に良い話だと思うよ。
「がんばりま……、あ、卵焼きおいし。」
「ですねぇ。ごはんもいいかおりぃ」
「ぷもぉ」
「……寝起きだからやっぱみんなぽわぽわしてるな。食べ終わったら二度寝する?」
「「「したいですぅ」」」
あー、だよね。
んじゃ今日イスズちゃんに付き合ってた、ってことで学校には午後からの登校にするよう伝えておくから、食べ終わったらそのまま寝ていいよ。仮眠用のおふとん敷いておくし、食べ終わったらもうここで寝ちゃいなさいな。うんうん、ご飯と睡眠! 大事だよね!
……うん? メッセ? あぁ怪獣出たのか。
後輩たちと楽しくぽわぽわ朝ご飯してる時に?
「コロス……ッ!!!」
「いすずさーん、お味噌汁おかわりくださーい。」
「あぁはいはい。どの具の奴にする?」
「なめこがいいですー。」
◇◆◇◆◇
とまぁ後輩ちゃんたちと泣く泣く別れて怪獣討伐しに来たんだけど……。
「おおくなぁい?」
「あ、イスズさん!」
「およ? あぁ現地の子か。はろはろー、とりあえず避難誘導よろねー!」
「りょです!」
場所としては福井辺りの海岸線、所謂発電所が密集している重要地帯だ。
関西の電気事情を支える大事な場所。たまに他国の魔法少女とか組織の怪人たちが襲撃にくるので、専属の魔法少女とかが防衛についてたり、専用のレーダーとかが配置されててすぐに情報がイスズちゃんに飛んでくる場所なんだけど……。
(怪獣がこんなに攻め込んでくるのって滅多にないよなぁ、)
ざっと見渡してみた感じ、30体ほど。
いくら重要とはいえ、こんな敵が集まってるのは滅多に見ない。大体東京のある関東に集まったりするからねぇ。海をぷかぷか泳いできたのか、海底から歩いてきたのかは知らないがそうそう見ない数の怪獣が徒党を組んでこっちに向かってきているのを見ると、ちょっとシュールで笑ってしまう。
(しかもまぁ統一性のない集団で。……喧嘩せずに来たのか?)
私達が怪獣って呼んでる存在だけど、まぁ結構色々な分類が存在している。宇宙人たちが持ってくる侵略兵器としての怪獣もいれば、なんか異次元からご飯探しにやってきたはぐれ怪獣、異次元の上位存在に飼われてる奴もいれば、どっかの組織が改造した怪人が巨大化したりなど、まぁ色々だ。
基本的に徒党を組んでも十を超えることは少なく、合ったとしてもある程度似通った奴らがやって来る。でも今回はトカゲみたいなやつからロボみたいなやつまで、より取り見取りってやつだね。
「ちょっと何かの陰謀みたいなものを感じるけど……、まぁ私に連絡飛んできたってことは田中も把握してるし、お上も把握済み。“例の案件”もあるけど、私は現場の人間。難しいことを考えるのは任せて、イスズちゃんのお仕事しましょうかねぇ。」
そう言いながら軽く構えようとして、やっぱりやめる。
一瞬このままビームでも撃って消し飛ばしてやろうかと思ったが、そうすると必要以上に海水を吹き飛ばしてしまう。ほら一気に水がなくなるわけだから、それを埋める様に海水がドバーってね? かといって殴り飛ばしちゃうと、ちょっとした破片が海に落ちたり、血やオイルが流れて環境破壊になっちゃう。
人にも自然にも優しいイスズちゃんとしては、ちょっと避けたい行為
となると……。あ、そうだ。久しぶりにアレやろ。
「魔力で竿を作りまして……、ぽいー!」
軽く魔力で釣竿を作り、先端から伸びていく30の釣り針。針じゃなくて魔法的な“結合”だから、接した時点でももうイスズちゃん以外取り外しが出来ない優れものだ。無事全部くっ付いたことを確認できれば……。
一気に引き上げるのみ。
「ふぃーっしゅ!」
一斉に海中・海上から引き上げられ、大空に吹き飛ばされる怪獣たち。
流石イスズちゃん。料理だけじゃなく釣りもできるなんて超天才ね。折角だから魚拓を取りたいところだけど、ここにいる奴らは全部100m未満の雑魚どもだ。宇宙で数kmレベルのをぽかぽか倒してるイスズちゃんからすれば、記録にすら残らない稚魚ね!
と言うことで最後に魅せる用の必殺技! ラブラブイスズちゃん昇天砲(今命名)をぶっ放して全部消し飛ばせば終わり! 閉廷!
「うんうん、後は津波対策用に軽く防波堤を魔法で作っとけばお終いかな。ふぃ~、帰って二人と朝ご飯……。なんかまた携帯なってるんですけど。」
無視していい? ダメ? 仕方ないなぁ。
あ、田中か。
「もしもーし。不機嫌なイスズちゃんでーす。」
『田中です、現在5方面から侵攻を受けております。どれも怪獣級、ポイント送信します。』
即座に脳のスイッチを切り替え、体内に巡らせている魔力の純度と速度を上げる。
送信されるよりも速く意識を耳に割き、場所を特定。即座に移動し全怪獣を先ほどと同じ要領で消し飛ばしていく。いくつか田中から送られてきたポイント以外の侵攻もあったが……、ウチの索敵網の穴を突かれたか? 確実に組織的な動きだなこりゃ。
「撃滅完了、指定された以外の地点を送っておく。上に対策するよう伝えといて。」
『了解しました。また上層部も組織的な侵攻と判断しました、早急な対応と解決を求めています。』
「はいはい、いつも通りね。」
イスズちゃんが全部解決してあげるから、法的な処理とか外交的な処理とか国連への報告とか。面倒なこと全部上が頑張って何とかしますよーってやつね。
おけおけ。
「まじかるまじかる。さてはて、今回は誰が喧嘩売って来たのかなぁ?」
今回も生まれてきたことを後悔させてあげようねぇ。
〇イスズちゃんの料理
どこかのインドのメシマズ女神魔法少女とはちがい、ちゃんとレシピ調べてそのまま作る人。あまり個人の時間が無く急いでいるので外食がメインだが、自分で作る時は結構凝るし、途轍もない量を作るタイプ。そのためお米などの一気に沢山つくると美味しい奴はかなり上手く出来がち。
ナチュラルに時間操作(カレー鍋の時間を加速させて秒で一晩寝かせる、一定温度で一定時間加熱するのを秒で済ませる)とか可能なので、熟成系の料理も得意。ちなみに今回の料理では、マシロちゃんが砂糖の卵焼き、ミズキちゃんが麦みそと大根の味噌汁、畜生がソーセージを気に入った模様。
ちなみに余った分は帰って来たイスズが全部たべました。




