12:メスガキ爆散
「田中。」
「どうかしましたか、イスズさん。」
「なんで実戦ダメなの!?」
「流石に偏りますので……。」
今日もお天気修行日和。朝からに日本に出て来た怪獣を4体くらい倒したから準備運動も完了済!
この前悪魔帝国とか言う雑魚は滅ぼしたけど、まだまだ変な秘密結社ってのはたくさんいる。なので他の子の経験値の為に残している奴をぱっとリストアップして、二人にとって『確実に勝ち切れる』敵を用意しておいたって言うのに……!
うにゃー! イスズちゃんの用意した敵を倒せないと申すか! 有罪! ちけい!
「実戦だけやって成長できるのは貴女のような例外だけです。基礎訓練の指示は良いのですが、それと実戦だけでは色々足りなすぎます。専属のトレーナーをこちらで用意しましたので、そちらの方と協力して当たってください。」
「えー!」
「えーじゃありません。一応指導教官なのですから、それ相応の役目は果たして頂かなくては。」
へいへい。まじかるまじかる。……というか私の今の役職名『指導教官』だったんだね。今知った。
とまぁそんなわけで今日も校庭に集まって訓練なわけですが、わからずやの田中のせいで普通の訓練になっちゃいました。いや私も解ってはいるんだけどね? 正直、同じくらいの実力の相手と命かけて殺し合う方が成長は出来ると思うのよ。確かに精神的なダメージが重なってしんどくなるだろうけど、ずっと私が後ろについてるってことは絶対に死なないのと同義じゃん? つまり安心して死闘を繰り広げられるのよ。
これほど素晴らしい訓練はない! イスズちゃん最強メソッド!
(だからまぁいけるかなぁ、と思ってたんだけど。)
西から上がって来た報告によると、前回のマジカル☆ぱんちとかのせいでちょっとやる気削げちゃったみたいで、ちゅらたんモードに入ってたらしい。彼女としてはこのまま実戦を繰り返すよりも、ある程度訓練して実力を高めて満足させた後、実戦に放り込んで結果を出させる。ちゃんとした成功体験が必要なのではないか、ということらしい。
みんながみんな先輩みたいなバトルジャンキーじゃないんすよ? って突っ込まれたんだけど……。イスズちゃん平和主義だよ? 普通に。戦わなくていいのなら24時間ゴロゴロしたいタイプだし。必要ならみんな殺しに行くだけで。
「ま、そういうことなら頑張りますか。そのトレーナーとやらと情報共有しないとだし、今後のスケジュールを相談しないとね。……お、きたきた! ミズキちゃんにマシロちゃーん! はろはろ~!」
「おはようございます。」
「あ、おはようございますです~!」
うんうん、良いお返事。しかも前回のマジカル☆ぱんちに対してあんま恐怖してない感じだね! 良かった良かった!
……いやまぁ多分威力がヤバすぎたせいで、私のことを恐怖を超えた何かで見ているというか、人間とは違う存在という形で線引きして納得してるからこその『これまで通りの態度』な気がするけど。
ま、まぁ怖がられてないからヨシ!
「というかマシロちゃん、そろそろ名前決めた? この前メッセで思いつきそうとか言ってたけど。」
「あ、それ私も気になる。そろそろ本名じゃなくてそっちで呼ばせなさいな。」
「ふふーん! 昨日プルモと一緒に考えてようやく決まったんです!」
「頑張ったプ!」
畜生と一緒に胸を張るマシロちゃん。うんうん、可愛らしくていいねぇ。あとちょっと揺れすぎてる気がするから西にでも相談して下着……、っとアブね。これセクハラだわ多分。口に出してないよね? ダイジョブだよね? よ、よし。とりあえず心配ではあるから後で西に報告しとこ。アイツなら私の本性知ってるし。また性犯罪者とか言われそうだけど、本人に知られるよりまだマシだ。
んで、名前決めたんだよね? どんなの? マシロちゃんなら可愛らしい感じのが似合うとは思うけど、ヤッパ自分で決めた方が気合入るからね、うん。
「はい! では発表します!」
「ぷー!」
((まぁそんな変な子じゃないし、トンチキな名前が出てくることは……。))
「『ピンクマン』です!!!」
((Oh……。))
あ~、うん。あ~。
これ、イスズちゃんが何か言わないといけない奴? あ、だよね。ミズキちゃんものすごく申し訳なさそうな顔しながらこっちに助けを求める顔してるし。せ、先輩として頑張らなきゃ……!
「え、えっとマシロちゃん。なんでその名前にしたのかな?」
「はい! えっとですね! 私の髪色桃色じゃないですか、ちょっと淡い感じですけど、変身したら色が濃くなるんです! もうピンクって感じに!」
「あーうん。そうだね。」
「それで、やっぱりみんなにすぐ覚えてもらえるようなお名前が良いなって思って、プルモと一緒に色々考えてみたんですが……。やっぱり、『ピンクマン』がインパクトがあって、可愛くて、良いかなって! 今日の訓練終わったら西さんにお願いして、申請してもらいます!」
「「か、かわいい……???」」
す、すまない。イスズちゃんもう若い子の感性わかんにゃい。もうむり、これから私時代に取り残された魔法少女として生きていくんだ……。それで置いて行かれて最終的に忘れ去られて、気が付いたら引退してるんだ……。あ、そう考えれば別にいいかも。いや良くないわ。
「大人になった時絶対に自分のこと殺したくなるから辞めな、ほんと。」
「うん、悪いこと言わないから辞めておいた方が良いと思う、マシロ。」
「え、え!?」
「もう私達で考えよっか、ミズキちゃん。」
「ですね、イスズさん。」
ピンクが良いならその要素を入れて、魔法から樹木系の奴が良いよね。いや樹木よりお花か。確かにがっちりしてるタイプではあるけど、木! って感じではないしお花の方がいいでしょ。
後はミズキちゃんと言うか、ルミナフィルのことを考えると同じ系列で考えた方が良さそうではあるけど……。あ、今後コンビ解消する可能性もあるから別に統一する必要はない、ね。確かにそうだけどその辺りドライだねぇ、ミズキちゃん。あ、一緒の方が嬉しくはあるけど、マシロちゃんのこと考えて、ね? なるなる。優しいねぇ君は。
んじゃ……、ブロッサムとか、フローラルとかいいんじゃない? これを基本にして。あ、ピンクもいれる?
「単にピンクにするよりも、ローゼとかの方がいいのでは? 響きからローズ、バラで植物を連想することも狙えるかもです。それに高校生からの魔法少女ですから、単にピンクでは子供過ぎるかもしれません。」
「確かに、んじゃローゼブロッサムかフローラルだけど。マシロちゃんてどっちかと言うと元気系だよね。お淑やかな感じがするフローラルは似合わないかも。」
「ですね。ではローゼブロッサムで。いい、ローゼ?」
「大丈夫? ローゼちゃん。」
「あ、あの。ピンクマ……」
「「却下」」
「そ、それでおねがいします……。」
よしよし、これ『あの時こんな名前にしていなければ……!』って思い悩む魔法少女を減らせたぞ! 多分! なんか本人凄い残念そうな顔してるけど、どう考えてもピンクマンはないでしょう……。というかするにしてもマンじゃなくてウーマンにすべきだし、ウーマンよりはレディでしょ。うん。
ま、トレーナーさん来る前に名前決まって良かったじゃんマシロちゃん。ちょっと不服かもだけど、バディとイスズちゃんが決めてくれた名前って考えれば、少しは気が楽になるんじゃない?
「ま、まぁそうなんですが……。」
「そ、そんなに気に入ってたの? ま、まぁそろそろ担当のトレーナーさん来るだろうし、ちょっとしゃきっと……。おん?」
一瞬感じる、移動系の魔法。
私は足で飛んだ方が早いので使わないが、ある程度の練度を持つ上位層の子たちが愛用するワープ系の魔法だ。けどこの感じからして、魔法の型番が古い、確か消費魔力が極端に低い代わりに事故率がめっちゃ高くて使用者がほとんどいない奴だったと思うんだけど……。
というかこの魔力。
「まさかお前まで呼ばれるとか、よっぽど上は本腰いれてるみたいだね。『イビルエンジェル』?」
「あは~♡ 後ろから抱き着いてあげようと思ったのにぃ、もう気が付くなって必死過ぎ♡ 最強って言われてるのに、そんなに警戒してるなんてぇ♡ すっご~くなさけな~い♡ 昔より弱くなってるのぃ、まだ現役してるのかわいそ~♡」
「あ? 弱くなってないが? むしろ強くなってるが? お前こそその年でメスガキ恥ずかしくないの♡」
「あはー! イビルちゃんよりずっとずっと年上なおばさんが何か言ってる♡ ブーメランじゃないの~♡」
「……。」
「……。」
「消しとべぇッ!」
「ザコがゅ!」
◇◆◇◆◇
「と言うことでちょうど今目の前で消し飛んだ人が、昔日本のNo.2だった『イビルエンジェル』こと樋口アヤちゃんね。たぶん今日からトレーナーしてくれる子。」
「アヤだよ~♡ でもイビルちゃんって呼んでね、ザコども♡」
ぽか~んとしてる二人を前に、いつも通りのメスガキを決める後輩。
うんうん、引退したのにそれだけ魔力残っている上に、現役の時よりも技術極まってない? 再生までの速度あの時よりも完全に上回ってるし、すごいじゃん。まだまだ現役行けたんじゃないの? あ、あと。たぶん後輩たちついていけないから普通の話し方してあげて。
「あ、そう? ファンサ的にこっちの方がいいかな、って。」
「配信者だっけ? 人気みたいだよねぇ、たまに作業中に見てるよ。スピーカーにして宇宙人に冥途の土産として聞かせてる。」
「かんしゃ~♡」
そう、コイツこそイスズちゃんが結構ガチで消し飛ばしてるのに不屈のメスガキ魂で復活し続けているイビルエンジェルちゃんだ。
確かに現役時代に比べ魔力総量が激減しちゃったんだけど、その分謎の努力で技術が向上して『現役の頃と戦ってもまぁまぁいい所までいけるんじゃない?』と評価されてる子でもある。ちなみに吹き飛ばした後の再生を私に頼らず自分で何とかしていると言えば、その規格外さは理解してもらえると思う。
メインは配信者だけど、たまに地方に飛んで他の子のヘルプに飛んでくれたりする凄い子だよねぇ。
「ま、私の“魔法”が特別ってのもあるけどね~♡ でもスタミナ無くなっちゃったのは事実だし、昔みたいにフルタイムは無理♡ んで、私はこの子たち鍛えればいいの、セ・ン・パ・イ♡」
「そ! イスズちゃんのスパルタ教育し続けたら壊れちゃ~うって田中とか西がね?」
「……あぁ、うん。そりゃそうですよ。センパイ鬼畜超えて魔王ですし。」
そこでガチの声出すの辞めてくれない?
確かに昔、お前が『イスズちゃん超えたい』とか言うからボロ雑巾になっても止まらず色々連れまわしたけど、結果的に滅茶苦茶強くなったでしょう? 多分3倍くらいは軽く。そういう実績があるんだし、それを繰り返せば成功するわけじゃん。
でもイスズちゃん優しいから二人のために大分緩めにしたんだよ?
「緩めても地獄は地獄ですからね? 私でも死にかけたのに……。まぁ何度も死んでるようなもんですからもう慣れてるんですけど。」
「それ慣れて良いの?」
「駄目♡」
指でハートを作りながら、甘ったるい声でそう返す彼女。
ほーんと、こいつ凄いよねぇ。私がメスガキやると自分でもウワキッツってなるんだけど、コイツ高3どころか成人してもまだまだメスガキ現役で違和感感じないんだもの。やっぱ覚悟が違うんかねぇ?
ま、先輩後輩の関係だったとはいえイスズちゃんが育てたようなもんだし、コイツが努力の人間で今でも強いのは知ってる。本人があんまり指導向きの人間じゃないって思ってるせいで西とは違う道を進んだ子だけど、かなり面倒見の良い子だ。
安心して任せられるよね~。
「まじかるまじかる。話し戻すけど、コイツ強いし“解釈”の仕方上手いから良い糧になると思うよ。二人とも頑張って学んでね~。」
「「あ、はい! よろしくお願いします!!!」」
「うんうん、元気な子だいすき♡ それじゃあ軽ーく変身と、得意な魔法見せてね♡ 一応資料貰ってるけど、自分の眼で見ないと信じられないでしょ~♡ さ、はやくはやく、だせだ~せ♡」
〇メスガキ系魔法少女『イビルエンジェル』
若干「なんで昔の私こんなキャラ付けと名前にしたんだろ」とは思いながら、ずっとそれでやり続けて来たメスガキの鑑。既に20を超えているが、この世界においてメスガキと言われれば、真っ先に彼女の顔が出てくるぐらいには浸透している。イスズよりはマシだが、若干アレ。
1話あとがきの基準で言うと、現役時の最大魔法少女パワーは240,000ほど。イスズがいなければマジでトップだったし、侵略宇宙人も成層圏までなら普通に撃滅できていた。
現在は魔力量が大幅に減ってしまったためかなりの弱体化を受けたが、自身の得意魔法を伸びに伸ばした結果、数分間だけだが現役時以上の力を発揮することが可能となっている。地味に活動時間と最大出力がちょっとずつ伸びているので、マジで努力の人。
〇転移系魔法
文字通りワープすることが出来る魔法。その効果から魔力消費が大きく取得何度も高く上位層しか無理だが、覚えればすごく便利。ただ最新型(日本結婚ネキ作成以外)は常に事故の可能性が存在しており、たまに肉体が内側からひっくりかえったり、内臓だけ元の場所に置いていってしまうことがる。
そのため緊急時しか使用するものはいないのだが、メスガキの彼女は『失敗する可能性』や『消費する魔力量』を極限まで『省略』しているため、安定的な使用が可能。
え、イスズちゃん? あ、あの子は普通に地面や空気蹴って飛んだ方が早いし魔力も使わないから……。




