70
月が、昇っていた。
「お姉ちゃん、大丈夫かな・・・」
研究室に集まったのは夕方だったのに、いつの間にか月が夜道を照らしていることに気づいた私は、ぼんやりとそれを眺めながら呟いた。
特に、返事が欲しかったわけじゃない。けど、誰にでもなく呟いた私のことを、彼はちゃんと見ていたようだ。
「大丈夫でしょう。エルが慌てていた様子もありませんでしたし・・・」
「うん・・・」
そっと息を吐いた私は、窓の外から視線を剥がして彼に向ける。その時、教授が口を開いた。
「ルルちゃんも、特に彼女のホタルに異常があるとも言ってなかったから大丈夫だよ」
あの後・・・暗い穴の向こうへと吸い込まれそうになった私は、何かが割れる音と一緒に巨大な手に思い切り叩かれるようにして、研究室へと落っこちた。その後すぐに、手首の痛みに気がついて、こうして病院に向かっているわけだけど・・・。
車で、お姉ちゃんとシュウさんを病院に送り届けた教授が戻ってきて、今度は私達を送ってくれている。ルルゼと団長は特に不調もないからと、歩いて移動しているはずだ。
「・・・はい」
教授の言葉に頷いて、私は祈るように目を閉じた。
終わったんだと、信じようとしていたんだと思う。
・・・何だかまだ、胃に重りがぶら下がったみたいになっている自分の体の違和感に、気づかない振りをして。
早く朝がやって来ますように・・・そう、祈っていた。
病院の中は、もう診療時間外ということもあって静まり返っていた。廊下の照明が落とされて、入院している患者さん達の1日は、もうすぐ終わるらしい。
痛む手首を持て余している私は、それがすごく羨ましくて、足取りが重くなっていた。本当に、疲れているのだ。頭の中に溢れる記憶と情報が、爆発しそうだった。
・・・私の背を支える、温かい彼の手がなければ。
「歩くと響くでしょう?抱き上げて運びましょうか?」
「ありがと・・・でも、大丈夫」
思い切り甘えてしまいたいけど、ジェイドさんだって疲れているだろう。落ちてきた私を受け止める時に、どこかしら痛めているはずだ。私の体のどこも・・・掴まれていた手首以外のどこも痛まないということは、そういうことだと思う。
私は気遣わしげに視線を投げてくる彼に、首を振って微笑む。そしてすぐに彼が気遣ってくれることが申し訳なくて、俯いた。
「ジェイドさんこそ、私が落っこちてきた時、どっかぶつけたよね・・・?
ごめんね、痛かったでしょ・・・」
一歩踏み出すごとに、片方の腕に痛みが走る。リュケル先生の待っていてくれる診察室まで、あとどれくらいなんだろう。
「・・・痛いくらいが、ちょうどいいんです」
背中に添えられた手がほんの少し揺らいだ気がして、私は彼を仰ぎ見る。すると彼は、私がそうするのを知っていたみたいに苦笑した。
「夢じゃないって、思えますよね」
「・・・私も、おんなじこと考えてた」
まるで私の頭の中を見透かしたようなことを言うから、驚いた私は思わず足を止める。きっと目がまん丸になっていることだろう。
彼は、突然立ち止まった私のことを覗き込んだ。
薄暗い廊下は、消毒液の匂いがする。等間隔に設置されている非常用の灯りが、足元を照らし出す。
彼の言葉を聞いた私は、時間がゆっくり流れているような錯覚に陥って、今になって自分が彼の隣に立っていることを実感した。
「あの時、ジェイドさんが私の手を離さないでくれたから・・・。
だから、痛くていい。それだけ一生懸命、掴んでくれてたってことだもん・・・」
ただぶら下げて立っているだけでも、ズキズキとした痛みがある。でも、その痛みがこれは現実だと教えてくれた。
「すごい剣幕で・・・あんなの初めて見た」
煩い、と一喝した時のことを思い出して、くすくすと笑い声が漏れてしまうのを止められない。笑うと手首に響くのに。
彼はそんな私を、呆れたカオで見下ろしてため息を吐いた。
「仕方ないでしょう、必死だったんですよ。
・・・本当に、必死だったんです・・・」
言葉が終わるのと同時に、彼の手がそっと私の頬を撫でる。紡いだ言葉が、じんわりと耳から染み込んで胸の中に届いた頃には、堪えきれなくなって瞬きをしてしまっていた。
「今さらいなくなるなんて・・・とてもじゃないけれど、耐えられなかった。
それならいっそのこと、私も一緒に、と思って・・・」
硬い声で言葉を紡いでいるのに、その手は温かくて優しい。さっきまで私の手首にくっきりと跡を残すくらいの力を込めていたのに、指先がそっと控えめに目じりをなぞっていった。
「・・・今なら、エルの気持ちが分かる気がします。
ちょっと、高を括っていました・・・」
「シュウさんの・・・?」
震えそうになる喉を叱咤して繰り返すと、彼は困ったように微笑んで私を見つめた。
「・・・失ったら、と・・・。
そう思うだけで、痛くて痛くて・・・。
でも、繋ぎとめることが出来て、本当に良かった・・・」
そう言いながら、彼がおもむろに私をゆるゆると抱きしめる。もっと力を込めてくれてもいいのにな、なんて思うのは贅沢なんだろうか。
触れるか触れないかの温度が物足りなくて、自分から彼に寄り添ってみる。すると、額にキスが降ってきて、私は我に返った。
「・・・ここ、病院だったね」
へらりと笑ったら、苦笑した彼がもう一度額にキスをくれた。
それから、ゆっくり歩いて診察室へ辿り着いた私は、リュケル先生に手首を見てもらっているわけだけど・・・。
「何やってんのジェイド・・・」
大きな、ジェイドさんの手形がくっきり残る手首を見て、先生は顔を顰めた。
「もしかして犯罪系?・・・まさか無理やり?」
汚い物でも見るかのように、傍に寄るな、という仕草をしつつ尋ねた先生に、当然ながらジェイドさんは憮然としているわけだ。
こんなところで、そんな険悪な雰囲気を浴びていたくない私は、慌てて先生に言った。
「違います違います!
確かにジェイドさんが掴んでこうなったんですけど、これには深いワケがあって・・・。
とにかく、暴れたいくらい痛いので診て下さい治して下さい」
教授が迎えに来てくれるのをお屋敷で待っている間、ジェイドさんが応急手当をしてくれたけど、痛みは増してきてるのだ。目の前に先生がいるのに、これ以上待っていられない。
早口で言い募った私に、ジェイドさんを顰め面で一瞥した先生が頷いた。
「まあ、そうだね。患者が先か。
・・・じゃあ、ちょこっとだけ触るけど・・・」
そっと手を伸ばした先生が、ジェイドさんの施してくれた応急手当の包帯を解こうと、慎重に触れる。その瞬間、激痛が肩まで突き抜けた。
もう今さらだ。ここまで耐えたんだからと、声を上げたいのを堪えた私は、歯を食いしばってやり過ごす。痛みの余韻が頭の中心をぐわんぐわん揺らしている頃、ジェイドさんは浅い呼吸を繰り返しながら椅子に腰掛けていた。
視線を彼に向けている間に、先生は私の手首から手を離す。
「折れてはないけど、この痛がりようだと・・・ヒビくらい、入ってるかも知れない」
「良かった、折れてないんですね」
ほっとしたように息を吐いた彼が呟く。それを聞いていた先生は苦々しい顔をして、彼とは全く違う種類の息を吐いた。
「あのねぇ・・・ヒビ入ってるだけでも十分ダメじゃん・・・」
「あーもー・・・いろいろあったんですよ」
「そんなの知ってるよ。
ミイナが運ばれて来て、何もない方がおかしいでしょーが。
・・・何なのもう。僕は仲間ハズレってどういうことさ」
ジェイドさんが疲れと痛みを隠さず、物凄く面倒くさそうに投げやりに言ったことに、先生がむっとした様子で言葉を投げた。
・・・そういえば、この先生はお姉ちゃんのことが好きだったんだっけ・・・。
ふいに思い出して、私はじっとその顔を眺めてみる。整った顔立ちをして、どこか子どもっぽいけど品のある人だ。シュウさんは、親戚のようなものだと言ってたけど・・・。
「患者が放っておかれてますよー」
先生の手が離れて痛みが遠のいた私は、2人の放つ険悪な雰囲気をかき消すべく声を上げる。
「お姉ちゃん、どうしてますか?」
そのまま話題を変えようと話しかけると、先生は渋々手当てを始めてくれた。湿布を貼って、固定して・・・同時に口も動かせるなんて、プロだ。白衣を脱いだらそうは見えないだろうけど。
「個室が空いてたから、そこで眠ってる。
・・・軽く診察したけど特に悪い部分はなかったから、目が覚めるまで様子見かな。
本人に問診して問題なければ即退院、だね」
「お腹の、赤ちゃんは・・・?」
「とりあえずは大丈夫みたいだよ。
そっちは、別の医師が診たんだけど・・・ま、それも問診次第かな」
とりあえず彼女が無事だと分かった私は、そっと息を吐く。思わず彼を振り返ると、空色の瞳が柔らかく細められた。
「全部終わってからでいいから、聞かせてよね。
・・・心配くらいさせてくれても、いいじゃないか」
2人で見詰め合って微笑んでいると、ふいに先生がいじけたように言って、きゅっと包帯を結んでくれた。言葉の割りに、とっても丁寧で優しい手当てだ。
その後ジェイドさんも診てもらったけど・・・どうやら彼は背中の打ち身が酷いらしくて、いくつも湿布を貼って、包帯でぐるぐる巻きにされていた。そのぐるぐる巻きの現場に居合わせた身としては、その胸板と腹筋に圧倒されてしまって、彼の怪我のことが一瞬頭から吹き飛んでしまったくらいだ。別に見たかったわけじゃない。ただ、先生に背中を向けているということは、私と向き合っているということで・・・。ともかく、私は赤くなる顔を俯けて手当てが終わるのを待っていたわけだ。
そしてリュケル先生が看護士さんに呼ばれて、私達はお姉ちゃんの病室を教えてもらって・・・今、規則正しく胸の辺りを上下させて眠っている彼女と対面している。
「・・・2人共、怪我は」
ベッドの横に椅子を置いて腰掛けた私達に、シュウさんが尋ねた。そのごつごつした手はお姉ちゃんの手を握って、時折指先が手の甲を撫でている。
お姉ちゃんの顔とシュウさんの手を交互に見ていた私は、ジェイドさんが隣で答えるのを聞いていた。
「大丈夫ですよ。大したこと、ありませんでした。
・・・彼女は、変わりないですか」
「ああ・・・意識がない、というよりは眠っているらしい。
・・・ルルゼに見てもらったら、何か分かるかも知れないが・・・。
まあ、焦らず待ってみようかと思う」
「そっか、良かったぁ・・・」
眠っているなら、きっと目も覚めるだろう。楽観的かも知れないけど、あれだけのことが起きたからなのか、私はずいぶんと気分が落ち着いていた。
・・・お姉ちゃんのことに、関しては。
息を吐いて肩から力を抜いた私の手を、ジェイドさんが握ってくれる。触れる程度で、ぎゅっと握らないのはきっと、背中が痛いからなんだろう。さっきは物足りないなんて感じてしまったけど、こうして触れられる距離にいられるだけで十分だと思い直す。
手のひらから伝わる温もりに、思わず頬を緩めているところへ、シュウさんが小さな声で私達を呼んだ。
「・・・ジェイド、リア、」
改まった雰囲気に、何となく背筋が伸びた。
蔦の色をした瞳が、ゆらゆらしている。
いつだったかお姉ちゃんが、彼は優しくて綺麗な目をしてる・・・みたいなことを話していたのを思い出す。最初は全然そんなふうに思えなかったけど、今なら分かる。一緒に過ごして、分かった。
「本当に、感謝している。ありがとう。
・・・怪我までさせてしまって、すまない」
目を伏せたシュウさんに、ジェイドさんが苦笑する。
「・・・何を言ってるんです。
私は、つばきのために動いてたんですよ。気持ち悪いこと言わないで下さい」
その台詞が照れ隠しなんだってことくらい、私ですら察することが出来た。思わず噴出してしまった私に、彼まで噴出す。
「じゃあ、私のために怪我までしてくれたってことだ」
「もちろん。
つばきも、私のために痛いのを我慢して、戻ってきてくれたんでしょう?」
そうやって2人でじゃれ合っていたら、シュウさんが息を吐く気配がして、私達はくすくす笑い合うのを止める。穏やかな、どこか気持ちの落ち着く沈黙が流れた後、彼は口を開いた。
「・・・2人が・・・いや、教授とロウファ、ルルゼもだな。
皆がいなかったら、俺はどうなっていたのか・・・」
「この国の犯罪者が根絶やしになっていたか、犯罪者で溢れかえっていたかでしょうね」
「私、刃物苦手なのに・・・」
独白に似た呟きに間髪入れずに言ったジェイドさんを見て、私が呟く。そんな私達の言葉を聞いていたシュウさんは、小さく笑った。
「ともかく、良かった。
あとはミナが目を覚ましてくれれば、な」
言いながら、彼は握ったお姉ちゃんの手にキスをする。その姿は祈るようでもあって、私もそれを見て思いを馳せた。
「しんみりしていても仕方ないですから、お茶でも淹れましょうか」
ジェイドさんが苦笑しながら立ち上がる。
「ああ、いいですよ。私が行ってきます。
・・・つばきは片手しか使えないんですから、ね?」
お茶、という単語を聞いて腰を浮かせた私を手で制したジェイドさんは、言いながらもスタスタと歩いて行ってしまう。私はその背中が痛くはないのかと心配になりながらも、ここにいろ、と言われた気がしてもう一度腰を下ろした。
「・・・お姉ちゃん、ちょっと痩せたかなぁ」
何を話したらいいのか分からなくて、いろいろ考えてみた末に結局口にした言葉はそれだった。シュウさんは頷いて、その手を擦る。目から砂糖が零れているんじゃないかと思うくらい、甘い眼差しを目を閉じた彼女に向けて。
「そうだな。
・・・妊娠しているのも、関係あるかも知れないが」
至って真面目なカオをしている彼に、私はふと思い出して尋ねてみた。
「そういえば、私が宙に浮いて・・・ぱりん、て音がして・・・。
どうして、戻って来れたんでしょう?」
「ああ・・・それは、ケータイ・・・だったか。
あれを、ホタルの散らばる穴に向かって投げたんだ」
「投げた・・・?!」
・・・私の携帯、投げられてたのか。
聞かされた事実に唖然としていると、シュウさんが私の目をじっと見つめた。怖くはないけど、何となく気圧されて言葉を失う私に、教えてくれる。
「リアが引き上げられて、穴が小さくなっていったんだ。
で、教授がケータイを投げろ、と・・・。
渡り人と同じ色のホタルを戻せば、リアはこちらに居られるんじゃないか、と考えたらしい」
「・・・そっか・・・」
難しい話は分からないけど、どうやら携帯が私の身代わりになってくれたらしいことは分かった。
私は呆然と経緯を聞いて、それを消化しようと頭を働かせる。そして、そういえば、と思い出したことがあった。
あの携帯には、外側の中心あたりに小さなダイヤモンドが埋め込まれていたのだ。携帯本体の製造メーカーと、何かのブランドが共同で開発して・・・という、ちょっとした変り種の携帯だった。私はそのキラリと光る部分にひと目惚れして、何年も使い込んだのだ。
ホルンで携帯を預けて以来、全く思い出すこともしなかった。星の石にホタルが宿ると分かった時も、携帯のことにまで考えが回らなかった。
・・・まさか、ここにきて意外な役立ち方をするなんて・・・。
「あの携帯、星の石が埋め込まれてたんでした・・・」
「ああ。俺もあの時になって気がついた」
呟きに、彼が同意してくれる。
「・・・すまないな。勝手に投げた」
きっと、何と言ったらいいのか分からないんだろう。私と2人っきりで、何かするでもなく時間を過ごすなんてこと、今までなかったから。
私は全く非がないのに謝罪の言葉を並べた彼に、勢いよく首を振った。
「全っ然シュウさんは悪くないです。
ありがとうございます。助かりました。本当に。
・・・それに、あれがない方が・・・」
途切れ途切れにお礼を言った私は、携帯が手元にないことについて考えながら、ぽつりぽつりと言葉を零す。
そんな私を、彼は静かに見ていた。
「・・・あれは、ない方がいいんです。きっと。
揺らぐな、って・・・そういうことなんですよ、きっと・・・」
「そうか」
「はい。
それに、もしかしたら誰かが拾って、私の家族に届けてくれるかも知れないし・・・」
「ああ、そうだな」
無愛想な相槌にも聞こえそうなのに、私には彼の声がとても優しくて穏やかで、心地良かった。ジェイドさんの声の方が、もちろん大好きだけど・・・それとはまた違う気がして。
私は目を細めて、頷いた。
「そういえば・・・ジェイドさん遅いなぁ」
お茶を淹れに行ったきり戻らない彼のことを思い出して、私は呟いた。背中が痛くて、あまり腕や手に力が入らないようだったし・・・と考えを巡らせて、立ち上がる。
「あの、私、」
「もう少し待ってみたらどうだ?」
シュウさんが、引き止められてそわそわしている私を見て苦笑する。そして、仕方ないというふうに肩を竦めた。
「いや、行って来い。
・・・給湯室は、廊下の突き当たりに・・・表示があるからすぐ分かるはずだ」
「行ってきますっ」
私は、彼の言葉を半分背中で聞いて、小走りに部屋を出た。
私は自分が病院にいることも、振動を与えると痛みが走ることも忘れて、小走りに給湯室に向かっていた。
薄暗い廊下は、看護士さんが見回っている気配もなく、静まり返っていた。小走りになって跳ねた鼓動に急かされるようにして進んでいくと、廊下の壁に、矢印と給湯室、という文字が書かれているのを見つけて角を曲がって・・・。
「・・・っ」
勢いよく突き進んでいた私は、突然出てきた人影に急ブレーキをかけた。
驚いて息を飲んでいる間に、その人はふわりと服の裾を翻して給湯室へ入って行く。
「すみませ、」
危うくぶつかりそうになった私は、頭を下げて咄嗟に謝って、そして、視線を上げて・・・。
目に入ったのは、きらりとした何かだった。足元を照らす灯りを反射して、光った何か。鈍い輝きが、一瞬だけ呆けた私を映し出して通り過ぎていった気がして。
服の裾に紛れた切っ先が、朝露と戯れる若草のようで・・・。
その背中が、引き戸の向こうへ消えていったのを見て、戦慄が走る。息が出来なくなって、頭が真っ白になった。
吐き気に似た何かがこみ上げた私は、口元を押さえたまま、ただ呆然と立ち尽くした。
ぶつかりそうになった人の手に、ナイフが握られていたのだと気づいて。




