表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~  作者: いかや☆きいろ
最終章 釣りガール、異世界を釣る。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/79

釣りガール、最後の時

 今日は四話更新です。あと二話です。

 十七歳になった。

 無事に私は一人の娘のお母さんになれた。

 彼女の名前は女神様には付けてもらえなかったが、後輩ちゃんの名前を付けることにした。

 後輩ちゃんと面識のあるナミエも喜んでいた。

 もちろんカイル君もマンサ様たちも皆祝福してくれた。


 ――――しかし。


 彼女が生まれてから私は弱り続けている。

 おそらくは予定通り十七歳で私は死ぬ。

 女神様からも宣告を受けた。


『このままでは運命を繰り返すことになる……』


 そう言われて私は不思議と、悲しいとは感じなかった。


 楽しかった。楽しい人生だった。

 たくさん釣りも出来たし、人生の目的もいくつも果たせた気がする。

 嬉しかった。幸せだった。

 だから私自身が死ぬことには全く悔いがなかったのだ。

 また次の人生が始まるんだろうな、そんな風に思っている。でも。


 カイル君やナミエや娘、カイリちゃんたちを残して逝く。それはとても心残りだ。

 私だけ先に死ぬことが悲しいとは思わない。残して逝かれる彼らの気持ちが悲しくて……。


 でも彼らは私を気遣ってくれた。

 私のためにナミエやカイリちゃんはエリクサーや不死の秘法を探して飛び回った。

 カイル君はナミエに命じられて私のそばにいてくれた。


 体は、どんどん弱っていた。


 二人でたくさん喋った。前世のことからこれまでの人生のこと。

 出てくる言葉は決まって、楽しかったね、だった。


 今も楽しい。私は幸せだと思う。


 女神様まで含めて皆が私の命を惜しんで、頑張ってくれている。

 私なんてそんな価値無いのに。


 ただの釣りガールなのに。


 そう言ったら、初めてカイル君に叱られた。


「君が釣りガールじゃなくても確かに僕は君を見つけただろう。でも君が釣りガールだから、皆も本当に楽しい人生を送れているんだ。君が今まで生きてきた道を否定するな!」


 痛かった。私は相当弱っているらしい。分かっているはずだ。


 釣りガールじゃない私は、ただの小娘だ。それに。


 釣りをしてきて良かったと、本当に思ってるんだ。


「ねえ、カイル君」

「なに? なんでもするよ?」

「……女神様の格好」

「それは駄目」


 なんかナミエとかクロシさんに染められてる気がする。

 二人で笑った。


 ちなみにクロシさんはエサイルの伯爵としての仕事を放棄して私の病を治す方法を探して世界中を飛び回っているそうだ。

 変態さや強引さとかそう言ったものを差し引いて、やっとプラスになれるチャンスだから気にしなくて良いんだよ、と。


 かなり執拗にウザく詰め寄られたのでヘロヘロと一発殴った。

 そのあと二人で大笑いした。


 皆にいっぱい迷惑かけてるし、私はそろそろ逝こうと思う。


 なぜか帰ってきたナミエやカイリちゃん、そしてカイル君やアタルたち、お爺ちゃんにお母さん、他の元村人たち、オシモさんやウシオさん、アミさんたちが集まってきたところで私は、「有り難う」、と、言って――――


――――目を閉じた――――





「さて、シズクちゃん。今回の人生は楽しかった?」

「……最高だったよ!」

「良かったわ」


 目の前には薄い水色がかった銀髪にヘッドドレス、眼帯はなぜか取っていて綺麗なオッドアイ、いつもの中二ドレスじゃないロングの漆黒のドレスをまとった、女神様がいた。


「死んじゃったのかあ」

「そうね。後悔してる?」

「ううん……みんなとおわかれもできたし……」


 そう、なぜか上手く喋れない私に女神様は、「泣かないで。最後に一釣りしていかない?」と言った。


 目の前には小さな白い泉が有った。


「これは?」

「これは知性の泉と呼ばれるものね」


 なんだか分からないが、ここで一釣りしていけと言うことらしい。


 釣るよ、もちろん。私は釣りガールだから。


「頑張って」

「はい」


 思えば女神様と釣りをするのは初めてだな。

 そう思って女神様を見ると、にっこりと笑った。可愛い~。

 来世は男でも良いかな?


 そんなことを思いながら、釣りを続けていると……。


「ヒット!」

「キマシタワーッ!!」

「えっ」


 ひょっとして、ナミエの中にもこの女神様が……?

 いや、考えない考えない不吉すぎる。

 まあ、愛してくれて有り難う。


 さて、何が釣れてきたんだろう。心当たりはある。

 私が釣ってない最後の目標、バハムートだ。

 バハムート、釣れるのかな?


 しかし釣れてきた魚は不思議と軽く、なのに全く引き寄せられなかった。

 まるで悪夢のように、リールを回しても回しても魚は上がってこない。

 回しても回しても。

 回しても回しても。


 女神様は淡々と見つめている。

 気が付けばその隣には黒髪に金の双眸をたたえた見たことのない少女が座り、星の女神様と同じように泉を見つめていた。


 何か悪夢のようにも思える。しかしリールを回す。

 回す。回す。回す。回す。回す。……。


 回しているうちにピンク色だった辺りが泉と同じ真っ白に変わっていく。


 やがて、私はその霧に意識を飲み込まれ、気を失った……。


 ……釣れたかな、バハムート。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ