表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~  作者: いかや☆きいろ
最終章 釣りガール、異世界を釣る。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/79

釣りガール、迷宮でも釣りをする

 せっかくファンタジーの世界に来たのだからもっとファンタジーなことをすれば良いのに。ちょっとそんな風に思わなくはない。

 初めてダンジョンに挑戦することである意味やっと自分がファンタジー世界の住民になれるような気がする。


 カイル君は今回十五階層のボスキャラのドロップ品を調達するためにダンジョンアタックしているらしく、途中素材回収も兼ねているために往復で、二日かかるだろうとのこと。

 二日待つくらいなら一日でダンジョン十五階層を潜ることにした。

 このダンジョンは面積は狭いが深いタイプのダンジョンらしく、王都のすぐ近くにはあるが魔物が溢れてくるようなことは少ないらしい。

 普段魔物魚は釣っているがリアルな魔物と戦う機会はそう無かった。

 果たして釣りスキルはどこまで通用するだろうか?


 クロシさんに連れられるままダンジョンに向かうとガラの悪い冒険者たちに何度か声をかけられた。なんでかな?

 そう言えば人たらしとか言う称号がついていたっけ。見た目が良くなってるなら有り難いが余計なものを引き寄せるのはつまらない。適当にあしらっておこうとするとクロシさんが前に出て「僕伯爵。今とっても忙しいんだ!」とか言って引かれていた。

 ……良い人、……なのか?


「伯爵~、僕は伯爵~、るんるん~」


 さすがに伯爵をぶん殴るような猛者は居ないようだがうざったい。私が殴りたかったが助けてくれてるようなのでやめておく。

 ……どうやったらこんな人格になるのだろう。よっぽどショッキングな人生を繰り返しているのだろうか?


 なんだか良く分からない踊りを踊りながらクロシさんはずんずん進んでいく。なるべく関わりがあると思われたくないので私は少し離れて進むも、ダンジョンまで到達した時には精神的に疲れ切っていた。


「じゃあズバッと攻略ズバッとカイル君に遭遇するよ!」

「地図とかあるんですか?」


 迷宮探索と言えば重要なのはマッピングだろう。そう思ってクロシさんに聞くと彼はだらしなく舌を出して何か薬物依存患者のようにあらぬ方向を見つめながらシルクハットをトントン、と叩いた。

 頭に入ってると言いたいらしい。しかしウザい。


 ダンジョンの中に入る。入り口に立っていた衛兵さんたちはクロシさんと関わりたくないのかチッとか舌打ちしながら脇に避けて彼を通し、私には同情するような視線を向けてきた。

 この人本当に偉い人なんだろうか?

 少なくとも敬われてはいないらしい。実害は無いのにそこまで嫌われてるとか逆に尊敬するわ。


 さて、ダンジョンに入った。凄いな、私ファンタジー世界に来てるんだな、とか今更思う。

 ダンジョンの中はかなり明るかった。このダンジョンって誰が作ったんだろう? と、思っていると女神様から回答が来た。


『迷宮術師ってスキルを持つ子がいるんだよ』

「へえ、なんでそんなスキルを作ったんですか?」

『迷宮探索とか楽しいから』

「……趣味ですか」


 どうやら女神様はファンタジー世界の世界観を維持する目的でわざわざそんなスキルを用意したらしい。作らされる方はどんな気分なのだろうか。

 やっぱり迷宮作りを楽しめる人とかいるのかな?


 と、向かいから誰かが歩いてくる。

 異常に身長が低く、肌は緑色。大きな口と垂れて曲がった鼻、尖った耳に小さな角。


 おおっ、ゴブリンだあ!

 なんか感動するなあ。ちゃんとここはファンタジー世界だったよ。


 早速竿で叩きつけ、釣り上げて麻痺させ、蹴りつけて倒していく。レベル六十近いから全く歯応えはない。

 うん、たぶんこのダンジョンを余裕で全クリア出来るくらい私は強くなってる。それに女神様のスキルまで有るんだから私やカイル君は最強クラスの冒険者とタメを張れるんじゃないだろうか。

 むしろ負けたらおかしいのかな、女神様にいろいろしてもらってるんだから。

 私が魔物を倒している間クロシさんはくねくね踊っている。ムカつくのでゴブリンを一匹ぶつけたら華麗に回避しながら蹴り飛ばして退治する。

 ナイフをゴブリンの胸に突き刺し、魔石を取り出してこちらに見せてくる。次の瞬間にはアイテムボックスに収納したのか、魔石は掌から消えた。

 ちょっとグロテスクだがクロシさんは血で滑る手をどこからか取り出したハンカチで拭ったあと、浄化魔法をかけた。

 その間にゴブリンの死体は消滅する。少しタイムラグがあるのは解体する時間が必要だからだろうか。食べられる魔物もやっぱりいるんだろうな。

 流石にゴブリンは食べたくないけど。


「ゴブリンの魔石でもちょっとしたお金になるんだよ~」

「面倒くさいから全部クロシさんが取って下さい」

「太っ腹だね。痩せてるけど太っ腹」

「うぜえ」


 思わず口に出してしまったよ。今まで会ったことないタイプだから付き合い方が分からない。

 しかしクロシさんはマップを覚えていると言うだけあって、素材の回収も進めつつどんどんとダンジョンを潜っていく。かなり速いので着いていくのがやっとだ。

 レイピアと言うのか、細い剣を取り出して次々に敵を倒していく。時折アイテムボックスから爆弾やナイフを取り出して投げつけたり、戦い方も普通とは違う感じだがとても強かった。


 ただ動きは気持ち悪い。たまに自分から攻撃をもらいに行くあたり本当に変態なのかも知れない。


 私は私でクロシさんが打ち漏らしたり逆方向から攻めてきた魔物を次々釣り上げ麻痺させクーラーに格納、解体して魔石を取り役に立たない死体はダンジョンに残す。

 簡単だ。水中の魔物魚に比べてここの魔物は軽すぎる。一本釣りスキルも必要無い。


「強いね~のっぽちゃん」

「のっぽちゃん言うな」


 レベル高いし女神様が言うとおり私は強いようだ。ただスローライフのために強くなったはずなのだが。

 まあちょっと楽しいから良いかな?






 クロシは書くのも面倒臭いキャラでしたが私は意外と好きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ