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釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~  作者: いかや☆きいろ
第三章 釣りガール、大陸を釣る。

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釣りガール、戦場に立つ

 私は釣りの為なら火の中だろうが水の中だろうが雨が降ろうが槍が降ろうが突き進む。今回マンサ様からもたらされた情報によると帝国領にて冥王ドジョウなる美味しい魚が釣れるらしい。

 もちろん釣りに行く。今回のメニューはドジョウうどんかな?

 戦場を駆け抜けているが敵も味方も知るものか。私は魚を釣りに行ってるんだ!


「お姉さまが敵陣をガリガリ切り開いていきますわ」

「一騎当千と言うべきか天下無双と言うべきか……」


 ナミエとカイル君が後方で呆れてる気がするが私は釣りに行ってるので邪魔する人たちはただの障害物である。私は戦争に利用されていたりはしない。

 マンサ様が情報をもたらしたタイミングが意図的だったのは間違いなかろうがお魚がいるのも間違い無いだろう。マンサ様はそう言う所では嘘をつかない。

 ドジョウは確か糸ミミズを食べたはずであるが、魔物魚なら巨大なのでサンドワームくらいの餌が必要であろう。虫餌では作れないのでついでに狩りに行く。万能餌だと臭いとか味がしないのでもし泥水なら釣りづらいからね。ドジョウだし住んでいるのは多分泥水だろう。


「私のお姉さまが無敵じゃない訳がありませんわね」

「釣り人ってこんなに強いんだね」


 ナミエとカイル君は相変わらず仲が良いな。でも二人とも恋愛関係には絶対発展しないらしい。私が……好きらしい。私は女の子に告白されまくったからあんまり動じないけど、私みたいな男女のどこがいいのやら。


「お姉さまは鉄壁すぎですわ」

「あ、サンドワーム釣り上げた」


 サンドワームの餌に使ったのはウサギ型ルアーである。万能餌スキルが素敵過ぎる。ちなみに女神様型ルアーも作れる。本当に万能餌だ。女神様に食いつく魚とか怖すぎるが。


 たくさん釣った魚を餌にしてより大物を釣るのはフィッシングでは王道である。魚餌とかイカ餌とかがそれに当たる。


 何故か帝国兵とか言う人たちに妨害された。掴みかかってきて全く説得できないようだったので申し訳ないがぶっ飛ばして帝国領の湖に向かうと宣言する。なんで邪魔するんだろ?

 私は平和主義なのにな。釣り以外は全てどうでも良い。

 戦々恐々としていた人たちは説明したらどいてくれた。良い人たちだ。

 私は魚を釣りたいだけなんだから邪魔する意味は無いもんね。


 さて、地図を見ながら幾千里、湖についたがここは……やはりマッディーウォーターか!

 基本的に釣りは水が綺麗であるほど魚がスレて難しくなる。つまり泥水であるマッディーウォーターでは入れ食いも有り得るのだ。

 私は昔マッディーウォーターの池で四十アップのブラックバスを……通常一つの池で一本釣れたら良いサイズ……を、同じポイントで一時間程度の時間で六本釣り上げた事がある。

 マッディーウォーターはハマると凄いのだ。


「貴様、帝国の人間では無いな?」


 また誰かがやって来た。今度は馬に乗った格好良いお姉さんだ。赤髪赤目でマンサ様に似ているがマンサ様よりずっとボーイッシュな感じだから親近感がある。


「釣りをしに来ました」

「帝国領の奥地までわざわざ……?」

「はい」

「……ずいぶん肝が据わってるな……」


 釣りするだけなんだから問題無いと思ってるだけだが、不法入国に当たるのだろうか?

 マンサ様は国境は定まってないし冒険者としてなら自由にどこに行っても良いと教わったが、やはり拙いのか。


「確かに国境は定まってないな。長年一進一退の小競り合いを繰り返し近年までお互いに相手を国家とすら認めていなかったくらいだ。冒険者も受け入れてはいるが……」

「それはまた……じゃあ釣りは問題無いですね」

「理屈の上ならそうなるが、敵地だぞ?」

「魚を釣るだけです」

「一応帝国の資源なのだがな……」


 あれ、やっぱり駄目かな? 魔物魚だから倒した方が良いんじゃないのかな?


「わざわざ敵国が困っている魔物を退治するのは問題ありますか?」

「物は言いようだな……。分かった、リッツ・ブラック辺境伯の名において許可する」

「有り難う御座います」

「面白い奴だな」


 リッツ様はそう言うと豪快に笑った。


「前世のお姉さまみたいですわね」

「そうだね~」

「あんな感じだったんだ?」


 カイル君は前世では勉強ばっかりしていたそうだ。なので今回の人生は旅をするつもりだったらしい。冒険は私は常にしてるので改めて旅立とうとかは思わないけれども、遠くまで魚釣りには行きたいな。


 リッツ様が見ている前で釣りを開始する。一メートルはあるサンドワーム幼体を投げ込める私の力は異常過ぎるな。


「よし、来た!」


 ぬかるむ足元は気になるが接水千里眼を発動しやすい。どうしても足元が気になるならウェーダーを召還しよう。ウェーダーとは胴付長靴の事で、その名の通り胸元まで覆う長靴だ。

 釣れてきたのはサンドワームを丸飲みにする八メートルほどのお化けドジョウ。このサイズの魚は初めてだな。やはり二トン以上はあるだろうか。


 泥水の中の二トンある魚を腕力だけで引き摺り回す十歳とか、驚異的過ぎる。身体強化と滑り止めをオフにすると多分一瞬で水の中だが。


「凄まじいパワーだな……。これが女神の寵愛を受けし者か……」

「女神様と戦うなんて馬鹿な事ですわ」

「確かにそうだろう。しかし私は帝国の人間だ」

「私たちを殺しますか?」

「……いや。無理だろう」


 ナミエとリッツ様が仲良くしている。乗り換えたりするのだろうか。そんな事を考えていると表情を読まれたのかジトッとした目でナミエに睨まれる。

 しかし流石に泥水の中の大魚、なかなか上がってこない。ジリジリとドラグをならしてドジョウは逃げていく。竿の力で頭を振らせて体力を削る。抵抗が弱まるタイミングで糸を巻き取る。

 やっと顔が見えたな。そのまま足元まで引き摺り出して麻痺をかける。


「デカいな。こんな魚でも釣れるものなんだな」

「お姉さまは釣り人ですからね」

「……うちに招待させてもらえないだろうか?」


 敵地と言っていたが良いんだろうか?

 まあ毒を盛られても勇者様がいるから大丈夫だし、行ってみようかな? リッツ様にお魚を振る舞いたい。






 料理を研究しているとついつい食べ過ぎてしまいます……。

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