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《勝利》の古具使い  作者: 桃姫
夢想編
74/103

74話:仲間たち

 放課後、生徒会室に入るなり、王司は、ルラと真希に詰め寄られた。人前だと詰問できない、と放課後まで待った二人は、王司を壁に押さえつけ、逃げられないようにした。そんな状態に、王司は、紫苑にヘルプを頼む。


「はぁ……。青葉君、何をしたんですか?」


 紫苑が辟易としながら、ルラと真希の方へと寄っていった。するとルラが、王司を押さえつけながら、紫苑に話した。


「今日の朝、うちのクラスに変な編入生が来たのよ。で、その編入生と運命の糸で繋がっているそうなんだけれど、どう言うことかしら?」


 紫苑に説明しつつ、王司を問いただす。しかし、王司は、答えられない。と言うか、答えを知らない。王司は、愛籐愛美と言う少女について、三百歳以上でマナカ・I・シューティスターと言うもう一つの名前がある魔法少女だということ位しか知らないのだから。


「え?」


 紫苑は、思わぬ言葉に、動きが止まった。王司の思考で「魔法少女」だと知ったのだろう。そして、現代の世界にそんなものいるはずない、と思わず停止したのだった。


「ま、まほっ」


 そして、紫苑は噴き出した。堪えきれず、噴き出してしまった。しかし、魔法少女などと言う突飛な存在がいるかどうか、と言われれば、王司もついこの間までは否定していたかもしれないが、サルディアがいると言っているので、否定のしようがないのだ。


「おい、紫苑。笑うな。事実だぞ、それ」


 念のために一応言っておく。しかし、紫苑は、ギブアップ寸前だった。魔法少女とか言う御伽の存在が話の中に出てきた時点でいろいろとおかしすぎる、と思う紫苑である。


「いや、でも、青葉君。いや、それは、流石に……」


 噴き出すのを必死に堪えて、王司と会話をする。しかし、ほとんど会話の流れが分からないルラと真希は、目が点になっていた。


「王司ちゃ~ん」


 そんな時、部屋に彩陽が入ってきた。彩陽の登場に真希がたじろいだ。真希は彩陽の相手をあまり得意としていない。


「あっそびにきったよー!」


 元気いっぱいに遊びに来た彩陽。彩陽は、高いテンションで、王司の元へ向かっていく。そして、ルラと真希に押さえられているのも気にせず王司に突っ込んだ。


「あ、彩姉、苦しい」


 彩陽を払いのけるように《勝利の大剣(フラガラッハ)》を呼んで押しのけた。それに対して、ルラや真希、紫苑が、彩陽の前で堂々と《古具》を呼んだことに驚きを示す。しかし、彩陽は気にした様子はない。


「お~っと、王司ちゃんがその気なら、お姉ちゃんもやっちゃうよ~。《炎呪の姫剣(カオス・ブレード)》!」


 その瞬間、彩陽の手元に一本のレイピアが現れる。美しい装飾のレイピアは、どう見ても《古具》だった。


「え?彩陽さん、《古具》使いだったの?!」


 真希の驚愕の声に、彩陽は、「あはは」と笑った。そして、そこに更なる珍客がやってくる。


「ど~も、王司さん、遊びに来ちゃった」


 そう言って入ってきたのは愛美だ。こちらもテンションが高い。そして、《古具》を持った二人が対峙しているのを見て、なんかピンチかな?とステッキを振り回して言う。


上位変身(クラスアップ)(☆ミ)」


 パーっと愛美の身体が光に包まれて服が弾け飛ぶ。そして、光の粒子が服を形成する。白スクとハイニーソ、そして、不恰好なロングブーツだ。


「勝利と栄光の使者・魔法幼女うるとら∴ましゅまろん(☆ミ)!弾けて参上!」


 そう、その見た目こそ魔法少女そのものだった。そして、それに対して彩陽のテンションも向上する。


「うわぁああ!凄い、凄いよ王司ちゃん。変身したー。魔法少女だよー!」


 そう言って、テンションを上げまくった彩陽は、「よーし」と何か気合を入れ始める。そして、彩陽も叫ぶ。


「へ~んしん!」


 その言葉とともに、彩陽の髪は薄水色に染まる。そして、目は光なき漆黒へ。そして、【力場】が鎧と鎖帷子を形成する。


「じゃーん!お姉ちゃんも変身しちゃいました!」


 その変身に王司以外が驚く。ルラ、真希、紫苑は、彩陽が常識外の力を使えることに、愛美は、彩陽が、あのブリュンヒルデに呪われた「くりゅーさん」であることに驚いた。


「おいおい、そうそう、ブリュンヒルデ化するなよ」


 紫苑はブリュンヒルデ化と言うのを聞いたことはあれども、実際に見るのは初めてだった。


「それにしても、これだけのメンバーが揃うと凄いよな。よくよく考えると、魔法少女やワルキューレの力を持った人、勝利の大剣を持った奴、神の槍を持った奴、伝説の杖を持った奴、騎士の聖剣を持った奴、シンフォリア天使団の天使。こりゃ、中々に凄いんじゃないか?」


 王司がそんなことを言うと、ドアを開けながら入ってきた秋世が、怒鳴る。


「私を忘れないで!」

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