61話:帰還した二人
王司と彩陽は、ソファに座り、一連の出来事を綾花と無限、ルミアにしていた。何故、急にこんなところに転移したのか、その前に何があったのか、などなど。ちなみに、全裸になったことを彩陽がぶっちゃけたため、九龍家サイドの王司を見る視線が冷たくなった(なお、綾花は除く)。そして、散々話して、最後に、ルミアが口を開いた。
「つまり、義理の義理の妹と言うことねっ!」
何を聞いていたんだコイツ、と言う目で王司と無限は、ルミアを見た。そして、沙綾が言う。
「あんた、何を聞いていたの?」
沙綾がそのまま言ってしまったため、自分たちが言葉を飲み込んだ意味はなんだったのだろう、と思った。
「え?何って、今ここで話してたことだけど」
「一体、何次元の俺らの話を聞いていたんだろうな!」
無限が思わずつっこんだ。王司は呆れた目で、その夫婦漫談を眺めつつ、心の奥でサルディアを呼んだ。
(相棒、聞こえるか?)
王司の思いに答えるように、王司の右耳の耳飾りがチリンと揺れた。それと同時に、九龍家のチャイムが鳴る。
「は~い。すみません、少しお客様が来たようなので見てきますね」
綾花がそう言って、玄関へ向かった。
玄関の戸を開けると、そこには、三人の女性がいた。無論、秋世と紫苑とサルディアである。ちなみに、この時点で、サルディアは呼ばれたため、紫苑は無意識に意識を重ねてしまったため、王司の無事とここにいることを知っているのだが、そんなことを全く知らない秋世が、少し申し訳なさそうな顔ででてきた綾花に問う。
「あの、すみません、えっと……九龍彩陽さんのお姉さんか、何か?」
綾花の外見からは、全く子供がいるとは思えない。しかし、それは、優しい呪いを受けているからだ。
「いえ、彩陽は娘ですけど?」
その綾花の言葉に秋世は度肝を抜かれた。予想外すぎて、「え?」と声を洩らした。自分も人のことをいえないということを棚にあげていないだろうか、秋世は。
「な~に~?おかーさーん、お姉ちゃんのこと、呼んだー?」
親にも「お姉ちゃん」と言う一人称を使っているのか、と紫苑は、度肝を抜かれた。度肝を抜かれまくる九龍家、恐いところである。
「え?く、九龍さん?」
秋世が目を丸くして、彩陽がいることに度肝を抜かれた。紫苑は、つかつかと秋世を押しのけて、彩陽に言う。
「九龍さん、心配したんですよ?まあ、無事ならいいですけど」
紫苑の言葉に、秋世が「知ってたんかい!」と度肝を抜かれる。度肝抜かれすぎである。サルディアは、「ふぅ」と嘆息した。
「彩陽のお友達、ですか?でしたら、是非、上がっていってください」
そう微笑む綾花。無論、この時点で、サルディアと紫苑が王司がいる事が分かっている以上、王司もまたサルディアと紫苑が来ていることが分かっているのは明白である。
「あ、では、お邪魔します」
そう言って、秋世、紫苑、サルディアが九龍家に上がりこんだ。
九龍家のリビングには、少々人が多いため、無限や王司のように立っているものが現れてしまうくらいの状況だ。ちなみに、真中に机があり、それを挟むように三人掛けのソファがあるわけだが、ルミア、彩陽、綾花が座っているソファと、サルディア、秋世、紫苑が座っているソファと言う現状だ。ちなみに、沙綾は、机の上に座っているが、流石に、世話になった家とは言えそんな行儀の悪いことはできない無限(なお、ルミアだったらする模様)と他人の家でそんなことはできない王司が立っているのは必然ともいえる。
「それにしても、人が多いな」
思わず呟いたのは無限だった。その言葉に、王司とサルディアが目を合わせた。手を繋げば、サルディアは、消えれるので一人分のスペースを空けることはできる。そんな目配せを不審に思った無限が、サルディアをよく観察して、背中に生えている翼に気づく。今は、格納状態で、それほど大きくはないが、翼はある。ただでさえ浮世離れした外見なのに、翼まで有れば相当怪しいのは明白だ……が、無限に関しては、その心配は不要だった。無限もかつて、【八咫鴉】の一件でサルディアと同じ存在を目にしているからだ。
「シンフォリア天使団・超高域かっ」
無限の言葉に、サルディアが動揺する。そして、無限の言葉を聞いたルミアが、「え!!」と驚きの声を上げた。
「し、シンフォリア天使団って、【赤紫色の仲介者】のいるってゆー、あの?!」
ルミアの叫び声に、サルディアが久々に仲間の名前を聞き、驚きに、顔を歪めた。そして、サルディアが問う。
「ヴェーダ・ルムバヨンをご存知なんですの?」
【赤紫色の仲介者】とは、サルディアの【断罪の銀剣】と同じように《聖具》の名前である。
「ああ、まあ、な。それにしても一生に二度も天使共に会うことになるとはな」
無限が感慨深そうに呟いた。そして、王司を見て、サルディアを見て、その二人の耳についている同じ形をした左右対称の位置についている耳飾りを見て、王司に聞く。
「なあ、そのイヤリングはなんなんだ?」
無限の言葉に、王司は、暫しなんと言うべきかを考えていたが、先にサルディアが答えを口にした。
「私との終極神装による真契約の証ですわよ。もしかしたら、一生取れないかも知れませんわね」
そんな風に言うサルディア。王司は、「初耳だ!」と思ったが口にはしなかった。




