51話:龍殺し
昔々のこと。そう、まだ、龍がいた頃のお話。まだ、剣帝大会が開かれる遥か昔のお話。世界には、溢れるほどの龍がいた。龍殺しの称号を持つ家も多くあった。例えば、ペンドラゴン。例えば、ヴァスティオン。例えば、辰祓。そして、九龍もその一つである。正確には、九龍と言う家は、元々無名の一族だった。しかし、九つの伝説の龍を打ち滅ぼしたことから【九龍】と言う名をつけられたのだ。
伝説の九つの龍。
始祖龍・イヴ。
夢幻龍・リュヴァシュテイン。
深紅龍・スカーリアス。
黄金龍・ファーフナー。
氷河龍・ガルガンディーナ。
結晶龍・クリスティーナ。
太陽龍・ソルアルファ。
月光龍・ルーラリフォー。
時空龍・サーヤリュータ。
これら九つの龍こそが、伝説の龍。正確には、伝説の龍の中の九体、であるが。他にも伝説の龍は、終焉龍のジ・エンド・オブ・ワールドや紅炎龍のベリオルグ、深淵龍のジ・アビスなどがいる。
そして九龍は九つもの龍を殺し、呪われた。それは、あまりにも偉大な龍を殺しすぎたからだ。有象無象の龍を幾ら殺しても、そうはならなかっただろう。
そして、呪われた九龍の血には、九つの呪いが作用する。
優しき呪い。夢のような呪い。熱き呪い。幸運の呪い。凍える呪い。透明の呪い。輝く呪い。夜の呪い。時空の呪い。
優しき呪い。それは、永遠の命と魂を齎す始祖の呪い。不老不死、永久不滅、死ぬこともできない呪い。主に、二十歳を越えた辺りから呪いが進行し始め、二十数歳の見た目で永遠の時を生きることとなる。彩陽と彩陽の母・綾花がこの呪いを受ける。
夢のような呪い。それは、その視界に、常に何等かの幻視をしてしまう呪い。それがいいものか、悪いものか、それは、所持する人間の人格や血との調和性にもよると言う。
熱き呪い。それは、灼熱の血潮。誰も触れられないほどに熱き存在へとなる呪い。その呪いが顕れたものは、全身が深紅に染まると言われている。
幸運の呪い。それは、驚くほどに、驚異的な幸運を齎す呪い。その呪いにあったものは、埋蔵金を偶然見つけたり、突然色んな女性から告白されたり、と様々な幸運を齎すとされるが、それが幸運なのか、不運なのかは、その人しだい。
凍える呪い。それは、極寒の冷気に体が包まれる呪い。この呪いが発動したら、ほとんどの確率でその人は死ぬ。死なない場合、不死性のなんらかの特徴を持っているか、はたまた【氷の女王】の血族、眷属かである。
透明の呪い。それは、周りから認知されなくなる呪いである。似たような作用の別の力も存在しているが、これは呪いのため解呪のしようがないのが難点である。
輝く呪い。それは、輝かんばかりの照らされる人生を送らざるを得ない呪いである。何をしてもすぐに露見する呪い。
夜の呪い。それは、不死の呪い。ただし、優しき呪いとは違い、年はとる。だが、不滅でもある。年を取って、いくつになっても死ぬことのできない最悪の呪い。
時空の呪い。それは、数多の時空を駆け巡る呪い。その人物は、長時間、同じ時間に留まる事ができない。そのため、数多の時間を行き来しながら、目的の時間に断続的に存在するしかない。【時空間の詐欺師】・沙綾がこの呪いを受けている。
そう、これは、龍に呪われた運命の女性、九龍彩陽の章。
九龍彩陽と青葉王司の……龍に呪われた女性と、正義の青年の運命のお話。




