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《勝利》の古具使い  作者: 桃姫
聖盾編
22/103

22話:貫通の神槍

 同時刻、秋世、紫苑ペアとは別方向にて、ルラと真希は、双子の少女とであった。金髪の幼子。その見た目は、西洋人形のようだ。双子の少女、アテナ・ユーラとアテネ・ユーラである。だが、その名をルラと真希は知らない。


「貴方達、《古具使い(アーティファクター)》?」


「あたし達と、戦いに来たの?」


 双子の言葉に、ルラが咄嗟に、《古神の大鑓(エンシェント・スピア)》を呼ぶ。ルラの手元には、黒く長い五つの穂先が付く槍だった。


「《古神の大鑓(エンシェント・スピア)》ッ!」


 その重さに一瞬、ルラがよろめくが、それでも、構えは崩さなかった。


「ああ、もうっ!《翼蛇の炎砲ケリュケイオン・フレア》!!」


 そして、真希が決心をつけたように、《翼蛇の炎砲ケリュケイオン・フレア》を呼んだ。翼と蛇を模った銃が真希の手元に現れる。


「無駄だよ。あたし達は、いくつも《古具》を無効化してきた。《魔除けの盾(イージス)》は、全ての『魔』を無効化する。だから、あたしに、《古具》の攻撃は一切効かないよ」


 アテネの言葉に、真希が不安そうな顔をする。真希の《古具》にとって、遠距離からの攻撃を無効化されると肉弾戦のみとなって、勝ち目が薄れる。相手が少女とは言え、経験は向こうのほうが上なのは、真希の直感が分かっていた。


「そして、わたしの《聖鏡の盾(アイギス)》は全ての攻撃を反射する。銃も、槍も効かない」


 最初から相性が最悪の敵であった。しかし、ルラは、諦めない。そして、ルラは、知っていた。禍々しい外見とは裏腹に、《古神の大鑓(エンシェント・スピア)》は、「魔」ではない。「魔法」でも「魔力」でも「魔道具」でもない。そう、名前が示すとおり、「神」の道具なのだ。


「投げるのは無理だけど、突くくらいならっ!」


 ルラは、まっすぐアテネを突いた。アテネが体を《魔除けの盾(イージス)》で庇った。しかし、槍は無効化などされなかった。


――スッ


 軽快な音をたて、盾をすり抜ける。五本の穂先が、アテネに向かう。アテネは、咄嗟に《魔除けの盾(イージス)》を離し、避けた。


「な、何で……。《古具(アーティファクト)》なのに、無効化できないのは、何で……」


 アテネが動揺していた。


「残念ながら、これは、神の槍よ。『魔』ではないわ」


 その力の正体に、ルラは薄々感づいていた。古の槍。いくつかあるだろう。例えば、「グングニル」、「ブリューナク」、「ゲイ・ボルグ」、「火尖槍(かせんそう)」、「三尖槍(さんせんそう)」など。そして、その中で、五本の穂先と言う槍は一本だけである。


「これは、神の槍。そう、《必貫の大鑓(ブリューナク)》。《聖盾(せいじゅん)》なんかに止められはなしない!」


 《必貫の大鑓(ブリューナク)》。それが、《古神の大鑓(エンシェント・スピア)》の本当の姿。その槍、全てを貫き、五つの穂先からは、神の光を放つといわれている。太陽神ルーが持っていた槍である。


「ヒッ」


 アテネは、震えた。絶対的な力に。最悪の相性に。そう、相性が悪かったのは、アテネたちのほうであった。【絶対に貫くもの(ペネトレイター)】。如何なる盾も役に立たない。


「うっ、《魔除けの盾(イージス)》がダメでも《聖鏡の盾(アイギス)》なら!」


 アテナが《聖鏡の盾(アイギス)》を構えた。そこに一筋の光線が走った。光線は、《聖鏡の盾(アイギス)》に当たり、反射し、角度を変えた。しかし、そこに、もう一発の光線が打ち込まれる。その光線の介入により、角度を変えた光線は飲み込まれて、再び《聖鏡の盾(アイギス)》に打ち込まれる。

 真希である。ルラばかりいい格好をさせられない。自分も戦わなくては、と銃を握ったのだった。


「幾らでも打ち込めば、そのうち、ぶっ壊れるでしょ」


 そう言って、またも引きがねを引く。


――ギュオォオン!


 もはや、その威力は、かなりのものだろう。それを跳ね返すだけの威力がある《翼蛇の炎砲ケリュケイオン・フレア》の潜在能力は、どの程度のものなのか、それは誰にも分からない。


「さて、そろそろ、終わり……ってあれ」


 引きがねを引いても何もでない。弾切れか、枯渇か、チャージ不足か、どれにせよ、莫大な威力の閃光が真希に迫る。


「はぁ、馬鹿ねっ」


 ルラが一瞬で、真希の前に出る。そして、《必貫の大鑓(ブリューナク)》で弾き返す。膨大な光線は、《聖鏡の盾(アイギス)》に直撃する。決して本体にあたることのない盾に、当たった。熱によりあたっている部分が、徐々に赤くなっていく。赤と言うよりオレンジ。そして、突き抜ける。

 アテナは、とっくに離脱していた。

 こうして、《聖鏡の盾(アイギス)》は大破。《魔除けの盾(イージス)》は奪取した。アテネ、アテナ両名は、ルラ、真希が保護。

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