22話:貫通の神槍
同時刻、秋世、紫苑ペアとは別方向にて、ルラと真希は、双子の少女とであった。金髪の幼子。その見た目は、西洋人形のようだ。双子の少女、アテナ・ユーラとアテネ・ユーラである。だが、その名をルラと真希は知らない。
「貴方達、《古具使い》?」
「あたし達と、戦いに来たの?」
双子の言葉に、ルラが咄嗟に、《古神の大鑓》を呼ぶ。ルラの手元には、黒く長い五つの穂先が付く槍だった。
「《古神の大鑓》ッ!」
その重さに一瞬、ルラがよろめくが、それでも、構えは崩さなかった。
「ああ、もうっ!《翼蛇の炎砲》!!」
そして、真希が決心をつけたように、《翼蛇の炎砲》を呼んだ。翼と蛇を模った銃が真希の手元に現れる。
「無駄だよ。あたし達は、いくつも《古具》を無効化してきた。《魔除けの盾》は、全ての『魔』を無効化する。だから、あたしに、《古具》の攻撃は一切効かないよ」
アテネの言葉に、真希が不安そうな顔をする。真希の《古具》にとって、遠距離からの攻撃を無効化されると肉弾戦のみとなって、勝ち目が薄れる。相手が少女とは言え、経験は向こうのほうが上なのは、真希の直感が分かっていた。
「そして、わたしの《聖鏡の盾》は全ての攻撃を反射する。銃も、槍も効かない」
最初から相性が最悪の敵であった。しかし、ルラは、諦めない。そして、ルラは、知っていた。禍々しい外見とは裏腹に、《古神の大鑓》は、「魔」ではない。「魔法」でも「魔力」でも「魔道具」でもない。そう、名前が示すとおり、「神」の道具なのだ。
「投げるのは無理だけど、突くくらいならっ!」
ルラは、まっすぐアテネを突いた。アテネが体を《魔除けの盾》で庇った。しかし、槍は無効化などされなかった。
――スッ
軽快な音をたて、盾をすり抜ける。五本の穂先が、アテネに向かう。アテネは、咄嗟に《魔除けの盾》を離し、避けた。
「な、何で……。《古具》なのに、無効化できないのは、何で……」
アテネが動揺していた。
「残念ながら、これは、神の槍よ。『魔』ではないわ」
その力の正体に、ルラは薄々感づいていた。古の槍。いくつかあるだろう。例えば、「グングニル」、「ブリューナク」、「ゲイ・ボルグ」、「火尖槍」、「三尖槍」など。そして、その中で、五本の穂先と言う槍は一本だけである。
「これは、神の槍。そう、《必貫の大鑓》。《聖盾》なんかに止められはなしない!」
《必貫の大鑓》。それが、《古神の大鑓》の本当の姿。その槍、全てを貫き、五つの穂先からは、神の光を放つといわれている。太陽神ルーが持っていた槍である。
「ヒッ」
アテネは、震えた。絶対的な力に。最悪の相性に。そう、相性が悪かったのは、アテネたちのほうであった。【絶対に貫くもの】。如何なる盾も役に立たない。
「うっ、《魔除けの盾》がダメでも《聖鏡の盾》なら!」
アテナが《聖鏡の盾》を構えた。そこに一筋の光線が走った。光線は、《聖鏡の盾》に当たり、反射し、角度を変えた。しかし、そこに、もう一発の光線が打ち込まれる。その光線の介入により、角度を変えた光線は飲み込まれて、再び《聖鏡の盾》に打ち込まれる。
真希である。ルラばかりいい格好をさせられない。自分も戦わなくては、と銃を握ったのだった。
「幾らでも打ち込めば、そのうち、ぶっ壊れるでしょ」
そう言って、またも引きがねを引く。
――ギュオォオン!
もはや、その威力は、かなりのものだろう。それを跳ね返すだけの威力がある《翼蛇の炎砲》の潜在能力は、どの程度のものなのか、それは誰にも分からない。
「さて、そろそろ、終わり……ってあれ」
引きがねを引いても何もでない。弾切れか、枯渇か、チャージ不足か、どれにせよ、莫大な威力の閃光が真希に迫る。
「はぁ、馬鹿ねっ」
ルラが一瞬で、真希の前に出る。そして、《必貫の大鑓》で弾き返す。膨大な光線は、《聖鏡の盾》に直撃する。決して本体にあたることのない盾に、当たった。熱によりあたっている部分が、徐々に赤くなっていく。赤と言うよりオレンジ。そして、突き抜ける。
アテナは、とっくに離脱していた。
こうして、《聖鏡の盾》は大破。《魔除けの盾》は奪取した。アテネ、アテナ両名は、ルラ、真希が保護。




