表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《勝利》の古具使い  作者: 桃姫
聖盾編
17/103

17話:躍動へ

 王司と紫苑は、まず秋世に連絡を取って、【鉄壁神塞(てっぺきしんさい)】について話し合おうと思った。しかし、秋世はまだ学園に来ておらず、携帯の電源も切っているらしい。紫苑は、まず【鉄壁神塞(てっぺきしんさい)】の介入で秋世に何らかの事があったのではと疑ったが、それに関しては王司が否定した。


「それはありえない。《銀朱の時ヴァーミリオン・タイム》がある限り、不意をつかれてやられてもどこかへ逃げられるはずだ。まあ、殺されてなければ、だが」


 不吉なことを言う王司にギョッとした紫苑だが、とりあえずは、各々教室へ向かう事が正解だろうという結論に至った。秋世に何かあったにせよ、なかったにせよ、近いうちに【鉄壁神塞(てっぺきしんさい)】と接触を図る必要があるだろうが……。


「では、わたしは教室に戻りますね」


「ああ、俺も戻る。放課後は、まず生徒会室で、ルラと真希に話すとしよう」


 二人は、そう決断し、各々教室へ向かった。





 三時間目からの参加となった紫苑は、恐る恐るドアを開いた。


「すみません、遅れました……」


 紫苑が教室に入ると、教室はシーンとしていた。教室の黒板には、「三限自習」の文字が書かれていた。どうやら授業中に急にドアを開かれて、教師が来たと思った生徒達が、固まった結果、シーンとしたらしい。


「あっ、会長さん。朝から王司ちゃんと生徒会室にこもってたってホントー?詳しく聞かせてー!」


 彩陽が大きな声で聞いた。紫苑は、若干圧倒されながらコクコクと頷いた。


「生徒会での重要案件で少し話していただけですよ。まあ、重要案件なので内容は話せませんけど。ただ、厄介ごとになりそうなので、切り上げて、残りは放課後に回しました。まあ、しばらく忙しくなりそうですけど……」


 紫苑が、少し暗い声で言った。それに対してテンションの高い彩陽は、紫苑のテンションの低さなど全く気にせず聞く。


「ってことはしばらく王司ちゃんも忙しいってことー?お姉ちゃんショッォクッ!!」


 その叫び声は、かなり五月蝿かった。下手すれば、隣のクラスから苦情が来てもおかしくないくらいだっただろう。


「あー、えっと、まあ、あまり酷使はしませんよ。でも、本当に大変な日々になりそうです……」


 どこか遠くを見るような目をして、周囲を見た。そう、紫苑とクラスの人間には、圧倒的な壁があった。《古具(アーティファクト)》と言う非日常の大きな壁が。




              ◇◇◇◇◇◇




 王司は、三時間目の途中にもかかわらず、普通にドアを開けた。すると教師からの声が響いた。


「こらぁー!青葉君!こんな時間まで何やってたんですか?」


 まるで覇気のない怒鳴り声に、王司は思わず苦笑しそうになった。それでもなんとか苦笑を堪えて言った。


「あー、っと、生徒会長にちょっと呼び出しくらいまして……。仕事のミスで小言を二時間以上たっぷり」


 ちょっとおどけたように笑う王司。無論演技である。真希やルラ、祐司は気づいていた。ちなみに、ルラは何か事件が起きたのではないか、と言う疑いすら覚えていた。自分よりも早く家を出たはずの秋世が朝のホームルームに顔を見せなかったからだ。連絡も取れなかったと言うのもある。


「そうですかぁー?まあいいです。席についてください」


 教師にそう言われて、王司は席についた。そして授業が再開される。そんな時、王司の目の前が銀朱色に包まれたのだった。

 王司だけではない。真希、ルラ、紫苑もそうだった。突如の眩い閃光に、目が眩み、驚いた。王司とルラは二回目だったが、それでもいきなりすぎたので、さすがに幾ら二人と言えど驚いた。




              ◇◇◇◇◇◇




 秋世は、学園への道のりで、突如スマートフォンに入った着信に、驚いたが、電話に出た。


「もしもし?アーサーさんですか?」


 秋世の言葉に、アーサーは、安心の声を洩らした、様に秋世は感じた。


「ああ」


 そして、秋世はアーサーに問うた。


「何か用ですか?これから学園に行かなくてはならないんですけど」


「緊急な用だ。昨日、新勢力が、そちらに居たのを確認した。【鉄壁神塞(てっぺきしんさい)】と言ったか?主にヨーロッパを拠点に活動していたようで、聖王教会側も感知していた。数日前から日本へ渡航していたようだが、これは、ヨーロッパのとある《古具》使いの名家を潰した時に得た金での豪遊の一環だと思う。汐谷希世と言う日本人の青年と対峙し《聖母の盾(ブリウエン)》は取り返した」


 まくし立てるような報告に、秋世は、脳の中でいろいろと情報を整理した。


「取り返したと言うのは?」


「ああ、元々、《聖母の盾(ブリウエン)》は、アーサー王が持っていたとされる盾でな。《聖盾》使いがいて、そいつ等が持っているなら返してもらおうと思っていたんだ。まだ、いくつか残っているらしいから、残りの処分は頼む。もし倒して《聖盾》を手に入れて、使い道がなければ、オレたちか、聖王教会の方へ送ってやってくれ。大体の位置はつかめているから、今から監視を頼む」


 そう言って通話が切れた。


「あー!もう、いつも勝手なんですから」


 そう言って秋世はスマホの電源を落とした。しばらく、監視する上で、電源を入れておくと、いろいろと危うい事がある。マナーモードや機内モードではなく、電源を切る事が重要だ。





 しかし、数時間しても《聖盾》使いたちは一向に捕捉できなかった。そのため、秋世は強硬手段へ出ることにした。生徒会の面々を呼び出し、探すのを手伝わせる作戦だ。そうして、秋世は《銀朱の時ヴァーミリオン・タイム》を発動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ