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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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日常編「リルとテルルの子守り」

 ご近所さんのつわりが酷く、四才児を預かることになった。

 クララが教えてくれたけど、義母が「嫁は家守り能力優先で選んだ」と言い、私は家事も子守りも完璧な娘だったから嫁にしたと話しているらしい。

 息子の家出が嫌で嫁入り当日から親切だった義母は、今度は嫁の家出が怖くなったのだろう。

 義母は最近、義父にちょこちょこ、「リルさんが家出したらお父さんの我儘(わがまま)のせいですからね」と釘を刺している。

 嫁が家出しないように、私のことをご近所さんに褒めて仲良し作戦とは嬉しい。


 私にもたまに、「あなたが疲れて倒れたら家がめちゃくちゃになるから気をつけなさい」と言われる。

 疲れないし倒れないけど、義母と料理をしたいから「疲れないように一緒にお願いします」と頼んだ。

 新しい飾りつけや味付け、料理ができてすこぶる楽しい。


 今日、朝から我が家に遊びにきた四才児は「ユト君」だ。

 今週、何回か家に行って一緒に遊んで慣らしたから、大丈夫だと期待したけどダメ。

 知らない家に置いていかれて泣いている。

 人間は涙で溺れ死はしないので放置。むんずと抱っこして、暴れたけど無視して縁側へ。義母がおろおろしながらついてきた。

 縁側に降ろしても泣いているけど、私は洗濯物を干すから放置。

 義母がユトに話しかけたので、任せて良さそうだと洗濯物を干していく。


「火消しの歌です、空が青くて気分良し〜」

 

 さぁ、よい、よい、よいとユトに合いの手を求める。ユトはまだ泣いているけど「火消し?」と顔を上げた。


「火消しの歌です、悩みがないから気分良し〜」


 ユトは最近、火消し好きらしいのでいけそうな気がする。


「ぼくもそのうた知ってるますよ!」


「さぁ、よい、よい、よい!」

 

「さぁ、よい、よい、よい!」


 昔のルルたちみたいに歌っていればご機嫌なら楽。

 一緒に歌いながら洗濯物を干していく。手伝ってくれてええ子。

 散歩で疲れさせて昼寝させたいから、早めに買い物へ行くことに。

 疲れて「歩きたくない」と言われたら重くて困るけど、困ったらそれこそ火消しに頼もう。

 火消しはそのくらいのことでも助けを求めていい存在だと学んだから。


 迷子になったら私が鬼にさらわれるから守ってとユトに言い、手を繋いで一緒に買い物へ。

 歩く訓練、大人の目は多い方がいいと義母もついてきた。

 ユトを真ん中にして、私も義母も手を繋いでもらい、歌いながら魚屋へ。

 安売り戦争の時間ではないから空いている。


「おさかないるね」


「ねんねしてますね」


「ねんねしてないのよ。目があいてるます」


 卿家男児は四才児も敬語の練習らしいので、ユトは不思議な言葉遣いだ。かわええ。

 義母がユトと会話しているうちにお買い物。今夜の夕飯は……。

 

「えびがいるのです」


「えびですね」


「ユト君はえびすき」


「このわんさかチビえびを下さい」


「毎度、桜エビですね」


「はい。お義母さん。お昼にかき揚げうどんと、夜に炊き込みご飯、どちらがええですか?」


「お駄賃をいただいてるから、うどん屋で食べて帰りましょう。お行儀の練習になりますし、あなたも今後に備えて知っている店を増やさないと」


 甘々義母は、結婚三年目も甘々だ。

 義母に言われて買ったものは取り置きを依頼。

 八百屋でも買い物をして、こちらでも取り置き。

 目上の人を軽く接待するために使える、ちょっとええうどん屋へ連れて行かれた。

 うどん屋なのに外で食べる場所がない、門構えが立派ないお店で緊張する。

 義母が、今日の支払いは義父のお財布からだと告げた。


「どうせお父さんはまた、家に人を連れて来るから先払いです」


 お店に入り、席で見て、ミーティアランチの三倍するお品書きに軽いめまいがした。

 義母に「そういう顔をしない訓練をしなさい」と怒られた。


「嫁に貧乏を強いてるなんて思われたら、家の恥ですからね」


「はい……」


 贅沢するなと育ったのに、逆を言われる日々だ。

 でも、普段は質素倹約なことは知っている。私も実践しているし、今年になってから少しずつ家計について学び中。

 ロイが、嫁教育資金が増えたと言っていたので、今日の贅沢うどんも多分それ。

 ユトに食べさせながら自分の食事も進めていたら、義母に「リルさんって、喋らないようで喋るわよね」と言われた。


「どっちですか?」


「下に三人もいるから、あしらいが上手いわね」


「そうですか? 男の子は分かりません」


 ユトはうるさくなくていい子だ。言えば何かしてくれる。ルルたちはうるさいけど、勝手に遊んでいた。

 ルルに言えば、レイとロカが怪我しないように見ててくれるし。


 怖いから一番安いうどんにしたけど、出汁が全然違ってすこぶる美味しかった。

 野菜と魚のつみれのおうどんは作ったことがないから今度作る。

 またユトと手を繋いで歩き、火消しが大通りの真ん中で防災紙芝居をしているのを発見。

 ユトが見たそうなので、防災は大切だと見学。

 若い兵官がきて、道の真ん中で邪魔だと怒った。

 別の兵官が来て、兄だった。兄は自分より若い兵官にダメ出しをして、火消しに謝った。

 でも、兄は火消しに軽く文句を言って、羽織りの下から細い縄を出して、火消しと縄を張った。


「看板を出しとくんで、帰る時に片して下さい」


「おうよ。つい、先に始めちまっていつも悪いな」


 気の良さそうな年配火消しは全然悪びれた顔をしていない。

 

「面倒ならそこらの兵官に言うて下さい」


「今日はそれすら忘れちまった。あはは」


 紙芝居がまた始まる。兄が若い兵官と去ろうとしたので声をかけた。頑張って呼ばないと聞こえなくていなくなる。


「ん? おおー、リル。いたのか。テルルさんもこんにちは」


「ネビーさん、お仕事お疲れ様です」


 兄は私と義母を見て、真ん中にいるユトに視線を落とした。兄がしゃがみ、ユトに「こんにちは」と話しかける。


「こんにちは」


 ユトは大人しめの男の子だから義母の後ろに隠れた。


「テルルさん、どちらさまですか?」


「ご近所の子で、母親のつわりが辛いようなので順番に預かっています。風邪が流行ってて、集会所を閉めてて」


「寺子屋って手もあるけど、下町小僧たちに囲まれたら粗暴になるとか心配って感じですか?」


「家の方針によります。寺子屋を臨時使用もすることは多いですけど、ユト君は大人しいから心配だそうです」


「イオが、ミユさんのつわりが心配だからって、夜勤ばっかりしてて、暇な時間は寺子屋で遊んでるから頼んだら見てくれますよ」


「そうなんですか?」


「嫁は子供と遊んでる俺に惚れたから、俺は寺子屋教師の資格も取るって言うてます。リルの町内会にも顔を出せって伝えておきますね」


 じゃあ、と兄は足早に去っていった。義母が「まだ頼んでないのに」とため息を吐く。


「前よりは話を聞くように……」


 屋根から大工——見習いらしき小さい人が落ちて、兄がひょいっと抱きとめた。思わず拍手。

 火消しの防災紙芝居を見て、八百屋と魚屋に寄り、取り置きを持って帰路へ。

 途中で富豆腐屋の棒手売りがいたので、呼び止めたら、義母が「沢山買うから家まで来て欲しい」と言った。

 父や兄の幼馴染が働く豆腐屋の豆腐を、義父母もロイも気に入ったから、見かけたら買う。家に来てもらう発想はなかった。


 炊き込みご飯に美味しいお豆腐〜。

 家に帰ると、義母は豆腐を食べきれないほど買った。何事だろう。

 

「上の人に、日々、どのくらい売れたらこの辺りに販売に来てくれるか聞いて欲しいです」


 義母は棒手売りに羊羹とお金を渡して見送った。ユトの家から貰って、楽しみにしていた羊羹……。


「リルさん、仲のいいお嫁さんたちに豆腐をお裾分けしてきてちょうだい。後日、感想も聞いてきて。きっと気にいるわ」


「はい……」


「どうしたんですか、その顔は」


「……羊羹、食べたかったです」


「お裾分けに行ってきなさい」


 甘々義母が甘くない日だった。

 これはもしや、聞かないと叱られるやつではないかと、富豆腐を好きな家を増やして棒手売りに来てもらう作戦かと問いかけた。

 私は嫁になって三年目なので、こうしてぼん者から少しずつ脱出している。


「ええ、そうです。我が家はみんな気に入ったんだから、自分で思いつきなさい」


 前髪があるのに軽くおでこをペシンッとされて、ちょっと嬉しくておでこを撫でる。


「なにをニヤニヤしているんですか。まっ、少しは機転が効くようになってきたと喜ぶ気持ちは分かります」


 義母と前の日からに親子っぽいからと言うのは恥ずかしいから、静かに頷いて豆腐を持って出掛けた。

 大きなお皿と皿に豆腐が沢山。

 今日の私は豆腐のちび棒手売り、なんて。


 エイラはいなくて、エイラの義母に、そろそろ買い物に行くところだったからと感謝された。エイラは現在妊婦疑惑。今日は顔色があまりだったから、実家で休ませているそうだ。

 お土産に、お茶会で余ったかりんとうをいただいた。胡麻が沢山で美味しいらしい。万歳!

 次はサリのところ。サリのお腹は大きくなってきた。いつも通り、義母が買い物に行ってくれる予定だったので、「助かります」と笑いかけられた。


「マヒトさんがお友達から桃を沢山いただいたんです。良かったら持って帰って下さい」


 手間だけど、ミーティアへ行って桃のお菓子を作ってもらえないか聞いて欲しいとも頼まれた。

 私も知りたいだろうから、お願いと。出来上がったお菓子は私も含めてお茶をしようとも誘われた。

 嬉しい提案なので、二つ返事で引き受けた。


 今度はクララのところ。その前に、買い物に行くっぽいオーロラに遭遇。

 オーロラが豆腐を気に入れば、近い年代の奥さんたちに広めてくれそうなので、義母に彼女にもお裾分けだと言われている。

 えいっと声をかけて、豆腐をお裾分けしたいと話した。


「ちょうど良かった。夫がまた野菜を沢山貰ってきて。食べきれなさそうなの」


「いつもありがとうございます」


 豆腐の代わりに野菜がわんさか。

 我が家の最近の食費は、オーロラからの野菜のお裾分けで安くなっている。

 野菜は沢山あるから、オーロラが家まで持ってきてくれることになった。

 一緒に家へ行き、お豆腐を渡し、最後にクララの家へ。

 クララは「気持ち悪い」らしくて、彼女の義母が出てきた。


「孫かもしれなくて、そわそわしているのよ。豆腐は食べやすそうで助かるわぁ。ありがとうございます」


 クララは不妊だと悩んでいたので、それはめでたい!

 嫁は食べられなかったからと、羊羹をいただいた。羊羹が戻ってきた!

 義母と仲良しのベラが最後。ベラは、友人である義母から聞いた豆腐をやっと食べられると歓喜。


「リルさんは荷物を沢山持っていますね」


「お裾分けのお礼をいただきました」


「うちは軽いものにしましょう」


 ベラは私の懐に「楽語の招待券」と言いながら紙を入れた。


「うちの人にテルルと行きたいからって頼んだら、多く貰ってきてくれたのよ。リルさんもご友人とどうぞ」


 あの楽しい場所にまた行けると、心の中で万歳!

 お裾分け祭りが終わったので帰宅。義母はユトとお絵描きをしていた。

 義母の笑顔がとても優しくてええ。

 早く私にも赤ちゃんがこないかな。

 

 夕飯の支度を始めてすぐ、オーロラが約束の野菜を持ってきた。

 ユトの母親と親しかったようで、「今日はリルさんが遊んでくれているの」と、とても優しい眼差しを向けて頭を撫でていた。


 義母にユトを任せて夕食の下準備をして、洗濯物を取り込む。

 お風呂の準備と思ったら、湯船に水が溜まっていた。兄が来たのだろう。

 鍛錬になるからと、休み時間か何かで来てくれるけど、私たちに声をかけないことが多い。

 お茶くらい出すのに、何回注意しても来訪したと言えないなんて、困った兄だ。

 そろそろ、お風呂場にお茶とちょっとした食べ物をを置いておくべきかもしれない。お茶は冷めてしまうけどないよりええ。


 洗濯物を畳みながら、義母とユトのお絵描きを眺める。ユトは四才なのに上手に筆を持っている。かわええ。

 猫が来たので、庭を守ると外に出て、じーっと見張る。猫は義母とユトの近くでゴロゴロしているだけ。

 洗濯物が猫の毛だらけになると困るのでさっさと避難。

 掃除は今日はいいやと思ったけど、時間が余ったから拭き掃除。そう思ったら義母に「今日くらい休みなさい」と遊びに誘われた。

 探したら出てきた折り紙があると言われて、何か分からなくて聞いたら驚かれた。

 義母は綺麗な紙を折り、鶴を作った。綺麗だし、羽がパタパタ動くから、ユトは大喜び。

 私も一緒に小躍り。お小遣いで綺麗な紙を買って、四角く切ったらロカにも作ってあげられる。

 拾った新聞などで紙折りと折り紙は似ているようで全然違う。出来上がったものが綺麗だから私はとても気に入った。

 

 義母と三人でユトを自宅に送り、お礼を言われて帰った。

 二人で夕食を作り、義父とロイが順番に帰ってきていつもの夜。

 夕食後の片付けをして居間に戻ったら、義母が羽が繋がった鶴をくれた。白銀のとても美しい紙が使われている。


「どうやって繋がっているんですか⁈」


「さぁ。仲良しだから、雪うさぎみたいに飾ったら?」


「飾ります!」


 まずは神棚に飾って祈る。


「それ、神棚に置いておくのか?」


 義父の問いかけに、そうだと答える。一晩、ここに飾って明日からは自分の机に飾る。


「お義母さんと私は仲良く長生きします」


 もっと仲良くなろうなんて嬉しくて小躍り!


 ☆☆


 テルルは寝る前に、夫にこうぼやいた。


「軽くだけど、息子と末長く仲良くって思ったのに私とって何なのかしら。リルさんって、本当に変わっていますよね」


 ガイはため息混じりでぼやく妻が珍しく自分の布団の中に入ってきて寄り添ってくれたので、「あの嫁はやっぱり副神だ」と微笑んだ。

投稿してから気づきましたが時系列おかしい気がします。三年目の秋にユリアとレイス出産だったような汗

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