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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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特別番外「ルーベル家と異文化交流16」


 一試合しか参加していないけど、かなり動いたのでお腹が減った。

 皆で闘技場を出て、家族とセレヌとレージングで昼食をとることに。

 しかし、ネビーが合流して、ラオ家で食事会だと言われた。

 

「庭で餅つきをしてくれるんですよ。レージングさんたちはきっと、見たことがないですよね?」


 火消しは餅つきが好きっぽい。なにかと餅つきをしてくれる。レージングたちのために、そんなことになっているとは。

 そういうわけで、ラオ家に行ったら、なんと、ルルたちがいた。

 我が家と交流する時の着物姿で、髪の毛を綺麗に結って、堀り椅子に並んで座り、本を読んでいた。

 昼まで両親たちの仕事を手伝ったので、午後はお祭りで遊んで良い、ネビーが付き添い人だそうだ。


「餅つきに続いて、これも言い忘れていました。あっ。サエさん、イオとミユさんは?」


「二人は可愛がっている子供たちと遊びに行ったわ。イオが、お父さんと食事は嫌だって」


「不貞腐れたってことですね。一緒にいるなら、喧嘩は大丈夫なんですか?」


 俺たちだけではなく、ネビーもあの喧嘩っぽい様子を見ていたようだ。


「喧嘩? いつも通り、ミユさんがイオを叱ってくれたりはあったけど、喧嘩なんてしてないわよ」


「あれは喧嘩じゃなかったんですか。何か怒られて、謝っているように見えたんですけど。闘技場でなんかそんなのが見えました」


「口の悪さを直さないと、お世話している子供たちが真似するって、叱ってくれただけよ」


 これで、二人は喧嘩していなかったと分かった。


「ネビー君とロイ君からも言うてちょうだい。昔から注意してるのに、火消しの血筋の男はガラが悪いのよね」


 ネビーが、俺の背中を叩いて「ロイさんはええ見本になりますよ!」と言ったからか、サエも俺の背中をバシンと叩いた。

 火消しの嫁は火消し一族の娘のはず。だからなのか、かなり痛かった。


 ラオ家が用意してくれた餅つきに参加し、つきたてのお餅を色々な味で楽しんだ。

 レージングもセレヌも楽しそうで何より。

 セレヌはイオの薬棚に興味を持ち、サエに「勝手にどうぞ」と言われ、レージングが昨日教わったと彼女に説明していく。

 それを、ルルとロカが面白いとちょろちょろ見学。それを、俺とリルがお喋りしながら見守る。

 レイはなぜか俺の母にくっついて、何か喋っている。その近くでネビーは父と真剣な顔だ。


 餅つき会後は小祭り会場へ行き、出店を見て回ることに。

 ルルとロカは知的好奇心が強いようで、セレヌの手を離さない。

 リルが、今日はロカと遊ぶつもりだったのにと、少し寂しそうにしたが、今は、セレヌ一人では大変なのでと、彼女たちの会話に混ざって楽しそう。

 レイはなぜか今度は父にくっついて、餅の味付けについて熱弁している。それに、母が愉快そうに付き合う。

 

「思い切って、妻について来て良かったです。ロイさんもネビーさんも、ありがとうございます」


「自分は何もしていません。むしろ、こちらこそ来てくれてありがとうございます」


「いつでも『帰ってきて』と言ってくれたのは、ロイさんたちです。ヴィトニルやセレヌに、僕もと伝言をしてくれて、嬉しかったです」


「三人でも、夫婦でも、一人でも、いつでも突然帰ってきてええですからね」


「その時は、俺を呼んでくださいよ。次は勝ちたいです!」


「あはは。僕は負けず嫌いだから、次もネビーさんに負けませんよ」


 話題は自然と今日の大会のことに。男三人、お喋りしながら家族を眺める。

 ひくらしの出店を発見した。レオたちに挨拶をして、可愛い甥っ子ジオを皆で抱っこする。

 

「ジオは、戸籍上はロイさんや俺の弟なんですよ」


「どういうことですか?」


 ジオは今、レージングの腕の中で、すやすや気持ち良さそうに眠り続けている。


「ロイさん家は家柄がええから、ジオを養子にして、家が存続できるように跡取り候補です。ロイさんの次。ロイさんとリルに子供が生まれてすくすく育ったら、お役御免ですけど」


「ああ、準華族でしたっけ」


「それ、ヴィトニルさんからも聞きました。博識のようで間違っていますよ。前回、修正しそびれました。凖華族なんて家柄はありません」


「ロカも抱っこする! ロカも!」


 ロカがせがむので交代。子供が赤ちゃんを抱っこなんて落とさないのか? と心配だったけど、ルカとリルが世話をしながらだから、何も問題なかった。

 しゃがんだセレヌが、「赤ちゃんは久しぶりだから、ずっと触っていたい」とジオのぷにぷにほっぺをつつく。

 ジオを囲ってワイワイしていたら、イオとミユが現れて話しかけれた。

 二人の後ろに、イオが額につけている、お揃いの狐の半面をした、似たような背丈の男の子が三人いる。


「インゲ。お前の健康を願ってくれた人たちだから、お礼を言うとええ。ご両親が既にお礼をしてるけど、お前はまだだよな?」


「うん……。初めましてだと思う」


 イオが俺たちに紹介したインゲは、リルがミユに頼まれて我が家の魔除けの水をお裾分けした子だった。

 退院して調子が良さそうなので、こうして小祭りを楽しんでいるとイオが教えてくれた。

 イオとインゲにお礼を言われたので、リルと共に「いえいえ」と返す。


「インゲ君。うさぎを連れてきたり、あの飾りを用意してくれたのは、こちらのネビーさんですよ」


 ミユが優しく微笑みながら、インゲの背中を押してネビーの前へ促した。


「あの、ありがとうございました。すごく元気になりました」


「嘘つけ。まだまだ病弱だから気をつけろ。改めて、ありがとうな」


「別に、あのくらいのことはいつでも」


 インゲがネビーに向かって頭を下げ、その頭をイオが優しく撫でた。

 そんな二人を、ミユがとても眩しそうに眺めている。

 こういう光景を見ると、婚約破棄なんてしないだろうと感じる。


 レージングは昨日、インゲを診察したそうで、彼もお礼を言われた。


「いえいえ。病で困っている人に手を差し伸べることは、医者として至極当然のことです」


「当たり前じゃないし、知識技術不足もいますから、頭が下がります。じゃあ、そろそろ帰るぞインゲ」


「えー! もう?


「動き過ぎてまた入院は困る。あとはクルスとニムラと大人しく家で遊べ。俺とミユも付き合うから」


「インゲ君、無理しないって約束したよ」


「そうだよ。イオさんの言うことを聞くなら出掛けてええって言われたんだから、えーじゃない。帰るぞ」


「帰っても僕らと遊ぶから楽しいよ」


「祭りより楽しくしようぜ」


 お面がお揃いなのは仲が良いから。それを証明するような子供たちの光景にほっこりする。


「姉ちゃん、ロカもあのお面が欲しい! かわええ!」


「ジオのお世話を沢山しているからええよ。どれにする?」


 すぐ近くのお面屋の前で、ロカが「同じものががええ!」と騒ぎだす。リルが微笑みながらロカの頭を撫でている。かわええ。


「ここにはあれはないから、お姉さんと探しに行こうか」


「リルちゃん、悪いんだけど、これは俺が頼んで作ってもらった特注品だから……」


「お嬢さん、どうぞ」


 男の子たちの一人——確かクルスが、ロカに自分のお面を差し出した。ロカはすぐに受け取り、「やった」と大喜び。


「お姉さん、代わりに僕にあのお面を買って欲しいです。あの病除けの格好ええやつ!」


「クルスはええ奴だな。俺がロカちゃんにあげようと思ったのに。病除けってのもインゲのためだろう。よしっ、俺が買ってやる。あれでええんだな」


 リルが促して、ロカはクルスにお礼をして、イオに肩車をされたクルスは大喜び。

 ロカも「かわええ」と、狐の半面をつけて、くるくる回っている。あれはかわええより格好良い面なのに、子供というかロカの感性はよく分からない。


「じゃあ、帰るぞ!」


 彼らとお別れをして、近くのお店で輪投げをしていたら、ウィルたち家族に話しかけられた。

 俺が送った速達が届き、ちょうど用事がなかったので、遊びに来たそうだ。


「さっきヨハネさんを見かけたんですよ。可愛らしいお嬢さんとご一緒でした」


「お見合い相手のご家族と一緒だとうかがいました。例の方ですよね?」


 ウィルとリアに、俺は「多分」と答えた。

 俺は、ヨハネにも小祭りの情報を流したけど、その後のことは知らないので。

 リルも知らなかったようで、二人でクリスタの家族は闘技場に居なかったと言い合う。


「そうだ。ジミーさんもいましたよ。急に大きな行事ができて、臨時勤務だと言うてました」


 ヨハネに教えられた話に驚く。


「……えっ? そうなんですか?」


「ロイさんのお陰で臨時収入だと言うてました。あと、今度ご馳走してくれとも」


「なんで衛生省なのに……ああ、闘技場で食べ物が売っていましたね」


 それでも、本庁から出向しているジミーに臨時出勤——それも休日勤務の矛先が向かうのはおかしな話。多分、気遣い屋の彼が自ら手を挙げたのだろう。


「ベイリーさんは見かけないから、勉強優先でしょうか」


「自分も見かけていないのでおそらく。そんなに大きな祭りではないから、いたら会いそうですけど会っていません」


 俺もウィルも、ベイリーとアレクを見かけていないから、彼らは来られなかったのだろう。

 顔見知りや、ご近所さんたちとはたびたび、すれ違っている。

 ウィルたちと別れて、再びぷらぷらしていると、太鼓や笛の音が聞こえ始めた。火消し音頭が始まるのだろうと、ワクワクする。

 

「あっ、そうだった。リルさんたちは、だんすぱーてぃーをしたいのよね?」


「……したいけど、この小祭りでするのはすこぶる恥ずかしいです」


「皆ですればきっと平気よ。あのね、レージング」


 セレヌに相談されたレージングはこう言った。


「扇動や誘導はヴィトニルが得意で僕はあまりだけど、君のためなら励むよ」


 まずは音楽の中心へ。

 移動したら、レージングと俺は火消したちに話しかけられ、昨日のあの踊りを、昨日いなかった人たちにも教えようと誘われた。


「ああ、それだ。それでも良いかもしれない。お願いします」


「お願いしますって、ちょっと覚えられてないから、お願いするのはこっちです。昨日みたいにまずは太鼓を」


 促されたレージングは、太鼓を鳴らし始めた。

 昨日、聴いた耳慣れない叩き方の太鼓だ。元々は、彼が火消しに教えたとは知らなかった。

 

「レージング!」


 リルの手を引いたセレヌが来て、笛を出して吹き始めた。


「笛の方々、妻のめろでぃーの真似をできますか?」


 レージングの問いかけに、皆が「めろでぃー?」と首を傾げる。

 笛を持っている火消したちや女性たちが、「めろでぃーは音?」みたいに言ってから、似た曲を演奏し始めた。


「そうです。音を真似して下さい。恥ずかしいけどよし、セレヌ」


「うん!」


 二人が、昨日、酒に酔った俺も踊った踊りを開始。ただ、

 昨日と少し違くて、たまに手を取って握ったまま動いたり、腕を組んだり、レージングが腰に手を回したりする。

 あれを男女でするのは、かなり恥ずかしい。


「リルさん!」


「えっ?」


 セレヌはリルを踊りに誘い、レージングは俺。

 二人はそれぞれ俺たちの背中を押して、向き合わせた。

 セレヌはルル、レージングはロカと踊り始めていて、火消したちが近くの人たちと真似を始めている。


「リルさん。手を繋いだりは恥ずかしいので、それ以外でいきましょうか」


「はい」


 俺は昨日の騒ぎを思い出しつつ、周りを真似して動き出した。リルがそろそろと動き出して笑う。かわええ。

 セレヌとレージングは次々と相手を変えていく。


 トントントンと跳ねながら、くるくる回って手を叩いたり足を軽快に揺らしたり。

 

「ご夫婦や家族とは、こんな風にも」


 レージングとセレヌが手を取り合い、前に我が家で見たダンスのような動きを、軽快にし始めた。

 二人は少しすると離れ、次々と皆の背中を押して、二人ずつの組にしていく。

 俺は母、リルはロカ、ルルはレイ。

 セレヌが一緒に近くに来ていて眺めていただけのウィルたち家族の手を引き、俺たちの方へ引き入れる。

 珍しい音楽で集まった人たちも、二人にどんどん踊るように促されていった顔見知りが増えていく。


「祖国の感謝祭の踊りは縁起がつきます! 楽しませてくれたお礼です!」


 レージングとセレヌが始めた歌が広がっていく。昨日も聞いた楽しい、感謝のこもった歌詞の歌だ。

 陽気で明るい、お酒も入っている火消したちが、二人のように、区民を参加させていく。


「ロイさん、飲め飲め!」


「ヤァドに勝った祝い酒だ!」


 ナックとヤァドが踊りながら俺を捕まえて酒を飲ませた。昨日と似ていて、嫌な予感がする。

 視界の端で、ヨハネがクリスタと向かい合ったのが見えた。頑張れ、ヨハネ。


「イオはどこだ!」


「ネビーにも飲ませろ!」


「俺は子育て中だから飲まねぇ……飲みません!」


 レイと踊っていたネビーが、ロカを抱き上げて逃げていく。それを、火消し数名が追いかけていった。


「あはは。あいつ、お坊ちゃん練習をしてる」


「追いかけようぜ」


 俺を見て「役人坊ちゃんじゃないか「飲め」と知らない火消しが増える。

 

「異国の縁起踊りだ! 皆、幸せで健康であれ!」


 周りはどんどん楽しそうなのに、俺は飲まされ始めた。あそこにウィルがいる、リアとおずおずと踊り始めたと気がつき、近寄りたいのに行けない。

 明日は仕事なので困ると断ったら、「大丈夫、大丈夫、遅刻すればええ」である。


「それは火消し特権で、普通の役人の自分は許されません」


 なんとか逃げたら、母の前に出た。

 と思ったらその母が「健康祝いの縁起踊りなら!」と叫んだネビーに抱き上げられて唖然。


「あの、ちょっと」


 ネビーは大笑いしながら踊って、「はい、ロイさんも」と俺に母を渡した。

 子供を抱っこするように母を抱き上げることになるなんて。


「兄ちゃん、ロカも!」


「おうよ! お兄さんって言えたらな!」


「お兄さん!」


 ネビーがロカを片腕で抱き上げて軽快に踊り出す。


「ふふっ。お父さんの企みで、破天荒な息子ができました」


「母上、怖くて動けないので下ろしますね」


「ええ」


 そのはずが、セレヌが母を攫うように抱いていった。

 

「テルルさん! 私たちがもっと、うんと沢山、薬も治療法も探しますからね!」


 セレヌはそう叫ぶと、満面の笑顔で高々と母を持ち上げた。

 それで軽く踊って、ゆっくりと母を地面におろし、「手拍子で参加!」と言い、他の人のところへ去っていった。

 母と目が合う。


「旅行をどうぞが、まさかこんなことに繋がるなんて不思議ね」


「ええ、とっても」


 リルは俺に、次々と色々な縁を結んでくれている。 世界がこんなに変わるなんて。彼女もそう思っていると知っているけど、改めて言い合いたい。

 ルルとレイに誘われて踊る父を見て、俺も母も、珍しく声をあげて笑っている。

 リルを探し、恥ずかしいけど手を取る。いつの間にかレオたちもいて楽しそう。


「リルさん、結婚してくれてありがとうございます」


 リルは「突然なに?」というように、目を大きく見開いた。


「こちらこそです」


 にこやかに笑ってくれて嬉しいしかわええ。


 巡り巡れ。芽吹いて育てろ、風になれ。

 回れ回れ、くるくる回れ。

 永遠に続け。

 火の粉を払い、いつまでも。


 楽しい踊りや曲で、皆でわいわい騒ぎ、昨夜と同じく良い気分。


 龍神王様、どうか旅医者たちに加護をお願いします。

 

 ★☆


 この日の夜、英気を養ったセレヌとレージングは再び旅立った。

 

 

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― 新着の感想 ―
この世界観が大好きで何回も繰り返して読んでます。 リルさんのお料理回が特に好きなので、義母さんとかめ屋の料理顧問してるところとか読んでみたいです。 後は、ルシーさんとの文通話も好きです! 更新楽しみに…
ずっと楽しく読ませていただいています。 もう何度も読み返しては人っていいなあとほのぼのさせてもらっています。 どのお話も好きですが、ソアレ様がお邪魔する?した?華やぎ屋さんのてんやわんや、リル画伯とド…
異文化交流もロイの惚気も楽しみました。  機会があればまた異文化交流の話をお願いします。   でもまた旅行話も読ませてもらいたいなぁとも思います。
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