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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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俺と義弟と姉妹たちの話5 

 土曜の夕方、珍しいことにジンが「俺に相談がある」と訪ねてきた。

 約束を取り付けにきたと言われたけど、今日で良いと二つ返事で了承して、俺の書斎で飲むことに。

 ジンの相談は「ネビーの妹たちが兄の悪口を言い過ぎる」ということだった。


「ルカさんにも遠回しに言うたんですよ。いくら先に悪いところを教えないと可哀想って言うたって、みんなして悪いところばかり言い過ぎだって」


「先日、ロカさんから少し聞きましたけど、そんなになんですか?」


「そんなになんですよ。口を開けばウィオラさんにネビーの悪口ばっかり。期待しないで下さいとか、注意しておきましたとか、直させるって言うてるから悪意はないのは分かるけど、そもそも隠しておけばいいのに」


 リルは言わなそうだから、リルからみんなに言ってもらおうかと思ったけど、この間、そのリルも似たような感じだったと言われた。

 エルはジンに、「息子にはあの子たちがひっついてくるから、妹たちが嫌だって逃げる女は嫁にできない。放っておきなさい」と言ったそうだ。


「リルさんまで、ですか」


「リルちゃんってほわほわ〜ってしているのに、たまに真顔でズバッと毒を吐きますよね。俺、あれが怖いです」


「あー、まあ、リルさんにはそういうところもありますね」


「この間、ウィオラさんが明らかに真に受けてて、リルさんが言うならそうなのかなって顔をしてて、違う違うって言いたかったけど、他の四人が追撃したから無理でした」


 ジンは五対一では敵わない、五人でウィオラを囲ってネビーの悪口大会はやめて欲しいと嘆いた。

 みんなの姉だし、自分の妻なのでルカに頑張って言ったけど、兄の褒め話なんて気持ち悪いだろうし、褒めて嘘だと思われたら兄の評価が下がる、下げておけば上がるだけだと反論されたらしい。

 それに「悪口」ではなく「事実」を教えているだけだとも。


「ウィオラさんはどんな感じなんですか?」


「ニコニコ笑っているだけです。たまに何か言いかけているけど、リルちゃんみたいに口を挟めてないです。ルカさんたちがお喋り過ぎるんですよ」


 はぁあああああと大きなため息を吐くと、ジンは俺に「だからウィオラさんにネビーの褒め話を提供しませんか?」と苦笑いを向けた。


「もちろん、あからさまな話じゃなくて軽い話です。彼女が何を考えているのか気になっているのもあって」


「何を考えているかというと、妹さんたちについてということですか?」


「そうです。ウィオラさん、ウィオラさんってまとわりついて疲れてないかなって」


 俺はレオ家の隣の部屋で祖父と暮らしているウィオラの姿をそんなに見たことがない。

 しかし、ジンは毎日それを目撃している。妹たちはそんなにウィオラにまとわりついてネビーの悪口を言っているのかと尋ねたら、悪口はそこそこで、基本はウィオラと友人のように接して、ひっついているという。

 

「最近、一人でいるウィオラさんを見たことがないです」


「ありがたいけど疲れていないか不安ってことですね」


「ラルスさんにそれとなく聞いたら、孫ははっきりしているから食事にでも誘って悩みはないか聞いて下さいって言われました」


 それで、俺と四人で食事はどうかと誘われたという。

 そういうことならと、ジンに都合を伝え、ウィオラとラルスはいつでも良いということで、今度の日曜の昼食にした。


 その日曜の昼になり、待ち合わせ場所のかめ屋へ。

 店前に作られた簡易舞台から聴こえる演奏の素晴らしさに引き寄せられて、人混みの向こうを確認したら二人だったので驚いた。

 ラルスが演奏をしていて、ウィオラは踊っていて、目が合った時の妖艶な眼差しに、まるで別人のようだと心臓が跳ねた。

 終わりがけだったようで、演奏が終わり、ウィオラの動きも止まる。


「皆様、これから試食と試飲を行いますので、よければ堪能して下さいませ」


 お辞儀をするとウィオラはラルスと去り、入れ替わりで若女将と従業員数名が現れて、試食と試飲配りを開始。

 若女将は俺に気がつき、挨拶後に店内へ促されたので入店した。

 若旦那と話していたラルスとウィオラが俺に気がついたので、どちらともなく歩み寄り、挨拶会をしていたら、旦那とジンが現れ、また挨拶会に。

 若旦那に料亭の個室へ案内され、今日はウィオラとラルスが宣伝してくれたので、今日は店の奢りだと言われた。


「ロイさんが高い酒ばかり飲んだら、その分だけはいただきますよ」


「何を言うているんですか。リルさんのこき使い料で無料なのに未来の姉を働かせて無料ですって、詐欺ですよ詐欺。値段はともかく、美味い酒を出して下さい」


 母からかめ屋には強気でいなさいと言われている。リルがしてやられるので、その分をし返さないと。


「まぁ」とウィオラが驚きの声を出し、ラルスが「してやられるところだった」と朗らかに笑った。


「ウィオラ、最後にあんみつを出してもらったらどうだ」


 ロカがウィオラはあんみつを好んでいると言っていたなと思い出す。


「いえ。それよりも噂の厨房を見学させて下さい。レイさんから楽しい場所だとうかがっていますので」


「孫も私も遊んだだけなので、高くて美味しい酒とそれでお願いします」


「ええ、喜んで」


 軽く雑談をすると若旦那は去り、代わりに店員が飲み物の注文を取りにきてくれた。ウィオラは酒を飲まないようだ。

 乾杯の後に雑談、そこから頑張ってネビーと妹たちの話題を振ると計画している。


「お二人ともお忙しいのに、今日はお時間を作っていただき、ありがとうございます」


 ウィオラが「さっそく相談なのですが」と俺たちに笑いかけた。

 笑顔ではあるけれど、眉尻が下がった困り笑いで、なぜか彼女はみるみる赤くなった。


「その、おは、お恥ずかしいのですが……おじい様がそういうことは同年代の男性意見が参考になると申しまして」


「私はそのうち孫を置いていなくなるので、自分で相談できるようになりなさいと言いました。我が家で暮らす期間は共にあれますけど」


 ラルスは孫になんて言って俺たちとの食事会を手配したのか知らないが、この感じだと俺とジンに相談しなさいと言ったのは明らかだ。

『同年代の男性意見が参考になる』だから、ウィオラの相談内容はネビーのことだろう。


「そうでして。その、ネビーさんは大変お疲れですが、なにでどう少しは元気が出るのかと……思っています」


 彼女は遠い目をして小さなため息を吐き、「分からないとは情けないです」と呟いた。


「気遣ってくださるネビーさんが休めるようにはルカさんが、楽しいお喋りにはルルさんやロカさん、美味しい食事にはリルさんやレイさん。私は特にこう、出番がないのです」


 ここへ飲み物が届き、ウィオラが全員にお酌をしてくれて、その後にラルスが「酔うと言いやすいと思うぞ」と彼女にお酌をした。


「それにネビー君は酒好きだから、夫婦で飲めると楽しいだろう。酒はわりと慣れだ慣れ」


「……では、少しいただきます」


 ジンが俺に、何か言いたげに目配せしたので、ウィオラの質問の答えをまずは俺から頼むという意味だと受け取る。

 盃に口をつけたウィオラは、苦そうに顔を歪めた。


「お酒に慣れるなら、梅酒はどうですか?」


「そうですね。ありがとうございます、ロイさん。ウィオラ、梅酒を何種類か頼むから挑戦してみなさい」


「そうします」


 こうして、三種類の梅酒が注文され、ウィオラの前に並べられた。

 ラルスが「味比べだ」とお酌をして、彼女に感想を聞いていく。


「こうして飲み比べてみますと、リルさんがテルルさんやレイさんと漬けた梅酒は美味しいですね。本物にも引けをとっていません」


「秋の宴席で出してもらおうと思っています。息子は酒の味にうるさいけど、きっと唸りますよ」


 秋には両家顔合わせがあり、この発言だとラルスは破談を考えていないということになる。


「お酒の味にうるさいのは、おじい様ではないですか。お父様もですね」


 話題が逸れてどうしたものかと考えていたら、ジンが意を決したというように、「ネビーなら、今のままで元気になっているんで大丈夫です」と告げた。


「帰ってきたらウィオラさんがいるって嬉しそうに言うていたんで、その、ありがとうございます。うちってほら、まだあんな家だし、うるさいし……疲れてませんか?」


「あんな家とは、どうしてですか?」


 ウィオラは不思議そうに首を傾げた。


「街外れで通勤が面倒でしょうし、ボロ長屋で虫も蛙も蛇もわんさかだけど気にならないんですか?」


 ジンも首を傾げた。ウィオラは「ふふっ」と目を細めて微笑んだ。


「飽きたら違うかもしれませんが、今は観光気分で楽しいです。頼りになるみなさんがいないと、虫が嫌で逃げ出しそうですけれど」


 前にルルから聞いたのだが、ウィオラはお嬢様育ちなので庶民の娘と感性が異なり、長屋や下街は観光地で楽しいとはしゃいでいるらしい。

 ウィオラは特に「ゴキリ」や飛んだり跳ねる虫が怖いと身震いした。


「お前はすぐ、みなさんのところへ逃げるからな。何回、戦い方を教わる気なんだ」とラルスが愉快そうに笑う。


「二人以上なら頑張れるからです」


 ジンは心配していたけど、この感じだとウィオラはレオ家、ルカたちに不満を抱いていなそうだ。

 

「ネビーさんにも頼って、ついでに虫だ、蛙だと抱きついておきなさい」


「おじい様はまたそのように! 恥ずかしくてそのようなことはできません」


 真っ赤になったウィオラは、ラルスに酒を注がれた盃を口に運んだ。


「……その、ジンさん。ネビーさんは他にも何か言っていました?」


 彼女は遠慮がちの声だけど期待の眼差しなので、俺はジンの心配は杞憂だなと感じた。

 これまでの話が『婚約者の力になりたいです、自分はあまりで困っています、レオ家を頼りにしています』なので。


「いえ、特に」


 瞬時にウィオラの顔が曇ったので、「ちょっ、ジンさん!」と俺は心の中で突っ込んだ。


「本当に何も言うてないので! ウィオラさんの不満なんて聞いたことがありません」


 ウィオラは婚約者が自分を好んでいるようなことを聞きたいのに、ジンは「不満がないかと問われた」と感じたようで、会話が噛み合っていない。

 驚き顔をした後に、ウィオラは瞬きを繰り返し、「それは良かったです」と柔らかく笑った。

 自分が聞きたかったことはそうではない、とは言わないようだ。


「あるわけがありませんよ。毎日、毎日、甲斐甲斐しく世話してもらって」


 ジンは自分の答えが頓珍漢だったと気がついていない。それで問題がないのでこのまま様子を見よう。


「私としてはそんなになので、もっとその、頼られたら嬉しいのですが、とても気遣っていただいていて」


「頼られたいんじゃなくて、甘えられたいんだろう。膝で休みますか? とか言えばいいものを」


「もうっ、おじい様は無理難題ばかり。もっとこう、簡単なことからでないと難しいです。それにそれは頼まれていませんので、特に嬉しくないということですよ」


 ラルスは呆れたという顔で、「モテ男に振られて泣くのはお前だからな」と言い、明らかに動揺した孫を眺め、肩を揺らした。

 ネビーは忙しくても婚約者を口説きたくて、俺に相談しているみたいなことを教えようかと考えていたら、食事が運ばれてきて料理の話題に。

 レイは職人だから勉強になる、エルやリルは素晴らしい主婦だと褒められて良い気分。

 そこから彼女はルカ、リル、ルル、レイの話題を順番に出して、親しくしてもらって嬉しいと笑い、それぞれと出掛ける約束をしていると嬉しそうに破顔した。

 やはりジンの心配は考え過ぎで、ウィオラとネビーの妹たちの関係に問題はないようだ。


「妹さんたちは血が繋がっているので分かるのですが、ジンさんやロイさんもどこかネビーさんのようなところがありますね」


 酔い始めているのか、ウィオラはそのまま喋り続けた。

 付き合いが長いと似てくることがあるというように、俺とジンもネビーに似ているところがある。

 ジンはちょっとした時に「あっ」と思うけど、俺は姿勢や喋り方、雰囲気があれこれ似ているそうだ。


「きっと、同じ剣術道場に長年通い続けているからですね。小さい頃のネビーさんは、道場だとどのような感じでした?」


 瞳を輝かせて、さぁ、教えてという彼女の様子に、とても嬉しくなる。

 ネビーが「恋穴の奈落の底のさらに下へ落ちた」とまで言う相手は、そこまでではなくても、彼をきちんと慕ってくれている。

 この事実はきっと、激務の彼を元気にさせてくれるだろう。


「入門した頃、よくお世話になっていました。自分はひょろひょろのもやしで、稽古についていけなくて」


「そうらしいですが、全く想像できません。ネビーさんが言っていたのですよ。ロイさんは入門した時にはもう心がうんと強くて、デオン先生が見習いなさいと言っていたと」


 ……俺が彼の良い話をするはずが、予想外の話が出てきた。


「ああ、それ。俺もネビーから聞いたことがあります。入門早々、弱虫坊ちゃんってボコボコにされたのに、辞めません、励みますって言うたって」


「辞めないと言いましたけど、それはネビーさんが卑劣な人たちから逃げるなと言うてくれたからですし、ボコボコにされたのはネビーさんです。助けにきてくれたんですよ」


「一緒に戦って二人ともボコボコにされたんですよね?」


「せっかくお父様が作ってくださった竹刀を壊されるところだったと、とても悲しそうでした。お二人とも痛かったですよね」


「いえ、あの、殴られたのはネビーさんだけです」


「「えっ?」」


 ネビーは忘れっぽいので、たまに記憶を改ざんしていることがある。

 おそらく、彼の中であの時のことは二人で殴られたということになっている。

 本当の昔話をしたけど、ウィオラは「だから感心」とか「ネビーに惚れ直した」という顔はしなかった。

 愉快そうに笑い、「ネビーさんは、本当に忘れっぽいですね」である。


「屯所でもたまにこのようなことになるのですよ。忘れておまけに勘違いしているようですが、実はこうですと。でもお相手がしたことや言ったことは覚えているのですよね」


 ウィオラは「今の話のロイさんのことも」と笑い、「きっと宴会のたびに、ロイさんが片付けを率先していたことも事実でしょうね」と続けた。


「ゴミを拾ったり、皿を運ぶだけでも雅で、真似をしてみたら笑われて、恥ずかしくてやめてしまったそうです。だから桃兄弟と呼ばれるようになって、真似をするのが当然になって助かったと」


 俺はそんな話をネビーから聞かされたことはないし、他の誰からも。


「そうそう。いつだっけな。新年の挨拶文をデオン先生に渡したら、その年はたまたまロイさんの後で、説教されたって。まだロイさんがリルちゃんと結婚する前です」


 そうそうって、ジンは知っているのか。今の話も俺は知らない。


「お二人がご結婚する前の年のことですね」


「新年早々、礼儀作法に文字の練習でためになったって」


「ロイさんの所作や文字はとても美しいですものね。真似し続けているから似ているのですが、ネビーさんはこう、元々の荒々しさが見え隠れ……隠れていませんね」


「隠れていません。四六時中は無理ってすぐ下街男状態になりますし。ウィオラさんはアレと結婚で大丈夫なんですか? うるさいし、品も足りないし、世話焼きされたいウザ男で」


 俺の褒め会が始まって動揺していたら、ジンが「あれはダメ」みたいに言っていた、ネビーの悪口話をしてさらに戸惑う。


「あばたもえくぼで、孫はネビーさんのことならなんでも良いのですよ。すっかり夢中なのに、それを表現しないと袖振りされるぞ、ウィオラ」


 ラルスが楽しそうにウィオラの背中を叩いた。


「すこ、少しはしています。何もしていないわけではありません。励んで文字などでお伝えしていますので、簡単には袖振りされません……」


 そう言いながら、ウィオラは萎れ顔になり、小さなため息を吐いた。


「……されますか? おじい様」


「される、される。諦めるしかなくなったら、山のように縁談を用意してやる」


「またそのように。私は党首会議で決められた相手とそのまま素直になんてしませんからね。おばあ様のように、自分の相手は自分で選びます」


「選んだのに奥手すぎて振られそうだけどな」


「おじい様!」


 話しているうちに食事は終わっていたので、この会話から逃げたくなったらしいウィオラが厨房見学へ行こうと促し、料亭を退店した。

 ジンに妹たちと同じことをしたと突っ込みをいれてから、彼女は俺が思っていたよりも兄を慕ってくれているんだなという感想を告げた。


「俺も驚きました。家では全然、あんな感じじゃないので」


「お酒の力ですかね」


 ウィオラは厨房見学ではしゃぎ、早番で仕事終わりとなったレイと共に皆であんみつを食べに甘味処へ。

 ラルスが女性同士で楽しむと良いと促したので、俺たちも遠慮して二人を見送った。


「今日はありがとうございました。ネビーさんと生活時間が合わなくて落ち込んで……へしょげているでしたっけ? へしょげてて。元気が出たようで助かります」


「それは良かったです。俺、そんな風に思っていなかったです。ラルスさんの前だと元気がなかったんですね」


「皆さんのおかげで元気ですけど、おいぼれの前だとどこにもネビーさんの面影がないからぼんやりです。いつも構っていただき、ありがとうございます」


 ラルスはまだまだ堪能しきれていない南地区観光してから二人を迎えに行くと言い、俺たちと別れようとした。

 誘われなかったから一人の方が良いのだろうと考えたけど、そうやって線を引いていると親しくなれない。

 俺はウィオラと話してみようと考えながら、あまり動いてこなかったので今日、もっと早く知れたことを今さら知った。


「ラルスさん、よければ案内しましょうか?」


「いえ。でも今度将棋の相手をして下さい。ジンさんにまだ早いと言われているけど、ロイさんに勝ちたいです。もちろん、私は駒落ちですよ」


「週末ならわりといつでも大丈夫ですので是非」


「ええ、孫とルーベル家へ行く時はロイさんが不在の時が多いので、次は酒を持って週末に遊びに行きます。遠慮せず、次の土曜の夜にしますね」


 断られたけど、次の約束をしてもらえた。俺はジンと二人で飲みに行くことに。

 数日後、ネビーが俺を訪ねてきて、ウィオラと飲み会をしただなんて、誘われていないと怒られた。


「こんな直球では言われていませんけど、ウィオラさんがネビーさんを口説きたい、同年代の男性の意見を聞きたいという相談会だったので、本人を呼べるわけないじゃないですか」


 そういえば俺もジンも結局、彼女に何も教えてない。ラルスが孫をはやしたてたせいだ。


「えっ? ……。その会で、なんて言うたんですか?」


「ラルスさんが先にはやしたてて、彼女が照れたり無理だと言うので、特に何も」


「……そうですか」


「良かったですね。順調に慕われていて」


「……ん、まぁ。はい。そこそこは。減点されたと思っていたら、そうでもなかったです」


 ネビーは照れた様子でそう言い、来たばかりなのに「じゃあ、また」と帰っていった。

 なんか、痒い。

 知り合ったばかりで他人に近いウィオラだと平気だけど、小さい頃から知っている兄弟の照れた様子だと痒くてならない。

 

 それからしばらくして、レオ家でネビー主催の西瓜(すいか)割りがあり、彼が婚約者と一緒にいるところを久々に見た。

 痒い。

 俺とジンは、「兄を取った!」みたいなことを言うルル、レイ、ロカの愚痴を聞かされ続けている。

 三人はネビーたちに絡みにいこうとして、両親に呼ばれた。

 ルカとリルに、あの三人はだんだんウィオラに遠慮せずに兄バカになってきたから、邪魔をしないように定期的にこきつかったり、遊びに連れ出してと頼まれた。

 

「ええけどさ、ほとほどに二人につきまとってもらうのはええことだって。俺もさ、ルカさんと婚約した時にルルちゃんたちが一緒なのこともあったけど、楽しくて嬉しかったから」


「自分もルルさんたちが一緒の時も、楽しいし嬉しかったです。リルさんの違った一面が見られて」


「二人ともそうやってすーぐ、三人娘を甘やかす。ねっ、リル」


「うん。過度な甘やかしは禁止です」


 俺とジンは顔は見合わせて笑い合った。

 そう言いながら、俺たちの妻は妹たちを甘やかしているので。

 そこでようやく、俺はウィオラは自分たち側なのだと気がつき、またジンと一緒に飲みたいと考えた。

 ウィオラは今、仲良し六人兄妹に加わった俺たちをなぞっていてこれからも。

 きっと彼女と、あれこれ意気投合できるだろう。

 そうして、俺はまた知らなかった話を知ることになる。

 代わりに、俺も家族親戚の誰かがまだ知らなかった話をするかもしれない。

 

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