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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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海釣り特別編「ロイのお弁当1」

長くなったので2話になりました

 月曜は1週間で1番憂鬱(ゆううつ)だ。

 火曜、木曜は疲れるし苦しい時もあるけど楽しかったり憂さ晴らしにもなる剣術道場通い。

 水曜の俺の業務は本職ではなくて戦時業務の研修で裁判所へは来ない。

 キナ臭い話や講義に修練場で武術系訓練はキツいけどかなり好きな馬術訓練がある。

 今年は1度くらいリルと乗馬デートをしてみたいと思っている。というかする。


 金曜は1時間定時が早い趣味会推奨日。基本的には最低2回参加。残業は基本的に禁止。

 結婚前は月曜、水曜の仕事後に顔を出すこともあったけど金曜日は月1回龍歌会、月1回将棋会に参加していて良い息抜き。

 趣味会に参加しない金曜でも翌日は半日勤務なのでもうすぐ休みが来る、あと一息と頑張れると思える曜日。

 なので今日の憂鬱(ゆううつ)さをどうにか乗り越えると、何だかんだあっという間に1週間が過ぎて楽しい週末が来る。多分。

 そう言い聞かせて割り振られた業務をひたすら減らすしかない。


「ルーベル、そろそろ昼食に行きなさい。いつ気が付くかと思ったけど研修生の世話をしなさい。出世して研修生の業務確認が増えたということは世話もしなさいってことだ。1月は新しい業務に慣れるための期間と大目に見たけどもう2月。昼食に研修生2人を連れて行け」


 指導担当ブルトに声を掛けられて「しまった」と心の中で舌打ち。この間の金曜の夜に父に言われたような気がする。

 有り難いお説教を「どうせかつては自分もそうだったクセにうるさい」と聞き流しているせいだ。席から立ってブルトに頭を下げる。


「はい。気配り足らずですみません。自分でいっぱいいっぱいでした。励みます」

「毎日父親に説教をされているんだろう。残業は嫌だと顔に描いてある。色々意味のある通過儀礼だから考えて分からなかったら聞きに来い。そもそも聞きに来い。どう考えても管理職の采配がおかしいけどこういうものですか? とか自分の仕事の仕方が悪いんですか? みたいに何かしら相談しろ」

「はい。すみません」

「前から言っているだろう。次に研修生が来たら指導担当になることは分かっているか?」

「忘れていました。マリクさんとエルデさんで練習します。教えてくださってありがとうございます」

「君の指導担当だからな」


 新規業務をこなせないのは自分の能力不足だから励むしかないと思っていた。

 あとは残業せずに帰宅して離れ生活——父から折檻(せっかん)中——を終わりにしてリルと同室で寝たい。それで頭がいっぱいだった。


「ありがとうございます。お時間がある時にお付き合いして欲しいです」

「エドゥアール温泉街の話を家族が聞きたがっている。今週どこかで(うち)に来ないか? 今日以外ならいつでも」


 約10歳年上の同じ卿家の先輩からは学ぶこと、学びたいことが沢山ある。断る理由は何もない。

 家族が聞きたがっている、は家族にわざと話して俺が行きやすくする為の根回しだろう。


「水曜か金曜にお願いしたいです。浮絵があります」

「金曜は趣味会後に飲みに行く約束をしているから水曜で。覚えているだろうけど3月のエルデの歓迎会の手配をするマリクの手伝いも仕事だからな。それじゃあ昼休憩に行ってこい」


 歓迎会の手配の手伝いは指導担当と思い込んでいた。昨年祝言者3名のお祝いも兼ねると言っていたし。出世したからだろうか。


「はい。ありがとうございます」


 ブルトが離れたので同じ部署の研修生エルデ、マリクに順番に声を掛けた。

 研修生は卿家にしかない制度。エルデは1月からの新人。マリクは2年目。同部署の卿家は俺、6歳年上の2人の指導担当セダ、それからブルトと続いていく。

 立て続けに研修生が来るのは珍しいらしいので俺が指導担当になるのは数年後と思っていたけど、今のブルトの感じだと違うかも。


 3人で食事処へ向かいながら、マリクはともかく新人歓迎会もまだで情報のないエルデとどう話せば良いのか悩む。

 これまでは研修生と関与しなくて良かった。むしろしないように、自分のことに集中の指示だった。

 新しい人付き合いは苦手。緊張で言葉が出てこなくなるし表情筋も死にがち。そうすると自分の雰囲気は近寄り難くなる自覚もある。困った。

 同期が誰かいると助かる。誰かいてくれ。最高なのはベイリー。食事処に到着したらすぐに彼の姿を探した。

 朝の通勤中にお弁当を渡した際に、多分何時頃と伝えていたけど居ない。

 俺の隣で弁当を大自慢と言っていたけど無理だったのだろう。そもそも俺の隣で自慢しなくても自慢するのに俺の隣で大自慢とはよく分からない。


「ルーベル先輩! 自分が水を用意してきます!」

「席取りします!」


 エルデ、マリクが「気働きしないと!」と気負ったように声を出した。エルデの弁当をマリクが預かっている。


「ありがとうございます。席はそこ……マリクさん。同期がいるので席取りはええです。エルデさん。あちらへお願いします」


 ヨハネ発見!

 時々一緒にいる彼の先輩スレヤと2人っぽい。食べ終わっている雰囲気であまり喋る時間は無いかもしれないけど隣が空いている!

 ヨハネも人付き合いは苦手だけど今日は新しい弁当箱、旅行料理、それから週末のヨハネのお茶会のことなど話題がある。

 ヨハネと喋ってその話題を後輩に振る。それでセダやブルトがしてくれているようにそれとなく悩み事はないか聞き出す。

 いや、今日は喋れればいいや。信用信頼は仕事ぶりや言動で得るとして、お互い話しかけ易い関係にならないと相談に乗ったり指導することは出来ない。多分。


 マリクを連れてヨハネの隣を目指したら、俺達に気が付いたスレヤが会釈をして「ここへどうぞ」というように席を空けてくれた。彼もお手本。今のを覚えておく。


「お疲れ様ですヨハネさん。後輩のマリクさんです。もう1人来ますがご一緒しても良いですか? もう休憩は終わりのようですけど」

「ええもちろん。マリクさん初めまして。ヨハネです。食べ終わったところでまだ少し時間があります」


 苦手な人付き合いを少し手助けしますよという意味であり、自分の時も助けてという意味だろう。

 ヨハネの前に座ってマリクを隣へ促す。名札で部署などはそこそこ分かるので自己紹介は名前くらいなのは暗黙の了解。

 エルデが貸し出し湯呑みで水を3人分持ってきてくれるのを待つ間はヨハネと雑談しておこう。

 そうすれば軽い手汗と表情筋の固まり具合がマシになるはず。

 ヨハネが食い付きそうなので弁当箱を包んでいる風呂敷を開いた。


「ロイさん、弁当箱を変えたんですね。御所カゴみたいです。それはどちらで購入したんですか? 自分も欲しいというか母が気に入りそうです」


 旅行から帰った翌日の日曜日に両親がレオとあれこれ話した結果このお弁当箱を贈られた。

 両親も褒めているけど俺も一目で気に入った。両親が素晴らしいと口にしている門松雛を見たい。かめ屋の旦那と女将も見たらしく注文を検討中らしい。

 このお弁当箱を売るならこの値段と告げられた価格に母は「安過ぎる。店主に中流以上の価格感覚を教えないと」と口にしてかめ屋に相談すると言っている。門松雛も安過ぎらしい。


「こちらはリルさんのお父上からの贈り物です。リルさんが母親に贈ったエドゥアール土産を参考にした作品です。お店で特注品の請負いを許されているそうなので依頼してもらえるのはこちらも助かるというか嬉しいです」

「今度貸してもらえますか? 特注品ということは要望も聞いて貰えるということですよね。母に見せたいです」

「宣伝用と2ついただいて、明日以降ならすぐに貸せます」

「宣伝用……親戚を栄えさせようということですね。腕がないと無意味ですけどこれは同期の親戚だからではなくて気になります」


 ほぼ注文を獲得。さすが大家族の大黒柱として稼いでネビーを兵官にするお金も捻出していた男。

 家族全員の協力があったとしても大変だったのは調査書だけで分かる。

 父が「軽く調査では分からなかったけどおかしい気がする。教育費の他にも貧乏の原因がありそう。金は貸さない両親なのは調査済み。何か隠している。子ども関係だろう」と推測して、俺にネビーとジンと話し合えと言った。


「マリクさん、エルデさん。同期のヨハネさんは新入職員代表でした。高等校の入学式も卒業式もです。自分は何をしても1番どころか入賞も出来ない器用貧乏のギリギリ男。しかし試験勉強の効率とか分かりやすい解説は彼に相談出来るので困ったら声を掛けてもらえるとお役に立てるかと」

「はい! ルーベル先輩は3年振りの新任試験の初年度合格者なので色々教えてもらいたいです!」

「セダ先輩がルーベル先輩はまんべんなく何でもそつなくこなすからどの分野のことも聞くと良いと言うていました」


 苦笑いしそうになる。過剰に期待されるとガッカリされて困るので自分下げをしておきたい。


「ロイさん、そういう風に自分の評価を過剰に上げるのはやめて下さい。役に立てなかった時に困ります」

「えー。高等校仲間の全員の勉強を見ていたのはヨハネさんです。今回の試験合格もヨハネさんのおかげ。学科は全てギリギリ、1科目なんて1点高かったという綱渡り。降格はしないけど半年後に指定学科再試験って言われました」


 次の試験勉強と並行して復習とは面倒である。再試験するならいっそ落とせば良いのに解せない。

 おかげでリルとの贅沢三昧の旅行を出来たので良かったけど。これは両親にもリルにも黙っているつもり。


「再試験? そんなことがあるんですか。自分が特別に従軍訓練を半日増やされたのと同じですかね。軍師講義と武術訓練です。軍師は才覚があるからと言われて、武術訓練は実技試験が酷かったから。けちょんけちょんに言われました」

「ヨハネさんのことだから特に剣術ですよね。デオン先生に頼んで少し指導してもらいますか? 才能無しから割と良くなったのは先生のおかげです」

「ええ。ロイさんに頼もうと思ってました。親しい知り合いが居ない道場は性格的に無理なので。上司にも師範にも今年は道場通いを減らして剣術指南をしてもらったらどうかと言われました。指揮官が弱過ぎると統率力が悪くなると」


 ヨハネは空手道場に通って自主的に鍛錬もしているのに賢さ分なのか運動能力が低過ぎる。


「明日の稽古で先生に相談してみます」


 これではヨハネと雑談しているだけだ。後輩に話題を振らないとならない。俺が食べ始めないと後輩も食べなそう。

 弁当箱を開いたら中身に目を奪われてしまった。


「噂には聞いていましたけどルーベル先輩のお弁当、すこぶる美味しそうです。こちらは料理人が作ったんですか? 先輩の家には料理人がいるんですか?」


 エルデが食い付いてくれた。同じ卿家なのに料理人がいるなんて発想はなぜだ?


「ルーベル先輩。お弁当箱といい以前ご一緒した時より凄いです。というか豪華。おかずの種類が沢山です」


 マリクも食い付いてくれた。弁当に感謝。

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