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異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと  作者: アニッキーブラッザー
第九章 俺は嫁を二度と泣かせず、幸せにする(17歳)

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第285話 冥界魔王

「おいラガイア。結局、あれはなんだったんだ?」

「さあね。でも、これでヤーミ魔王国に僕たちの存在が知られたね」


 まあ、ダンガムで乗り込んでるんだから、そこまでコソコソ進入する気はサラサラ無かったわけだけどな。

 にしてもだ、こんな見張りがこの辺りには……ッ!


「ヴェルト様! 海の中から!」

「お、おお……」


 ノンビリしたのも束の間。なんと、急に海の底から無数に人間大の大きさの何者かが数百単位でウヨウヨ出現した。

 しかも、全員ドクロなんだが、骨格が人間のものじゃねえ。全員が銛のような武器を抱えて、顔の形が少し魚のように尖っている。


「あの骨格は、まさか、半魚人じゃねえのか!」

「なんと、魚人族の見張りまでおったか」

「随分とパナイぐらい厳重な守りじゃん。一体、どういうことなのかな?」


 別にビビリはしねーし、仮にもヤーミ魔王国の領海に侵入してんだから守りが厳重なのは分かってる。 

 だが、ここまで来ると、もはや軽い気持ちの進入なんて話じゃねえな。


「まるで、戦だゾウ」


 ああ、その通りだな。

 さて、どうるすか? 俺たちの目的は別に戦争じゃねえからな。

 ここは、ラガイアにもう一度ウラの居場所を感知してもらって……




『ほう。ずいぶんと面白い者たちのお出ましではないか。余の国を荒らす者は、現われないと思ていたものでな』




 突如、少しだけ高い声が聞こえた。

 ドスの利いた男のダミ声ではなく、上品でスマートな口調だ。


「パッパ、見て!」

「あれは……」


 そして、俺たちの前方に見える大陸の空に、何かが映し出された。

 それは、全身黒い包帯で体を覆い隠した、ミイラのような姿の、長い黒髪の人物。

 その頭部には、所々が欠けてボロボロになっている王冠が乗っていた。


「ヒューッ!」

「けっ、相変わらず不気味な格好だぜ」

「漆黒の包帯と、欠けた王冠……初めて見るが……どうやら、あの人物が……」


 空に映し出された巨大な黒ミイラのホログラムに眼の色を変えたのは、キシン、チロタン、そしてラガイアだけ。



『招かざる客は久しぶりだ。国を代表して、余が自ら歓迎してやろう。この、冥界魔王・ネフェルティがな』



 魔王! こいつが……つか、本当にいきなりだな。

 しかも、包帯で素顔が見えないが、かなり若いぞ?

 十代とまではいかねーが、声変わりしてねえ、二十代か……もしくは……


「ウガア! ミイラ野郎~! 相変わらず、貧弱の癖に偉そうな野郎だ!」

「そのパンクなスタイルは相変わらずか」


 オープンになったダンガムの胸部のハッチから、チロタンとキシンが前へ出た。

 そりゃ、同じ魔王だ。例え鎖国した国であっても、王のことぐらい知ってても当然か。

 二人の姿を見て、魔王ネフェルティも僅かに反応を見せた。



『おお、チロタンではないか。生きていたか。二年前に死んだと聞いていたが? それと隣の鬼人族はハーフか? 見たことはないが、……ふむ、余の目は誤魔化せぬぞ。常識を遥かに超えた力を感じるな。だが、ジーゴクの関係者が、この国に攻め込むとも思えぬが』



 話し口調は位の高さを感じさせ、それでいてどこか余裕たっぷりで、どこか人を見下したかのような感覚だ。

 だが、ここでキレても堂々巡り。

 相手が魔王なら話が早い。用件だけとっとと言えば十分だ。


「俺たちは、ウラ・ヴェスパーダを探しに来た! この国に来てるはずなんだけど、知らねーか?」


 ダンガムの頭部も開放して、俺が叫んだ。

 当然魔族と一緒に居る人間には、ネフェルティも首を傾げるだろう。

 さらに、俺からウラの名前が出たことも、理由の一つでもあった。


『ウラ? ほほう、それはまた意外な名前だな。何故、余の花嫁の名を、人間の口から出てくるのだ?』


 なに? こ、こ、こいつの花嫁?


「えっ、リアリー?」

「はあ?」

「そ、う、だったのかい? ウラ姫が嫁ぐと言ってから、てっきり他の王族関係者か貴族だとばかり……」


 キシンたちも驚いて……いや、驚いているというより、呆れてるの方が正しいのか?


「へい、ネフェルティ。プリンセス・ウラを娶るとはアンダースタンドできないな。そもそもユーの性別は――」

『他人は口出ししないでもらおうか。この国にはこの国の法があり、余こそがこの国の王である』


 他人が口出しするなか。まあ、正にその通りだ。

 人の恋愛は、当人同士で解決すりゃいい。

 言ってみりゃ、当人が関わらないといけないわけだ、。



「関係なら、あるさ」



 でも、残念ながら俺は他人じゃねえ。ウラの家族であり、そして……



「ウラについては、七年も前から俺がネットリと唾つけてたんだからよ。勝手に人の嫁を取ってんじゃねえよ」


『……なに?』



 俺は当人であり当事者だから。


「ひはははは、パナイパナイ」

「おい、録音したか? 神乃に再会できたら、聞かせてやろーじゃん」

「……俺の嫁……うらやましい……私もそう呼ばれたい……」

「お兄ちゃんって、ハッキリ言うんだね……僕も思わずドキッとしたよ」

「あのゴミ。昨晩は他の女とペロペロしてたくせに」

「パッパ、かっこいいわね、コスモス」

「マッマ、ウラちゃんはパッパのお嫁さんなの?」

「ええ。そして、コスモスの家族になってくれるのよ?」


 ひやかしとツッコミは無視だ。相手にしてたらキリがねえ。


『おい、人間よ。今、何と申した? 寛大な余は、人間の妄想ぐらい聞き流してもよいが?』

「包帯で体の傷を治すなら、まずは耳を治すんだな。もう一度言ってやる。俺の女に手を出してんじゃねえよボケって言ったんだよ、タコ」


 不思議なもんだ。こういう問題は神乃のこともあったし、これまではのらりくらりかわしてきたのに、どうあるべきかを一度決めて開き直ってしまえば、こんなに気持ちが楽になるもんなんだな。

 対して、ネフェルティは、それでもどこか余裕? 「ほほう」「ふむ」と、何だか興味深そうに頷いている。

 そして、横をチラッと見て……


『ふむ、ウラよ、どうなっている。お前は余のモノになると決意したから、余の前に現れたのではないのか? 身内になるからこそ、お前を我が城に招いたのだぞ』


 えっ? ウラ?

 俺たちがその名前に驚いた瞬間、空のホログラムには、ツッコミのような手刀を繰り出してネフェルティを殴るお姫様が現れた。



『いつ、私がそんなことを言った! 私はただ、フラッと立ち寄っただけだで、表敬訪問しに来ただけだと言ったではないか!』


『はっはっは、自然と立ち寄るということは、心の底では余を認めていると思っていた。言葉にしないのは素直になれぬウブな心からだと認識していた』


『ふざけるな! お前とは死んでもそんなことにはならんと言ったではないか!』



 なんか、心底嫌そうな顔をしてるな。とりあえず、この騒動はネフェルティの一方通行のようだな。

 なら、話が早い。



『おーい、ウラ』


『ッ、き、さま、ヴェルト・ジーハ……ルンバや……エルジェラッ……ッ……』



 ホログラム越しでも手に取るように分かるほど、ウラの動揺が伝わってきた。

 だが、ウラはすぐに腕組んでソッポ向いた。



『ふ、ふん。何しに来たのだ、きさ、貴様は。私をサミットのことで連れ戻しに来たのなら、心配いらん。期日にはちゃんと帰る』


『いや、サミットはどうでもいいんだよ。俺はただ、お前を迎えに来ただけだからよ』


『え……っ、えっ? わ、私を……どうして他人であるお前が、私を迎えに来るのだ? お、お前はコスモスを抱っこして、エルジェラとイチャイチャしていればいいではないか! 大体、さっきの私を嫁にするとか、どういう意味だ!』


『へそ曲げてねーで、帰ってこいよ。エルジェラとコスモスとは本物だからって、お前を切る理由にはなんねーからさ。本物なんて、別に一個だけじゃないといけないなんて決まりはねえからな』


『ッ、な、なん、ど、どういうことだ! それはまるで、それでは私がお前の女みたいな言い方ではないか! ふざ、け、ふざけるな!』



 と言いながらも、段々顔を赤くして、それどころか瞳が潤んでいる。

 おいおい、お前、分かりやすすぎだぞ。

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