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特攻列島  作者: みやこのじょう
第四幕 死闘
36/102

第三十五話・新たな武器

挿絵(By みてみん)

 見通しの良い、遮蔽物がほとんどない港の前の通りを三台の車が駆け抜ける。先頭はさとるとゆきえが乗る軽自動車。その後ろに三ノ瀬(みのせ)の軽自動車、最後に右江田(うえだ)多奈辺(たなべ)が乗るオフロード車が続く。


 港を通り過ぎる直前、連続して発砲音が響いた。狙撃されたようだ。銃弾は全てオフロード車のボディに命中した。

 もう少し走行速度が遅ければ前を走る軽自動車の側面の窓を撃ち抜いていただろう。ドア部分には鉄板が仕込まれているから貫通はしないが、窓は防弾ガラスではない。銃弾が当たれば簡単に砕けてしまう。


 先ほどの狙撃は港側からだった。

 敵がいるのは明らか。しかも、撃った弾は全て命中している。山頂にいた見張りとは違い、無駄に撃ちまくることもなかった。今度の相手は素人ではない。


 ぞっとしながらも、右江田はアクセルを更に踏み込んで加速した。



「とにかく、真栄島(まえじま)さんに指示もらわねーと」

「……」



 焦ったような小さな呟きを、後部座席に座る多奈辺は黙って聞いていた。


 右江田は強面(こわもて)で身体が大きく、運動能力も高いが、三人の勧誘員達の中では一番年下である。故に上からの指示が無ければ動けない傾向にある。

 これが普通の仕事ならば『自分で考えろ』と突き放すことも出来るが、このような状況では経験豊富な人間でも冷静に判断することは難しい。仲間の命がかかっているのだから、権限がない者や序列の低い者は自分で決断を下すことを避けたがる。


 多奈辺にも権限はない。単なる協力者の一人。今は自分の車を失い、右江田に乗せてもらっている立場。武器は拳銃一丁、弾はあと四発のみ。山頂では敵が背を向けていたから当てることが出来たが、身を隠して狙撃してくるような相手には分が悪い。


 勝ち目はないと分かっているのに、また撃ちたいという気持ちが湧き上がり、じわじわと思考が染められていく。



「……武器が足りませんよね」

「あ、えっ? そうっすね」



 急に多奈辺から話し掛けられ、右江田は驚いた。

 山頂で車に乗せて以来、多奈辺が口を開いたのは今が初めてだったからだ。


 確かに武器はない。車に積んだ無反動砲(ロケットランチャー)は撃ってしまったし、手榴弾も使い果たした。もし敵が目の前に現れたとしても、車で突っ込むくらいしか反撃の方法がない。


 運転しながら右江田は頭を悩ませた。そして、何か思い出したように「あっ」と声を上げた。



「そーいやトランクになんかあった気が……俺には警棒があるからいーやと思って忘れてた」



 それを聞いた多奈辺は後ろを振り返り、座席越しにトランクを覗き込んだ。すると、そこには布に包まれた細長い形状の何かが置かれていた。

 すぐさまシートベルトを外し、座席の背もたれを乗り越えてトランク部分に移動する。



「ちょお、多奈辺さん! 危ないっすよ!」

「すみません、早く確認したくて」

「んも〜勘弁してくださいよぉ……」



 走行中の車内である。突然の行動に右江田は仰天した。バックミラーで後方を見て多奈辺の無事を確認し、大きく息を吐き出す。


 巻かれた布を剥いでいく。気ばかりが()いて、指がもつれて上手く出来ない。やっとのことで包まれていたものを取り出せた時、多奈辺は目を細めた。



「これは……」



 布に包まれていたのは少し古びた小銃(ライフル)だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 多奈辺さん うきうき銃火器大好きおじさんに なってしまった!? いや、まさかね、、、 前話の◯田一絵、最高です
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