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特攻列島  作者: みやこのじょう
第三幕 決行
34/102

第三十三話・次の障害

挿絵(By みてみん)

 激しい爆発音が島中に響き渡った。


 (ふもと)まで降り、港へ向かう途中だった三台の車はあまりの衝撃に進むのを止めた。

 爆風に乗って火の粉や木片のようなものが空からパラパラと降ってくる。恐る恐る窓越しに見上げれば、先ほどまで居た山頂辺りで大きな爆発が起きているのが見えた。



「ああ、そんな……」



 ゆきえは今にも泣きそうな表情で後部座席の窓に張り付いている。運転席に座るさとるは、気まずそうに頭を掻いた。


 ひとり残った安賀田(あがた)が何をしようとしていたか、さとるは知っていた。知った上で先に山を降りた。この爆発を見て、彼が目的を果たしたことも分かった。


 安賀田のことは頼れる大人として尊敬していた。

 同じ協力者という立場でありながらリーダーシップがあり、終始落ち着いて行動していた。ここに連れて来られた最大の目的である『地対艦ミサイルの破壊』。それを、彼は命懸けで成し遂げた。


 喜ぶべきだと思ったが、ゆきえは違った。



「あのまま山頂にいたら俺たちも爆発に巻き込まれてました。だから、安賀田さんは一人で残って」

「そうまでしなきゃダメだったの? こんなの、やっぱりおかしいわよ……」



 ついに、ゆきえはボロボロと涙をこぼし始めた。その姿をバックミラー越しに見て、さとるは黙り込んだ。


 彼女は普通の感性を持っている。こんな異常な状況下に置かれてもそれは変わらない。付き合いの浅い仲間の死に対しても本気で憤り、本気で悲しんでいる。これが真っ当な人間の当たり前の反応なのだろう。


 それに比べ、さとるは落ち着いていた。

 状況が異常過ぎて理解が追いついていないだけかもしれないし、何より優先すべき存在を見つけたからかもしれない。


 ゆきえを無事に帰すこと。

 それだけがさとるの目標になった。


 クラクションの音に顔を上げると、前方に止まる右江田(うえだ)のオフロード車がゆっくり前進し始めたところだった。合図をくれたのは後ろの三ノ瀬(みのせ)だ。


 山頂ではまだ断続的に爆発が起きている。非常に危険な状況だ。安賀田の安否の確認しに行くという選択肢は無い。確認しなくても生存は絶望的だろうと誰もが思っていた。


 現在地はまだ山に近い。

 早く港まで戻り、船に乗ってこの島から出る。

 そして、シェルターに家族を迎えに行くのだ。






 島の外周をぐるっと回る道を走り、ようやく港が見える地域まで戻ってきた。ここまで来れば山から火の粉や木片が降ってくることもなく、安心して車外に出られる。


 遠くに登代葦(とよあし)港から自分たちを運んだ小型の自動車運搬船の姿を見つけ、協力者たちは安堵した。しかし、先頭を走っていたオフロード車が港の手前で急停止した。さとると三ノ瀬の軽自動車も、それに倣って止まる。



「どうしたんですか右江田さん」



 車を横付けして窓を開け、さとるが声を掛ける。

 右江田は視線を港に向けたまま、いつになく険しい表情で口を開いた。



「──()()()()()()



 今日の早朝、この港を出発した時よりも船の数が増えている。そう言われ、さとるは息を飲んだ。

一人の命を犠牲にして任務は完了となりました

しかし、まだ島から出られそうにありません


次回から第四幕が始まります

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― 新着の感想 ―
[一言] 安賀田さあああああああああああああんんんん (語彙力皆無でごめんなさい)
[良い点] 面白いです。 [気になる点] なし [一言] 面白いです。としか言えないです(単なる悲しさでない悲しさがあると思います)
[良い点] これまでの生活に、一番疲れていそうな人が逝った。 ある意味、順当。 そしてじいさんは味方の爆弾になりそうで良い。 皆さん、味が滲み出てきた。
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