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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
356/359

356

「ゴーラン!」

 名前を呼ばれた。

 まさか、直前になってもまだ下克上なのか?


 どこのどいつだと振り返ったら、見知った顔があった。


「メラルダ将軍と……と」

「久し振りであるな、ゴーランよ」


「と……と」

「ん? なんじゃ?」


「トラルザード様ぁ!」

「うむ、我はたしかにトラルザードであるが、ゴーランよ、もう顔を忘れたのか」


「なんでここにいるんです!? 国は?」

「国はあるぞ」


「そうじゃなくて、なんで国を出てきてるんですか! 国の守りはどうなっているんです?」


「まあ、心配ではあるが、ゴーランが出るというので、みなで観戦にきたのだ」

 たしかに見知った顔が多い。


 いいのか? 魔王が配下の将軍を引き連れて観戦に来て。

 いやよくない。魔王の首を取れば大金星だ。


 こんな人目につく所は拙いんじゃないか?

「観戦って……どこで見るつもりですか?」


「場所はちゃんと確保しておる。ほれ、あそこじゃ」

「レジャーシート敷いてるじゃねえか!」


 花見かよ!


 弁当も置いてある。芸が細かいな。

 完全に行楽だよ。魔王が将軍連れて、行楽に来ちゃったよ。


「挑戦者をことごとく退けたそうじゃな。さすがゴーランだ。我ら一同期待しておるぞ」

 頂上決戦が決まってから今日まで、一ヶ月以上の期間があった。


 メルヴィスは後顧の憂い無く人界へいくために準備に余念がなかったし、決戦を聞きつけた周辺国から見学したいという問い合わせが相次いだ。


 そこで非戦闘種族の文官たちが、大慌てで会場を準備したのだ。


 その間、俺は次々とやってくる猛者相手に戦闘を繰り返していた。

 もう思い出したくないわ、あれ。


 酒を飲み始めた魔王たちを適当にあしらって、俺は会場へ向かった。

 くじ(・・)を引かねばならない。


 ファルネーゼ将軍はもう引いたらしい。


「あとはゴーランだけだぞ」

「あっ、そうですか」


 だったら引かなくても結果が分かるんじゃ?


 箱の中に球が入っているらしい。

 俺は手を突っ込んで、最後のひとつを取り出した。


「……『先』か。将軍はなんでした?」

「私は『後』だ」


「とすると……俺の相手は、あのどちらかですか」

 向こうでダルダロス将軍とツーラート将軍が話している。


 なるほど。先と後に別れたので、情報交換でもしているのだろう。

「将軍はどちらと戦いたいですか?」


「ツーラート将軍だな。ダルダロス将軍は戦い方が似ている」

「あー、飛天族相手だと、空の優位がなくなりますものね」


 この頂上決戦、細かいルールとか一切無い。

 武器も何でも持ち込み可だ。


 他者の力を借りない限り、何をやっても、何を持ち込んでもいい。

 そんな感じの戦いだ。


「俺でもツーラート将軍の鎧を貫くのは、ちょっと厳しそうです」

 俺からすれば、鉄の塊みたいなのを纏っているように見える。あれは鎧と言えるのだろうか。


 自力で動けるのか心配になるくらいだが、防御の隙がどこにもない。

 真正面から戦えば、厄介なことになりそうだ。


 一方のダルダロス将軍だが、こっちは打って変わって攻撃重視の装備らしい。

 多種多様な武器を背負っている。


 どれもみな貴重かつ高価、かなり稀少なものだろう。

 軽装であることから、速度重視。


 空中から一方的に攻撃することを前提とした装いになっている。


 ちなみに俺はというと、いつもの竜鱗の鎧に六角棍と深海竜の太刀の二本構えだ。


 魔法耐性は限りなく低いが、魔素吸収があるので、タイミングさえ合わせれば怖いことはない。


 闘技場は、巨人族たちが何日もかけて均した地に、土手を斜めに盛った簡素なものだ。


 だがその分広く作ってある。

 直径一キロメートルくらいあるんじゃなかろうか。


「そろそろ始まるぞ」

 ファルネーゼ将軍に促されて、俺は頷いた。


 別に司会が盛り上げるわけではない。

 最後の整備をしていた者たちがみな引き揚げた。


 雰囲気が変わったのを察したのだろう。

 ギャラリーが静かになった。


「じゃ、行ってきます」

 結局どっちが先なんだ? 確認するのを忘れた。


 闘技場に降り立つとどよめきが起こった。

 観客はみな、俺が下克上を受けて散々戦ったのを知っている。


「勝ち残ったのか」というどよめきだ。


 待つことしばし……対戦相手がやってきた。


 巨躯である。

 歩くごとに地面が揺れる。


 そう、俺の対戦相手はツーラート将軍だった。

 巨大な肉体系戦闘民族であるサイクロプス族だ。


 鎧に阻まれて一切見えないが、筋肉などは鋼でできているかと思うほどに硬い。


 エレベーターのワイヤーがある。

 あれを何十本とより合わせたような強靱さを持っている。


「まあ、こっちの方が楽な相手かもしれないな」


 俺としては、魔法を撃たれたり、空を飛ばれる方がやっかいだ。

 どんなに頑強だろうが、どんなに強靱だろうが、正面からぶち破れば俺の勝ち。


 それができなければ俺の負けだ。

 単純でいい。


「俺の準備はできてるぜ、さあ来やがれ!」


 俺は六角棍を相手に向けて、そう吠えた。



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