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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
354/359

354

「なんで俺が会議に出ているんだ……」


 俺の左に座っているのは、夜魔種ヴァンパイア族のファルネーゼ将軍だ。

 最近思うんだが、ファルネーゼ将軍って苦労人だよな。


 トラルザードの国から使者の対応したり、部下のネヒョルが裏切って逃げたり、キョウカを撃破しに潜入したりと大忙しだ。


 俺みたいな常識的な部下がいるからまだいいが、そうでなかったら家出しているかもしれない。


 そんな将軍は、いつも以上に神妙な顔をしている。

 何を考えているのか、俺には見当もつかない。


 ちなみにこの会議、椅子に座っているのは俺たちだけだったりする。

 俺の向かいにはツーラート将軍がいる。


 俺と将軍の間にはデカいテーブルがある。ツーラート将軍はその向こうであぐらをかいている。

 何しろ将軍はサイクロプス族だ。


 身長は俺の倍くらいある。

 俺だってかなり巨躯なのだが、それに倍するといえば、どのくらいデカいのか分かると言えよう。


 巨人種サイクロプス族というだけあって、この中で他を抜きん出てデカい。


 そして俺の左斜め前では、ダルダロス将軍が立っている。

 別に遅刻してきて立たされている訳ではない。


 背中の羽が邪魔で、座れないのだ。

 ダルダロス将軍は飛天族なので、「翼」と思ったら、「羽」でいいそうだ。

 その辺のこだわりはよく分からない。


 そういえば、四面楚歌で有名な項羽こううという名高い武将がいるが、その祖父は項燕こうえんと言う大将軍らしい。

 燕の孫が「羽」っておかしくない? と思ったものだ。どうでもいいか。


 飛天族の系統は少し複雑で、大烏おおからす族が進化して烏天狗からすてんぐ族になる。


 それが進化すると天狗族になるが、飛天族は天狗族のオリジン種が固定化された種族らしい。

 飛天種飛天族という珍しい種族だ。


 そしてこの会議の「お誕生日席」にいるのが小魔王……いや、大魔王メルヴィスだ。

 夜魔種エルダーヴァンパイア族という希少種。


 不死の大老が、威厳たっぷりに空中に浮いている。

 これからワイヤーアクションでもするのかと思ったが、集まった魔素が濃すぎて自然と身体が浮いちゃうらしい。


 化け物か!




 ちなみに会議は先ほどからずっと続いている。

 メルヴィスが言葉を発して、他の三将軍が納得したり、質問したりして進行している。


 ゆったりとした会議だ。

 俺はずっと黙っている。


 ここまでの経過は知っているので、流しながら聞いているといった感じだ。

 話が進み、俺が人界でヤマトを見つけたくだりに入った。


 会議が始まる前、俺がこの場に顔を出したとたん、ファルネーゼ将軍を除いた二人の将軍が、ものすごくうさん臭そうな顔で見てきた。


「ああ、これは殺るべきか」と武器を探したが見当たらない。

 しょうがないので身体強化して、どっちに突っかかろうかと思っていたら、フイッと目を反らされた。


「一応、認められたようだな」

 ファルネーゼ将軍が苦笑していた。


 目を向けられてヒヨったら、叩き出されていたらしい。

 二将軍相手にビビったら負けってどんなイジメだ。


 なるほどと思う反面、相変わらず魔界は面倒くさいと思った瞬間だった。


 会議が始まってから俺は、ずっと空気と化していた。

 だからここで急に視線が集中して、ちょっと慌てる。


 一方メルヴィスは、淡々と話を進める。

 といっても全部説明するわけでなく、「分かるだろ」的な結構アバウトなものだ。


「どういうことだ?」


 ファルネーゼ将軍が小声で話しかけてきた。

 ヤマトと会ったことについてだろう。


「ちょっと死にかけまして」

 ちょっとじゃないな。オールモスト・ダイイング(ほとんど死んでいる)だ。


「よく分からないが、死にかけると人界に行けるのか?」


「特殊な事例だと思います」

 特殊な事例でいいよな。


 俺とファルネーゼ将軍がコソコソと話をしている間にも、会議は進んでいく。


 ここから先は、他の将軍たちも意味がよく分からないらしく、理解しようと頑張っても無駄とばかりに思考を放棄している感じだ。


 淡々とメルヴィスが話を進め、俺が知っていることを話し終えたなと思ったとき、会議は佳境に入った。


「儂が人界へ行っている間、代理を立てる」


 なるほど、そういうことだったのか。俺は納得した。

 人界へ行くのは決定事項。


 それが長期に亘ることも考えられるため、将軍職内で序列をハッキリさせておきたかったようだ。

 ここに集まっている三将軍はいずれも歴戦の勇士。


 だれが代理になっても問題ないだろう。

 それにしても腹減ったな、弁当出るのかなとか考えていたら、ファルネーゼ将軍に肘でつつかれた。


「……何です?」

「メルヴィス様が決を採ると言っただろ。賛成か反対かだ」


「へっ?」

「聞いてなかったのか?」

 もちろん聞いてない……とは言えない雰囲気だ。


「もちろん聞いていますよ。俺は賛成です」

「………………そうか」


 ファルネーゼ将軍は遠い目をした。

 あれ? 俺、何か間違えた?


「では後日、戦いによって雌雄を決する。解散だ」


「「「ハッ!!」」」


 三将軍の声が唱和した。

 メルヴィスはふよふよと浮かんだまま退出する。歩かなくていいのは便利だな。


 それより戦い? 雌雄を決する? 何それ?

 俺が呆然としていると、サイクロプス族のツーラート将軍が立ち上がり、俺の肩を叩いてから出て行った。


 出て行く前に「覚悟しとけよ」と囁いたのだけど、あれは一体なに?


 ダルダロス将軍は、大きな羽をバサッと広げて飛翔した。

 上空をゆっくり旋回しつつ、俺に聞こえるように「死んでも恨むなよ」と言ってから飛び去っていった。


 何だ、その不吉な言葉は。


 そしてファルネーゼ将軍。

 俺と視線を合わせないようにして、沈痛な面持ちで立ち上がった。


「いくら数合わせとはいえ、頂上決戦に参加するとは……」


 頭を振りながら出て行こうとしたので、慌てて止めた。

「さっきのウソです。話を聞いてませんでした。何が決まったんですか?」


 俺がそう言ったとき、ファルネーゼ将軍の顔といったらなかった。



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