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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
349/359

349

 俺はファルネーゼ将軍に帰還の挨拶をした。

 ところが、メルヴィスに呼び出されているのですぐに来て欲しいという。


 また呼び出しだ。


 というか俺、メルヴィスが天界の住人と戦っている間、ずっと放置されていたんだが、あれで俺が死んだとは思わないのだろうか……とか考えているうちに玉座の間についた。


 左右から気配が迫ってくる。だが見えない。

(左の方が速い!)


 俺は右に躱すと同時に蹴りを見舞う。

「ぐえっ」という声とともに、何かが吹っ飛んでいった気配があった。


 すぐに右手からも攻撃がやってくる。

 片足を上げたままなので、そのまま横に転がる。


 ――ザシュゥゥ


 床に深い切り込みが入った。

 殺す気、満々じゃねーか。


 ならばこっちだって相応の反撃をしてやる。

 身体強化を施して、頭のあたりに狙いを定める。


「やめい!」


 身体が硬直した。

 メルヴィスが声に魔素を乗せたのは分かったが、それでも身体が竦む。怖ぇええよ。


「「はーい」」

 素直な声が聞こえて、二つの気配は下がっていった。


 俺を襲ってきたのは、ジッケとマニー。

 奴らはメルヴィスの側近で、エターナルインビジブル族だ。

 だから見えないし、気配も掴めない。


 前はかすかにしか気配を感じ取れなかったが、魔素を読み取る力が戻ったからか、やってくる気配まで分かるようになった。


「バレちゃったよ」

「バレちゃったね」


「やっぱりだね」

「やっぱりだよ」


 確認のためだけに、俺を襲ったのか。

 相変わらずコイツらは、訳が分からない。


「メルヴィス様、ゴーランです。ただいま参上しました」

 メルヴィスの前で頭を垂れる。


「うむ……早速だが、天界の連中を尋問した」

 早いな。いや、尋問の話ではなく、本題に入るのがだ。


 もっとこう、雑談とか……って、メルヴィスと雑談する光景が思い浮かばなかった。

 といって、俺から世間話を振ることはしない。


「今回の侵攻は、エンラ機関が主導し、多くの機関が加わったものらしい」


 メルヴィスが行ったのは、尋問……という名の拷問だろう。

 それ専用の魔法くらい所持していそうだ。


 メルヴィスが聞き出した内容は多岐にわたるらしい。

 いったいどれだけの尋問をしたのやら。


 簡単にまとめると、天界で各勢力が鎬を削って、エンラ機関が勝ち抜いたらしい。

 エンラ機関が一番良い土地を手に入れたそうな。


 天界の一番良い土地というのは、聖気が豊富にあり、魔界への穴が開けやすい場所。

 なぜその場所がよいかというと、より少ない力で魔石が取得できるからだ。


 魔石とは、俺たちが体内に持つ支配のオーブ。

 なんか手に入れやすいとか言われると、複雑な気分になる。


 いくつかの組織を配下に収めたエンラ機関は、大規模な魔界侵攻に繰り出した。

 理由は、人界へ行くための布石作り。


 どうやら天界の住人が人界に行けないせいで、十分な聖気が確保できなくなっているらしい。

 ヤマトのネガキャンも効いているのかもしれない。


 そして天界はもはやじり貧。

 このままではいつか聖気が枯渇する。


 かといって、各機関は研究を止めないし、聖気を節約するという話も出てこない。

 人界に行きたくても行けなくなる前に、何とかしよう。


 これってもう最後の機会なんじゃ? とばかりに、その下準備に入ったらしい。


 天界もなかなか切羽詰まっているのが分かった。


 さて、では奴らが魔界で何をするかというと、魔石集めもそうだが、以前報告があった「唯一の成功例」探しがメインだったようだ。


 トラルザード領で俺が見つかったからだ。

 そういえばあの時、一部の敵は逃げ帰っている。


 魔界に成功例がいるので、確保しよう。

 そんな感じで捜索したかったようだ。


「探し出して、どうしようというのでしょう?」

 それが不思議だ。俺に何の価値がある?


「人界への行き方を魂が理解しているらしい」

「……?」


 あの実験。

 冥界の中で「まったく浄化されていない魂」を選び出し、くっつけたらしい。


 元となったのは「オレ」の魂で、くっつけたのは「俺」の魂。

 そういえば俺、前世の記憶が残ったままだ。


 まったく浄化されていないのだから、当たり前か。


「自我が残った魂を融合すると、元の魂が拒絶するらしい」

「……かもしれませんね」


 よく無事だったな、俺。


「あまりに似通った魂以外、不可能だそうだ。魂の双子以外はな」

「…………」


「俺」と「オレ」って、双子だったの? 魂のという意味だけど。

 知的で理知的な俺が? 紳士な俺がだぞ? うーん、ありえない。


「その浄化されていない魂ならば、冥界から抜ける方法を『魂が』覚えているのだそうだ」

「……?」


 なんだそれ。魂が覚えている?

 俺が覚えているってことだよな。


 ………………いや、待てよ。


 なぜ俺は人界へ転生した?

 肉体と魂が繋がっているのに。


 しかも冥界を抜けるには、完全に魂が浄化されていることが条件だ。

 いくら「オレ」の魂が浄化されたからといって、その「おまけ」で俺が冥界を抜けられるものなのか?


 よく考えたらおかしい。

 なぜあの時……冥界を……抜けられた?


 そこまで考えたとき、俺は稲妻に撃たれた気がした。


「覚えています……そうか、そうだったのか」

 冥界を抜ける方法……無意識だったけど、俺はなし得た。


 その通りだ。俺は覚えていたのだから。

 どこでどうすればいいのか、魂が理解していた。


 人界で死んだ俺は冥界に落ちた。

 その手順は覚えている。


 だから俺は冥界から人界へ転生できたんだ。


 何しろ俺は、前・世・の・記・憶・が・あ・る。


 普通は魂が完全に浄化されるから、その情報も綺麗さっぱり消えてしまう。

 だが俺は、俺だけは、覚えている。


 そして分かった。

「オレ」が離れたからこそ、「俺」は転生できた。


「そうか……そうだったのか」



 俺は、すべて思い出した。



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