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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
348/359

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「どこだ、ここは?」

 俺は天幕の中で目を覚ました。


 寝台ほど豪華ではないが、身体が冷えないよう、しっかりとした台座の上に寝かされている。

 酷い扱いはされていないようだ。


 半身を起こして、周囲を確認する。

「どことなく、見覚えがあるな」


 見覚えがあるのは、軍用の天幕だからだ。

 戦場に出ると、このような天幕で寝泊まりする。


 だが、なぜ俺はこんなところにいる?

 記憶を思い返してみるが、どうにもハッキリとしない。


 天界の住人と戦って……いや、メルヴィスの大魔法で吹っ飛ばされたんだっけ?

 記憶が混濁している。


「…………」

 ゆっくりと目を閉じて、直前に起こったことを思い出してみた。


 敵と一緒にメルヴィスの魔法に巻き込まれた所までは思い出せた。


 本能的にヤバいのを察して、全速力で逃げた。ただ間に合わなかった。

 それで気を失って、支配のオーブの中で目覚めたんだっけ。


「ああ……俺が天界に狙われた理由」

 俺の魂は、天界の住人が実験で弄ってできたものだ。


 どうやらそれが奴らにとって、唯一の成功例らしい。だから俺を付け狙いやがった。

 いま無事でいるということは、あの場は逃げ切れたのか……な?


 天幕の入り口は閉ざされている。

 身体はなんともないので、外へ出てみた。


「……マジか」

 いろいろと酷い有様が目の前に広がっている。


「空爆にもほどがあるだろ」と表現すればいいだろうか。

 クレーターだらけ。


 しかも白煙と黒煙が上がっている。何が燻っているのやら。


「おっ、出てきたな」

 俺に声をかけたのは、ブーレイだった。


 ブーレイは、大魔王ダールムの部下だ。

 天界の住人たちを排除するため、軍を率いてやってきて、俺と出会った。


「もしかして、俺を助けてくれたのですか?」

「ああ……大変だったみたいだな。天界とメルヴィス様の戦いが激化したんで、こっそり連れてきたぞ」


 ブーレイたちは『負の霧』から、からくも脱出できたらしい。

 あのとき霧に捕まったのは俺だけだったようだ。素晴らしい逃げっぷりだな。


『負の霧』がドーム状に展開したので、そこには近づかないようにして、監視だけに留めていたらしい。


 すると、天界の住人たちがやってきた。

 そのまま監視を続けていると、『負の霧』が晴れ、天界の住人たちが慌ただしく動き出したのを見た。


 何かあると思って近づいたら、倒れている俺を見つけたという。

 ブーレイたちは様子を見る為とはいえ、よくここに留まったなと思ったが、かなり距離を置いて監視していたらしい。


 そのおかげで、さしたる被害は受けていないそうな。

 危機管理能力が素晴らしい。


「これまで見たこともないほど多くの天界の住人が集まってきてな。メルヴィス様は凄まじい魔法を連発するし……一度は様子を見に向かったが、結局撤退することになった」


 撤退途中で倒れている俺を見つけたらしい。

 もしかして俺、意外と遠くまで逃げ切れていたのかもしれない。


「それでメルヴィス様はどうなりました?」

「もの凄い戦闘を繰り返して、やってきた天界の連中を全滅させた。そしていずこかへ去って行ったよ。方角から、国に帰ったと思う」


 これでこっちの任務は完了だとブーレイは笑った。

 天界の侵攻は失敗に終わったらしい。


 どうやら今回の侵攻、ほぼメルヴィス一人で片付けてしまったとか。

 とんでもないことだ。


 わざわざメルヴィスを連れ戻すために来たのに、そのまま死んでは可哀想……という判断が働いたのか分からないが、ブーレイは俺を助けてくれた。

 俺は素直に感謝した。


「メルヴィス様が戻ったならば、俺も国に帰れます」

 天界が俺を狙っているという懸念はあるが、ここへ来た目的は果たせた。


「そうか、気をつけろよ。魔界はこれまで以上に荒れるぞ」

 かつてないほどに、魔界の戦乱が拡大しているらしい。


 今まで静観していた大魔王も、今後はどう動くか分からないという。

「それはあれですかね。天界からの侵攻も関係している感じですか」


「ああ、混乱が混乱を呼び込んだ。今、どこもかしこも近隣を喰おうとして野心をむき出している者ばかりだ。俺たちも安全じゃない。来たら全力で迎撃するつもりだが、大魔王にまで噛みついてきそうな流れは、かなりよくない」


「そうですね。十分気をつけます」

「それと……」


「それと?」

「できれば、国内でメルヴィス様を押さえておいて欲しい。これはちょっと……いや、かなり厳しい」


 荒れ果てた大地を見やって、ブーレイは苦笑を浮かべた。

「分かりました。できるだけ目を逸らせてみます」


 ヤマトの居場所が分かったので、いまのメルヴィスは、人界へ行く方法しか頭にないんじゃなかろうか。


 だとすると、魔界の戦乱など、ただの雑音にしかならない。

 キレて周辺に被害をまき散らすことはあっても、それは最後の手段ではないかと思える。


 俺は再度ブーレイに礼を伝え、帰路に就いた。


 途中、どこを通ってもメルヴィスが暴れた跡がクッキリと残っていた。

 死骸の一部も、そこかしこに転がっている。


 どれだけの数が侵攻してきたのか分からないが、これで天界が大人しくなってくれると助かるのだが。


 ダールム領を三日かけて進み、途中、一度も天界の住人に出くわすことなく国に戻ることができた。


 今回の命令はファルネーゼ将軍からもたらされたので、将軍に帰還を伝えなければならない。

 町にいるのかと思ったら、メルヴィスの城にいるという。


「そういえば、もともと城を守る任務についていたっけ」


 残りの二将軍が国境付近を守っているのは変わらず。

 ファルネーゼ将軍は早々に城へ帰還していたらしい。


 俺が城に出向き、ファルネーゼ将軍に面会すると……。

「ただいま、任務を終えて帰還いたし……」


「ゴーラン、メルヴィス様が呼んでいる。すぐに来てくれ!」


 また?



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