表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
336/359

336

 魔界が大混乱に陥っているのは分かった。

 各地で戦争がおこっているだけでも大変なのに、天界からの侵攻まであった。


 そしてメルヴィスがキレた。

 ここがポイントだ。


 元気なじいさんだというなかれ。

 メルヴィスの広範囲魔法は、周囲への影響が半端ないらしいのだ。


 そして俺の話。

 トラルザード領内での出来事を話したあと、ファルネーゼ将軍はかなり真剣に考え込んでしまった。


 俺が伝えたのは、魔王トラルザードが魔王リーガードを倒して、周辺魔王から狙われたこと。

 それは将軍も知っていた。


 いまだリーガード領の残党が活動しているので、トラルザードは南方の軍を引き揚げることが難しいこと。

 南と北で二面作戦を強いられているのだ。


 それによる将軍の返答は、なかなかロックだった。


「そんな状況では、トラルザード様を使ってメルヴィス様を止められそうにないな」


 トラルザードは大魔王にもっとも近いとはいえ、それはどうだろうか。

 話を持っていった瞬間に涙目になって、プルプル震えると思う。


 城に引きこもって、絶対に出てこない。


「それは難しいんじゃないでしょうかね」

「やはり無理か……国内は攻め込まれているし、魔王を動かすのは難しいな」


 将軍は勘違いしているが、動かすとかいう以前に無理なのだ。怖がって。

 その辺は言っても理解されるかどうか。


「キレたメルヴィス様は、そんなにヤバいんですか?」


「他国で大暴れしているため、宣戦布告ととられる可能性がある。また、戦場がこっちに移動すれば、この国も滅ぶ」


「それはヤバいですね」

 他国って、暴れたのは大魔王ダールムの国だよな。


 さすがに大魔王国と戦争は勘弁してもらいたい。

 といって、この国でも暴れてほしくない。


 なるほど、だから「止められる者」が必要なのか。

 話が戻るが、南北には将軍が派遣されている。


 城を守るのはファルネーゼ将軍だ。

 もしメルヴィスを止めるとなれば、ファルネーゼ将軍が向かうしかない。


 運が悪ければ即死。

 普通で死亡。


 運良く生き残れても、話を聞いてくれるか分からない。

 そりゃ、困るわけだ。


「……仕方ないな」


 将軍は覚悟を決めたらしい。

 俺でも「仕方ない」と思う。将軍に頑張ってもらうしかない。


「ゴーランが強くなってくれて助かったよ」

「そうですか。あまり強くなった実感が湧かないんですけど」


 以前、進化したときは大きな変化があった。

 あれは肉体が組み変わったようなものだから当然だ。


 今回はただ魔素が増えただけ。そんな印象だ。

 俺は小魔王になったらしいが、それだって死ぬ直前の話だ。


 あれからずっと擬人ぎじんで過ごしていたので、正直小魔王と言われても実感がない。


「進化したときも驚いたが、こんな短期間でこれほど見違えるように成長するとは、正直私もビックリだ」


「いや、本当に実感がないので……」

 いやに持ち上げる。部下が成長して、そんなに嬉しいのだろうか。


 下克上されるとか考えないのだろうか。


 上に立つと面倒ごとが増えるから俺はやらないけど、普通強くなったら、なるべく多くの者を従えさせると、息巻くんじゃなかろうか。


「これなら耐えられるだろう」

 将軍がウンウンと頷いている。耐えられる? 何に?


「えっと、ファルネーゼ将軍。言っている意味が分からないのですけど」

「ああ、すまない。勝手に納得してしまった」


「いえ……それで何が耐えられるんです?」

「もちろんメルヴィス様の元まで、耐えられるだろ?」


「はい!?」

 ちょっと待った……今なんて言った?


「これだけの強さを持てば大丈夫だ。問題ない」

「問題ないって……まさか」


「これってゴーランにしか頼めないことだ」

「それって具体的に言いますと……?」


「メルヴィス様を止めてくれ」

「やっぱり!」


「メルヴィス様に近づくだけでも大変だ。通常の上位種族でもおいそれと近づけない。だが、ゴーランくらい強靱ならばそれも可能だ」

「あのですね……」


「途中、天界の住人と遭遇するかもしれないが、小魔王クラスならば大丈夫だろう」

「あのですね……」


「頼む。この国を救うと思って、行ってくれないか」

「…………」


 この国を救うと言われれば……どうだろう。

 この国には俺が守ると決めた連中が大勢住んでいる。


 オーガ族や死神族、ラミア族だけでない。非戦闘種族もいる。


 それに俺は、メルヴィスに会わねばならなかった。

 とすると、サシで会えるいい機会なのか?


 危険な気がするが、どうせだれかが落ちつかせないと被害が広がるばかり。

 そして取り返しの付かない状況になってからだと、じっくり話もできない。


「……分かりました。俺が行ってきます」

「そうか。助かる。そうと決まれば早速……」


「大魔王ダールム様の国ですとかなり距離があります」

 身体強化して駆け抜けても数日はかかる。それも走りっぱなしでだ。


「大丈夫だ。今回、私は飛行能力に優れた部下だけを選りすぐって連れてきた」

「はっ?」

 どういうこと?


「四人もいれば問題ない……おい」

「「はっ!」」


 ヴァンパイア族が四人やってきた。

 みな大柄で、歴戦の勇士みたいな面構えをしている。


「……って、ええっ!?」

 二体のヴァンパイア族に両腕を掴まれた。そして俺の身体が浮き上がる。


「ちょっ、まっ……」

 浮いた足を残りの二体が掴んで飛び上がった。


 俺は四肢を掴まれて、地面と平行に浮いている。

 昔の映画で見た、胸に「S」を付けた超人が空を飛ぶような格好だ。


「ではゴーラン、頼んだぞ。そしておまえたち」

「「はっ!」」


「大急ぎで届けてくれ」

「「分かりましたっ!!」」


「ちょっ……ファルネーゼ将軍! もしかしてこのままぁ~~~~」


 言い終わるよりも早く、俺は四肢を掴まれたまま飛翔した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ