表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
323/359

323

 久し振りにリグと話せた。

 俺が聞きたいことはだいたい答えてくれた。


 さすがにできた副官。

 俺が寝ていた間のことはつぶさに記憶していてくれていて助かる。


 リグの話を聞いていろいろ分かった。

 この国は北側は、二大魔王から攻められるも、南はいまだ平定できていない。

 そのため、南にいる戦力を北に戻せずにいるらしい。


 戦禍を逃れてきた商人たちが言うには、北はいま、魔王連合軍の方が優勢だとか。

 リグや俺の部下たちはそのせいで、国に帰れずにいる。


 俺たちが国に帰ろうとすると、北の魔王連合戦力と鉢合わせすることになり、動くに動けないとリグが困っていた。


「そもそも俺たちが住むメルヴィスの国は、魔王ジャニウスの国と領土を接しているんだ。衝突せずに移動することはできないだろ」

 どうしましょうと悩むリグに、俺はそう告げた。


「トラルザード様が戦力を増強させれば、国境まで押し返せると思うのですが」

「それはそうだが、現実として、攻め込まれているわけだしな」


 現在は押し込まれつつも、どこかで防衛線を維持しているようだ。

 ただし、それはまだ二大魔王が出てきていないから。


 このまま戦いが長引けば、トラルザードが出陣することになる。


「ゴーラン様、もしトラルザード様が出陣すれば、当然魔王ジャニウスと魔王ギドマンの両名も出てくると思いますか?」


「そうだな。そしてトラルザード領の北側で大決戦が行われる。……って、決戦場所は俺たちの国の真横じゃねーか」

「はい。いかが致しましょう」


 そんな大決戦に巻き込まれたら、俺のヒャッハー集団は死ぬ。

 少なくとも、そこを通り抜けさせてくれるほど、魔王連合軍はお人好しじゃない。


 発見されれば即、狩られる。

 つまり、死にたくなければ、ここから軍を動かしてはならないのだ。


「よし、帰るぞ」

「ゴーラン様?」


「話は分かった……っていうか、帰るに帰れない状況ってのがよく分かった。だが敢えて帰る」

「どうしてでしょう?」


「戦いの規模が大きくなればメルヴィス様が出てくる。それでおそらく『うるさい』という理由で、どこかの国が滅ぶ」

「…………」


「分かるよな。それがこの町かどうかは、半々だ。メルヴィス様がどこに向かうのかは、俺にも分からない。だから、今のうちに帰ろう」


「ですが、戦争は始まっております。戦場を横切ることになりますけど」

「メルヴィス様と魔王、怖いのはどっちだ?」


「もちろんメルヴィス様です」

「というわけで、帰るぞ。部下たちを集合させてくれ」


「分かりました。すぐに取りかかります」

 リグは出て行った。


 俺は頭の中で魔界の地図を開いた。

 どう考えても、戦場を通過する。


 だが、それでいい。

 魔王の出てこない戦場ならば、いくらでも蹴散らして帰れる。


 トラルザードが城にいる以上、向こうも魔王が出張ってくることはない。

 前回のリーガード戦でトラルザードが重い腰をあげたのは、魔王本人が国境を越えてきたからだ。


 逆をいえば、そこまで明確に敵対してはじめてトラルザードが動く。

 そして魔王ジャニウスたちの狙いは、トラルザードの撃破。


 トラルザードがいない戦場で暴れて怪我をしたいとは思わない。

 いまトラルザードは、大魔王に一番近い魔王と呼ばれているらしい。


 ならば、いくらでも部下を消費してもいいから、トラルザードの相手をさせ、弱ったところで真打ち登場と行きたいはずだ。

 当面は部下たちで戦線を押し上げてくるつもりだろう。


 魔王のいない戦場、圧倒的な強さを持つ者はいない。

 つまり、敵を蹴散らして帰れるわけだ。


「うん、完璧な作戦だな」


 俺はトラルザードに帰還する旨を伝えるため、部屋を出た。




「出て行くのか? 生き返ったばかりなのに、少し急ぎすぎではないのか?」

「生き返ったというか、仮死状態……まあ、それはいいんですけど、いま北は戦場になっているではありませんか」


「そうじゃ。あれを突っ切るのは並大抵のことではないぞ。敵の増援も続々と集結しておる」


「敵がいくらいても別にいいんですが、あまり騒ぎすぎると、メルヴィス様が出てきてしまうので……」


 ――ぷるぷるぷる


 震えやがったよ。手と足までぷるぷるしている。

 しかも目に大粒の涙を溜めやがった。


「わ、我は嫌だぞ。メ、メルヴィス様が出てきたら……みんな……みんな、灰になってしまう」

「分かります」


 灰にするかどうか分からないけど、敵味方関係なく死滅させそうだ。

 あれはヤマトさえ見つければいいと考えているだろうし。


「出てくるのか? 出てくるのじゃな? わ、我は……ちと厠へ」

 窓から逃げだそうとしたので、慌てて止めた。


 しかも玉座近くに置いてあった、金目の物を手に持っているじゃねーか。

 逃亡資金か。どこまで逃げるつもりだ、魔王。


「大丈夫ですよ。国に帰り着いたら、メルヴィス様は俺が説得しますから」

「本当か? 説得してくれるのか? こっちに来ない?」


「ええ、来ません。大丈夫ですから、窓から逃げないで下さい」

 しかしかりにも大魔王に一番近いんだろう。どれだけメルヴィスが怖いんだか。


 魔王二人から宣戦布告されてもこれほど慌ててないだろうに。

 よほどトラウマになっているのだろうけど……まあ、強さでいったらそうなのか。


 メルヴィスとタメを張るには、大魔王になることが必須。

 それでも成り立てでは素質や経験の差で不利かもしれない。


 なんとかトラルザードを宥めて、俺は自身の帰り支度をはじめた。

 といっても、武器防具を装備するだけだが。


「リグはどこかな……おっ、いた」

 城内を歩いていたら、中庭にリグがいた。

 部下たちも集まっている。


「あっ、ゴーラン様」

 リグが俺に気付いた。同時に部下たちの視線が俺に集まる。


「本当に生き返りやがった!!」

「マジだったのか!?」


「死んでたんだぞ」

「ああ、完全に死んでた」


「まさか、蘇ってきたのか」

「マジぱねー! マジぱねー!」


「うおおおお……すげえぜ。不死身の大将のご帰還だぁ!」

「ウチらの大将は不死身だぜ、ヒャッハー!」


 俺の顔を見た瞬間。奴らのテンションはすごいことになった。

 だから仮死状態だったって……言っても分からねえだろうな。


「ヒャッハー! 大将の帰還だぁ!」


「ヒャッハー! これでもう怖いもんなしだぜ!」


「ヒャッハー! 魔王でも大魔王でもどんとこい!」


「ヒャッハー!」

「ヒャッハー!」

「ヒャッハー!!」


「――こいつら」

 ヒャッハー、ヒャッハー、うるさい。


「応えてあげたらどうでしょう」

「え~?」


「みなさん、心配していたのですよ」

「……そうか」


 心配していたと言われれば、すまない気持ちにもなる。

 リグに言われて、俺は不承不承、右手を掲げた。


 すると部下たちのヒャッハーボルテージは、最高潮に達した。


 この時、トラルザードの城内すべてが、ヒャッハー空間に包まれた。


「「「ヒャッハー! 最高だぜ、ヒャッハー!」」」


「……俺、こんな連中を引き連れて帰るの?」

 全員、一発殴って大人しくさせようか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ