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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第6章 魔王際会編
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「あー、いー天気だ」

 俺は大きく伸びをした。前世で言うなら日本晴れだ。


 俺の後ろには、メラルダ将軍がつけてくれた者がいる。


「この天気は、しばらく続きそうですね」

 その中の一人、ヴァネット族のストメルが俺の横にやってきた。


「分かるのか?」


「はい。コレが乾いていますので」

 そう言って、ストメルは四枚のはねを振るわせた。


 ヴァネット族は巨大な蜂にしか見えないが、かなり頭が良く、手足も器用。

 攻撃力、防御力ともに低いことから、戦場にでることはない。


 ストメルは通常のオーガ族より小さいものの、蜂と思うと巨大過ぎる。

 ブーンと重低音がいつでも聞こえるので、どこにいるかすぐに分かって便利だ。


「そろそろ腹が減ったな」

「では休憩にしましょうか」


 打てば響くようにストメルが答える。

 ストメルは、この旅で俺の副官を努めている。


 ようは、空を飛ぶリグと思えばいい。


「あそこに木立がありますが、どうでしょう」

「いいんじゃないかな」


「では向かいましょう」


 俺たちはいま、魔王に会うため、街道を緩やかに歩いている。

 専用の乗り物もあるが、メラルダ将軍から「身体を使った方がよいぞ」とアドバイスをもらったので、歩きにしたのだ。


 もうすぐ昼だが、俺は今日これで三度目のメシである。


「用意しますので、しばらくお待ちください」

「ああ、いつも済まないな」


「いえ、大切な役目ですから、お気遣いなく」

「大切な役目……か」


 俺は木によりかかって座りながら、出発する直前のことを思い出していた。


               ○


「すまん、リグ。俺はこれから魔王トラルザードに会いにいくことになった」

 唐突に報告したからだろう。リグは固まった。


「ゴーラン様、なぜ魔王に喧嘩を売りに?」


「ちょっと待て!」

 なぜ俺がわざわざ魔王に喧嘩を売りにいかなきゃいけないのだ。


「ゴーラン様が喧嘩を売らないで済むとは、思えないのですけど」

「失礼な」


 と思ったが、俺ってそんなに喧嘩を売りまくっていたか。

 むしろ、売られた方が多いと思うが。


 ちなみに売られた喧嘩は全部買っている。

 高値だろうが底値だろうが関係ない。


 俺は真面目だから一人一人相手をしてやっているが、それと勘違いしていないだろうか。

 まあ、それはいい。

 リグに告げたのは、俺の部隊についてだ。


「いま俺たちはメラルダ将軍の独立部隊に所属している。部隊長は引き続きダイルがするから、俺が抜けても問題はない。そこで相談だが、ダイルの補佐にサイファとペイニーをつけようと思うが、どうだ?」


「それがよろしいかと思います。お二人がいれば、そうそう滅多なことはおきないと考えます」


「そのかわり、事務ができる者がいない。おまえがやってくれ」

「畏まりました。ゴーラン様が魔王に喧嘩を売りにいくのですから、留守はキッチリ守らせていただきます」


「いや、売りに行かないから! 会談をするだけだから」

「なるほど、大切なお役目があるのですね。喧嘩よりも大切な……」


「そう……かな?」

 主に俺の種族のこととか、昔の話を聞きにいくだけなんだが。

 しかし、何だよ、喧嘩より大切なって。


「でしたら心置きなく出立なさってください。こちらのことは気にせず、思う存分叩きのめしてくださいませ」


「いや、戦わないからな!」

 分かってて言ってるだろ。


 とまあ、リグとそんな話があって、その後サイファとペイニーにも同じ話をした。


「進化して強くなったのは分かるが、なんでいきなり魔王と戦うんだよ。順番があるだろ」


「なんだよ、順番って! というか、戦わないぞ」

 リグに続いてサイファも失礼なことを言いやがった。


「ここへ来て確信しました。竜種は戦闘好きです。戦わないで済むはずがありません」

「えっ、マジで?」


 ペイニーからも言われてしまった。


 竜種は戦闘好き。

 それはダイルから聞いたことがあるし、俺もそうなんだと感じたが、魔王もそうなの?

 戦闘狂の魔王とか、普通に死ねるんだが。


 サイファもペイニーも俺が魔王と戦うと信じて疑わない。

 これはもう、絶対に戦わないでおこう。本当に。


「それで、この部隊はダイルが率いているから、これまで通りだ。俺の代わりにサイファとペイニーが入ってくれ。苦手な事務はリグに頼んだ」


「ゴーランの代わりか。キツそうだな」

「大丈夫だ、サイファ。やればできる」


「日に三度、目が合った奴をぶっ飛ばせばいいのか?」

「ちょっと待て!」


 俺がいつそんなことをした!? してないだろ。


「初対面の相手には、下から上へ眺めたあと、『余所もんだな?』と因縁をつけるんですよね」

「ちょっと待て!」


 ペイニーも無茶苦茶なこと言った。

 やったか? 俺は、そんなことをやったのか?


「あとは問答無用で殴りかかるだけか」

「追い打ちは徹底的にですよね」


「お二人とも、ゴーラン様には大切なお役目があります。その意を汲んで、近づく者すべて蹴散らすのです。四の五の言わずに倒してください」


「…………」

 リグまで参戦してそんな流れになってしまった。


 その後俺は、腹が減って引っ込んだが、奴ら、本気にしていないよな。

 もう、確認するのも怖くなったんだが。


               ○


「ゴーラン様、食事の用意ができました」

「ん? ああ……そうだったな。すまん」


 そんなやりとりが思い出されたが、今頃平穏に暮らしているだろうか。

 しているよな。


「どうぞ、お食べください」

 俺は広げられた料理に手を伸ばし、今日三度目になる食事を開始した。


「――うまい!」

 俺の手は休まることがなかった。


 俺はいまだに一日六食は食べている。

 魔王トラルザードと会うために移動しているが、途中で何度も食事休憩を取らねばならなくなっていた。


 ちなみに俺の道連れ、ストメル以外は荷物持ちだ。

 大量の食糧を抱えて運んでくれている。


 これもメラルダ将軍が付けてくれた。

 重い荷物を軽々と運んでくれているが、種族名は知らない。


 道中、俺の腹が減って動けなくなると、メラルダの所は満足に食事も与えていないのかと、他の将軍に誹られる可能性があると言っていた。


「今日の予定はどうなっているんだ?」


「今日はこのまま進んで野宿ですね。明日は食糧が足らなくなるので、町に向かいます。町を出てからは二日間野宿して、三日目に町か村で休憩するような感じになります」


「そうか。済まないが道案内を頼むぞ」

「畏まりました。なるべく近くて楽な道を使うようにします」


 魔王と会うにはもう少しかかりそうだ。

 別に急がないからいいのだけど。



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ひごろのおこないw
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