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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第4章 嗚呼無情編
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 あの日一日、軍は休みを取った。

 翌日から十日ほどかけて、西に向かって移動した。

 後で知ったことだが、どうやら休みの日に食糧の買い入れと、物資の整理を済ませていたらしい。


 完全にオフだったのは俺たちだけだったようだ。

 これは俺たちがいまだ客分だからだろう。


 ここで手伝いを申し出ても勝手が分からないので、かえって足を引っ張ることになる。


「休めと言われているときに休むのも大事な仕事だしな」

「ん? ゴーラン、何か言ったか?」


「いや別に……それより先ほど聞いたが、あと数日で到着するらしいぞ」

 岩獅子族のダイルと話をした。


「オレたちが行く場所って本陣だっけか?」


「そう。東の国境付近には、三つの大きな部隊を張り付けることになっている。それの内側にひとつ。そして最後尾に本陣をおく」


 とにかくこの国の東側の国は荒れていて、何がおこるか分からないらしい。

 しかも、ネヒョル率いるワイルドハントの行方も分からず終い。


 最近の話だと、いまだその周辺にいるらしいが、神出鬼没で足取りが掴めないとか。


 小魔王国よりもネヒョル対策として前線を配置し、後方は後詰めができるように、また本陣を危険にさらさないように重層陣を敷いている。


 それを聞いたとき俺は「なんて用心深いんだ」と思ったが、もし魔王国に喧嘩を売る場合、それなりの戦力を有していることになるため、用心しすぎることはないのだろう。


「聞き取りがあったと思うが、どうだった?」

「どうってことねえな。いろいろ楽しかったぜ」


 軍団長のダイルは、俺の願いを聞き入れてくれたらしく、毎日二、三人を呼んでヒアリングしてくれている。


 この前話をしたときに、「メルヴィスの国のオーガ族は変わっている」と言われた。


 どうやらヒアリングをしたことで、目から鱗が落ちたらしい。

 オーガ族そのものを上方修正してくれたのならば、俺が村で鍛えた甲斐があったというものだ。


 また、噂でしか知らなかった死神族について深く知ることができて良かったとも言っていた。


 どうやらダイルがイメージしている死神族は、血も涙もない殺戮者の顔らしかった。

 それだけ噂が先行していたのだと、俺もらしくないフォローを入れておいた。


 このような感じで概ね、各種族の能力を上方修正してくれたようだが、そうでない種族もあった。


 ヴァンパイア族である。


「なんだありゃ」とはダイルの弁。


 最初のヒアリングのとき、やけに調子のいいことを言っていたが、彼らの持つ『特殊技能』には、なんら特筆するところがない。

 本当に鍛えているのかと不安になったそうだ。


 聞いてみれば、実戦経験はまったくない。けれども「やればスゴイ」と大言を吐く始末。

 実力と言動があまりに釣り合っていないため、一度手合わせしてみることにしたらしい。


 そうしたら案の定である。

 まるで使いものにならないという評価が下された。


 ちなみにこの手合わせ、軍団長のダイルが直々に行っている。

 岩獅子族は身体の大きさもさることながら、魔素量もすさまじい。


 ダイルはそんな岩獅子族のなかでも生え抜きの存在で、自軍内でも結構浮いていたらしい。

 本人は戦うことが好きだが、それを発揮できる相手がいない。


 そう思っていたら、オーガ族が次々と勝負を挑んできたという。

 なにやっているんだと思ったが、「なかなか楽しめたぞ」とダイルが言うくらいだから、善戦した者も出たのだろう。


 ちなみにダイルの一番人気はベッカ。

「肩の関節を外された」とダイルは笑っていた。


 鬱陶しいので、俺がベッカの関節を百回以上外している。

 ベッカはそれでやり方を覚えたのだろう。


 関節技は、抜け出し方を知らないと、上位種族でもやられてしまう。

 初見で躱すのは難しいので、ダイルも喰らってしまったようだ。


 ダイルは、オーガ族がよほど気に入ったのか、俺もどうだと聞いてきた。一戦交えたいらしい。

 俺はサイファたちのような戦闘狂ではない。


 そもそもダイルは、サイファやベッカのように軽くあしらえる相手ではないので、移動中の余興にやるものではない。

 そのため「手加減ができませんので」と断ったら、大笑いされた。


 将来俺は、大物になるらしい。ダイルから太鼓判を押された。よく分からん。


 そんなこんなで数日後、俺たちはようやくメラルダ将軍のいる本陣に到着した。


 到着早々、メラルダ将軍が俺を呼んでいるという。

 俺が国境を越えたときにはもう、メラルダ将軍は東に向かって出発してしまったあとなので、最近はまったく顔を合わせていなかった。


「すぐ行くと伝えてください」


 伝令にそう告げて、俺は配下の者たちを集めた。


「いいかお前ら、ここでは軽々しく喧嘩を売るなよ! 分かったな。分かってないやつは、俺が丁寧に撫でてやるからそのつもりでいろ」


 そこでニヤリとしてやると、全員首を急いで上下に振り出した。

 ここへ来るまでに軽く撫でることが何度かあったので、みなよく分かっているようだ。


「じゃ、行ってくるが、大人しくしているんだぞ」


 もう一度言い添えて、俺はメラルダ将軍が待つ天幕へと向かうのであった。




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