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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第3章 小国哀歌編
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 メラルダが軍を戻すのは確定事項らしい。

 魔王トラルザード麾下の将軍としては、命令には逆らえないだろうし、それはしょうがない。


 ただこちらとしても「はい、そうですか」で終わってしまっては意味がない。

 できれば代案を……と思っていたら、メラルダの方から言い出してくれた。これは正直ありがたい。


「部隊の交換ですか?」

 両国の部隊を交換する……一方的に武力を貸し出せないので、そういう表現を使ったようだ。

 メラルダ軍は強力な者が多数いる印象がある。これはかなり期待できるのではなかろうか。


「それならば、我の権限でなんとかなる。それで魔王誕生を阻止してほしいのじゃ」


 なぜ魔王トラルザードがメラルダの軍を戻すのか。

 それはネヒョルのせいだ。


 ワイルドハントが西で暴れたことで、いま西は複数の国で大混乱らしい。

 そして小魔王ユヌスの国の一強状態であるという。


 この一強状態がよくないらしい。


 東よりも西の方がより魔王誕生に近くなってしまった。

 トラルザードは、メラルダに西を警戒するよう命令を出したという。


 だが、東だっていま戦乱の真っ最中だ。

 最悪、西と東で魔王が誕生する可能性も出てきた。


 それはトラルザードにとってかなり拙い状態だという。

 そしてワイルドハントの行方は不明。これ以上かき回されないためにも、メラルダを西へ派遣したいのだそうな。


「魔王国が増えると、複数の魔王が入り乱れた『大戦乱』がおきる可能性がある。それはなんとしても避けたい」


「その部隊の交換ですが、どのような感じを予定しています?」

 問題は、部隊を交換して魔王誕生を阻止できるかどうかだ。


「我の部下の中で小魔王に近い力を持つ者が何人かおる。その者をひとり、部下を連れて貸しだそう。戦いに慣れておる者たちばかりゆえ、存分に働いてくれよう」


 俺の思った通りだ。

 ゴロゴダーンを失ったいま、強力な個体は喉から手が出るほど欲しい。

 そしてメラルダが、魔王誕生を阻止するために貸し出す部隊だ。役に立つに決まっている。


 だが、ここでファルネーゼ将軍が考え込むような素振りをみせた。

「私の一存では難しいところではあります。もし交換が可能でしたら、こちらからは私の部下を貸し出す形になると思います」


 将軍が即答しなかったのは、他の将軍の意見を聞かないといけないのと、メラルダの部下――しかも強力な部隊をこの国に引き入れて大事があっては困るかららしい。


 味方と思っていた部隊が、国の中枢部に入ったとたんに敵に変貌するというのを心配しているようだ。


 俺に言わせれば、もとから勝ち目のない国だ。そんな国の部隊を警戒しているのはかなり滑稽なのだが、上に立つ者はそういう配慮も必要なのだろう。


「我もすぐに軍を引くわけではない。まだ余裕があるゆえ、結論は十分話し合ってからでもよいぞ」


「ありがとうございます。すぐに回答できるよう、他の将軍と早急に話し合っておきます」

「頼んだぞ」


 こんな感じで二回目の会談はお開きになった。




 メラルダと分かれた。

 別の個室で俺とファルネーゼ将軍は、会談について意見のすり合わせを行った。


 最初、ファルネーゼ将軍は大きく息を吐いた。

「ゴーラン、先ほどの話だが、どう思う?」


「いい話かと思います。わが国だけではどう考えてもレニノスを倒すのは不可能ですし」

 それどころか、南にある四つの国がこの国を虎視眈々と狙ってきている。それが厳しい。


 もとから同盟を組むほど交流があったわけではないため、対話によって友好度を高めるのはいまさら感が強い。


 かといって、攻め滅ぼそうにも、向こうは二国どうしで同盟を結んでいる。

 不利な戦いになりそうなのだ。


「少しでも戦力が欲しいのは分かるが、そうなると紐付きにならないだろうか」

 トラルザードの属国的な印象を与えてしまうのではないかと懸念しているようだ。


「逆にそう思わせた方が攻められなくていいんじゃないですか?」

 虎の威を……というやつである。


「そんな情けないことできるか」


 政治的な判断ができる将軍だと思っていたが、それでも魔界の住人のようだ。

 戦って負けてないのに強者の風下につきたくない。そう思われたくないのだ。


 俺としては、そんな評判なんてどうでもいいと思うのだけど。



 メラルダは現在、賓客として城に滞在している。

 これから将軍たちを集めて話し合いの場を持つのだと思ったら、すでに集めているらしい。素早いことだ。いや、あたりまえか。


「これからフェリシアにも相談するが、将軍とも話し合って、明日までに結論を出そうと思う」

「明日ですか。素早いですね。そんなにすぐ結論が出ますか?」


「部隊の交換をするならば詳細を詰めなければならないし、断るならば代案を考えねばならん。決断は早いほうがいい。それと、今夜は夜会をするからな。ゴーランも出席するように」


「ええっと、夜会ですか?」

「メラルダ将軍の来訪を大々的に知らしめるつもりだ。すでに昨日から準備をしている」


 有効活用の一環ですか。


「了解です。出席させていただきます」

 こんなボロいシャツとズボンでよければだけど。




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