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こたつでぬくぬく(1)

 外に出ると、冷たい空気が肌を撫でた。その瞬間、体がブルッと震える。


「うぅ……最近寒くなってきたな」

「もう冬ですからね。温かくしないと風邪を引いてしまいそうです」

「朝、起きるのも辛くなったねぇ……」


 体を抱えながら外に出てみるが、それだけでは寒さはなくならない。少しでも温かく過ごせるように、三人で引っ付いて歩き始める。


「クレハは耳もしっぽも毛で覆われているから、平気だと思った」

「そんなことはないぞ。寒いものは寒い」

「でも、私たちと比べたら、耳の毛は防寒になっていていいですね」

「じゃあ、クレハの毛をむしって私たちの耳につけようか?」

「こ、怖いこと言うなー!」


 ふざけたことを言うと、クレハが怖がってイリスの後ろに隠れた。警戒してこちらを睨んできて、しっぽを大事そうに丸める。


「耳も毛がないところがあるから、そこに風が当たると寒いんだぞ。だから、二人と同じだ」

「確かにありますね。こことか」


 悪戯っぽく笑ったイリスがクレハの耳をつまんだ。


「ひゃっ! 冷たい手で耳を触るなー!」

「じゃあ、私も!」

「ぅわっ! だから、冷たい手で頬を触るなー!」


 寒い日だけど、三人でじゃれ合えば、寒さは気にならない。……クレハ以外は。


「二人の攻撃が辛いぞ! こういう時は普通は温め合うもんだ!」

「だって、温かいものないですし……」

「冷たいものしかないね」

「ノアは魔法があるだろう!?」


 そんな抗議を受けたが、面白いので魔法は使わない。そういえば、温かい物といえば――。


「そういえば、ミレお姉さんが雑貨屋に新商品が入荷したって言ってたよね」

「あぁ、昨日聞きましたね。なんでも、冬に活躍する物だとか」

「冬に活躍するもの? 一体なんだろうな。毛皮とかか?」

「だったら、クレハの毛も刈って……」

「だから、怖いこと言うなよー!」


 だけど、冬に活躍するものって一体なんだろうか? とても気になる。


「じゃあ、朝食を食べたら雑貨に見に行かない?」

「いいですね。どんな物が入荷されたのか気になります」

「温かくなるものだったらいいなー」


 雑貨に行くことを提案すると、二人とも頷いてくれた。冬に活躍するもの、一体どんなものだろうか?


 ◇


「ごめんくださーい!」


 朝食を食べ終えた私たちはすぐに雑貨に立ち寄った。すると、カウンターの奥にいたおばさんが姿を現す。


「はい、いらっしゃい。今日は三人でお買い物かい?」

「うん! 新しく入荷されたものが気になってきたの」

「あー、あれかい。やっぱり、気になるわよね」

「はい! とっても気になります」

「どんなものなんだー?」


 私たちがワクワクとした気持ちで待っていると、おばさんはこちらまで来て案内してくれる。


「この棚にあるよ。そして、これが新商品さ」


 そう言って指をさしたのは、赤褐色の石だった。


「……石?」

「赤いですね」

「食い物か?」


 想像にしなかったものに私たちは目が点になった。一体、この石にはどんな良いことがあるのだろうか?


「その石に手を近づかせてごらん」


 おばさんの言葉に私たちは顔を見合わせ、恐る恐る手を近づかせる。すると、異様な熱を感じた。


「あ、熱い!」

「本当ですね……」

「どうしてだ!?」


 不思議なことにその石は熱を発していて、離れいても熱を感じた。ただの石だと思ったのに、ただの石じゃなかった!


「それはね、熱石って言うんだ。自然と熱を発する物で、近くの物を温めてくれるんだ」

「そうなんだ。こんなものがあるなんてびっくり」

「世の中には不思議なものがあるんですね」

「訳が分からないぞ。どうして、石が熱くなるんだ?」


 どうやら、この石は自然と熱を発する物らしい。この世にこんな不思議なものがあるなんてびっくりだけど、面白い。


「どんな原理かは分からないさ。でも、温かくしてくれるから、冬には活躍してくれそうだろう?」

「これはどんな風に使うの?」

「これはそのまま触ると熱いから、布にくるんで使うんだ。手が冷えた時に使ったり、ベッドの中に入れて温めるっていうことも出来るよ」

「直接触るのは熱そうなので、包む布が大事そうですね」

「どれどれ……。あちっ! 直接触ったら、熱すぎるぞ!」


 どうやら、直接触るのは止めた方がいいらしい。それなら、布で包んだ方がいいね。


「ちなみに布も用意しているよ。仕立て屋に頼んで、作ってもらったんだ。ほら、これだよ」


 おばさんが隣を指さすと、そこには色とりどりの袋が積まれてあった。


「使用用途に分けて、薄手、普通、厚手って作ってもらっている。だから、石を買う時はこっちも買っておいておくれ」

「使用用途か……何に使えるかな?」

「当然、手を温める物だぞ! これがあれば、外での活動がやりやすくなる!」

「手がかじかんで辛い時がありますからね。そういう時に使うと良さそうです」


 二人は外での活動が多いから、手を温めるために使いたいみたいだ。だけど、こんなに温かいのなら、他の用途にも使えそう。


 温かい石……ベッドに入れて温めるって言っていたけれど、それと似たようなことが出来るんじゃない。例えば、こたつとか。創造魔法でこたつは出せるけど、電源がないから使えない。だけど、電源の変わりにこの石を使えば、温かいこたつが出来るんじゃないだろうか?


 うん、いいんじゃない? 体が冷えて帰ってきた二人を、こたつで温める。きっと、気持ちいいに違いない。


「なぁ、ノア。これ、買おう!」

「私も欲しいです」

「うん、買っていこう」

「ありがとね!」


 私たちは必要な熱石を買って、店を後にした。


 ◇


「さてと、仕事も終わったし。こたつの準備を始めようかな」


 今日の農作業も終わった私はこたつの設置に取り組んだ。まずはスペースの確保。ダイニングテーブルとソファーを少しだけ移動させて、こたつを置くスペースを作る。


 その後、洗浄魔法で床を綺麗にした。あとは、この上に色々と物を作っていくだけだ。


 まずはこたつの下に引く絨毯。厚手でふわふわしていて、触り心地のいい物を作ろう。手をかざし、意識を集中させて絨毯を作る。


 すると、スペースが光だし、薄い緑色の絨毯が現れた。しっかりと厚手でふわふわしていて、触り心地のいい絨毯だ。これなら、こたつに入りながら寝転がることが出来る。


 次に本命のこたつだ。その前に魔力回復ポーションを飲んで、魔力を回復させる。しっかりと魔力を補給すると、再び手をかざして意識を集中させる。


 四角い天板があって、厚手のこたつ布団に覆われている。こたつの中には石を入れるスペースを作ろう。よし、イメージが出来た。


 創造魔法を発動させると、絨毯の上が光だす。そして、その光が収束すると、想像通りのこたつが出来上がった。


「やった、出来た。じゃあ、このこたつの中に熱石を入れて……」


 こたつ布団をめくり、中にある網の中に素のままの熱石を入れた。そして、こたつ布団を被せる。これでしばらくしたら、こたつの中が温かくなるはずだ。


「準備は完了だね。後は二人が帰ってくるのを待つだけ。その間に夕食を作ってこよう。今日は煮込み料理にしようかな」


 三人でこたつに入るのが楽しみだ。私は夕食の作業に取り掛かり始めた。

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