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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
第一章 始まりの土地

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24.新しい服

 仕立屋を出ると、外は夕暮れになっていた。


「大分遅くなっちゃったね」

「宿屋に行って夕食にしましょう」

「ウチ、お腹ペコペコだぞ~」


 私もお腹が減った、早く宿屋に行こう。宿屋はそんなに離れていないところにあるので、すぐに宿屋に辿り着く。いつものように宿屋に入り、食堂に行くと冒険者たちが食事を始めていた。


 すると、すぐにミレお姉さんが現れる。


「いらっしゃい。座ってちょっと待っててね」


 ミレお姉さんはそう言い残すと食堂の奥に移動した。食事を用意してもらっている間に私たちは好きな席に座る。周りにいる冒険者の食事を見てみると、どうやら今日は肉焼きの日みたいだ。


「今日は肉焼きだぞ~、嬉しい」

「良かった、パンもありそうですね」


 肉とパンは食べられそうだ。早く野菜も食べられるようになりたいけど、いつ頃になるかな?


「はい、料理おまたせ」


 すると、ミレお姉さんが料理を持って現れた。テーブルの上に肉焼き、パン、コップが置かれる、美味しそうだ。


「今日も小麦の収穫お疲れ様。調子はどう?」

「順調だよ。今日も収穫量アップしたからね」

「あら、それは嬉しい。まだまだ小麦粉はギリギリだから、もっとあってもいいと思ったのよ」


 そっか、小麦粉の量は満足にはないみたい。この村に何人いるか分からないけれど、もしかしたら全体にまだ行き渡ってないのかもしれない。まだまだ作っていかないとね。


「今日は何か変わったことあった?」

「服を仕立てにいったよ」

「あら、そうなの? それはいいわね、あそこの仕立屋は本当にいい店なのよね。話を聞いていたら、また仕立ててもらいたくなったわ。きっと、良い服ができるわ」


 ミレお姉さんは羨ましそうにして、この場を離れていった。あの仕立屋は村でも評判のお店らしい、いい店に服を注文できて本当に良かった。


「どんな服ができるんでしょうね。今まで古着しか着てこなかったので、新しい服ってワクワクします」

「ウチは良く分かんないけど、新しい服っていうのが気になるぞ」

「私も気になるなー。新しい服ってどんな感じなんだろうね」


 新しい服は初体験らしく、二人ともワクワクとした様子だ。私もこの世界では初めての新しい服でワクワクしている。どんな服に仕上がるんだろう。


 服の話題で盛り上がりながら、夕食を食べていく。


 ◇


 今日は服が仕上がる日だ。早く仕上がった服が見たくて、今日も小麦の収穫はかなりの速度で進んでいった。毎日作る量を少しずつ増やしているのに、作業効率が良いせいでかかる時間はほぼ変わらない。


 小麦の収穫が終わり、作物所にいるコルクさんのところに小麦を卸にいった。量の増加と作業の速さにコルクさんが驚いているのを見てから、仕立屋に行く。


「とうとうですね、新しい服」

「そうだな、どんなのができているんだろうな」

「楽しみだね」


 荷車を宿屋に置いてから仕立屋へと向かった。しばらく歩いていると、仕立屋の建物が見えてくる。ドキドキしながら扉を開いた。


「すいませーん、服取りに来ましたー」

「あら、いらっしゃい。待ってたわよ」

「服、できてるか!?」

「もちろん、できあがっているわよ」

「うわー、楽しみ」


 お姉さんが店の奥から現れた。どうやら、仕上がっているみたいだ。どんな服が出てくるのか楽しみ。


 カウンターの奥にある棚から何かを取り出すと、カウンターに並べていく。


「これがノアちゃん、クレハちゃん、イリスちゃんね」

「手にとってもいい?」

「もちろん、広げてみていいわよ」


 三人でできたての服を手に取って広げてみる。


「わー、凄く綺麗!」

「服ってこんなに綺麗なんだな!」

「すごい、新しい服だ!」


 広げられたのはほつれも汚れも一切ない真新しい服だ。今着ている古着とは比べられないほどに綺麗な生地で作られている。誰も袖を通したことのない服、それを着れる。


「どうする、ここで着ていく?」

「着ていっていいのか!?」

「店を閉めておけば、ここには誰も入ってこないわ。新しい服をきたあなたたちを見てみたいしね」

「着ていきましょうよ」

「うん、そうしようか」


 すぐに服が着れるとあって、私たちはテンションが上がった。ちょっと、お店を借りて服を着てみよう。


 ◇


「どうだ、似合うか?」

「私はどうでしょう?」

「私はどう?」


 新しい服に袖を通し、三人で見せ合いっこした。私は襟のついたシャツに膝丈までのスカート、イリスは膝丈までのワンピース、クレハはシャツにダボついたズボンだ。


「イリスがイリスじゃないぞ!」

「ノアのスカート、ひらひらしてて可愛い!」

「クレハのズボン、カッコいいね!」


 服が綺麗すぎて違和感を感じるけれど、みんなそれぞれの服は似合っていた。でも見違えるな―、流石は新しい服、新しく仕立てた服だね!


「うん、うん。三人とも似合ってるわよー、流石は私たちね」

「この服、凄く気持ちいいし、とっても動きやすいぞ!」

「肌触りが段違いにいいです。こんな服が着れるなんて感動です」

「でも、ちょっと大き目に作られているのかな?」

「そうそう、あなたたちはまだ成長期だからね、ちょっと大きめに作っておいたわ。そのほうが長く着れていいでしょ」

「なるほど。細かい気づかい助かります」

「いいのよ、それが仕事だからね」


 クレハは店の中を歩き回ったりジャンプしたりして服の居心地を調べ、イリスは服を撫でて肌触りを確認している。服、作ってよかったな。


「あ、精算お願いします」

「はい、これくらいになるわ」


 うっ、やっぱり高いな。それでも買えなくはない値段だ。背負い袋から財布を取り出して、必要な硬貨を渡した。


「はい、毎度ありがとう」

「また、お金が貯まったら服を注文してもいい?」

「もちろんよ。服以外にも靴、鞄、小物も作ったりしているから利用してね。あと、革製品も扱っているから、何か欲しかったらここに来ればいいわ」

「ここって何でも屋みたい。そんなに沢山のものを作っているなんて」

「旦那も職人だからね、二人いればなんだって作れちゃうんだから」


 そっか、二人とも職人だから色んな物が作れるんだ。


「靴も欲しくなりますねー」

「靴、欲しいぞ!」

「確かに、次は靴が欲しくなるかも」


 欲しいものが次から次に溢れてくる。本当に物がないんだなぁ、必要なものを集めるだけでも一苦労かも。お金も必要だし、ますます頑張らないといけなくなるね。


「靴は旦那が作ってくれるわ。あ、そういえば名前言ってなかったわね。私の名前はクレア、旦那の名前はラットよ」

「クレアさんとラットさんだね。これからよろしく!」

「よろしく!」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね」


 これからもお世話になりそうだ。お互いに挨拶し終えると、私たちは仕立屋を後にした。真新しい服を着ると、新たな一歩を踏み出したような気になる。


 ◇


「まぁ! それが新しい服なのね!」


 宿屋の食堂に入ると、ミレお姉さんが驚いた顔をして近づいてきた。


「ふっふっふっ、ウチらの服はどうだ?」

「すっごく似合ってるわ。まるで別人みたい!」

「そうですか? なんだか照れてしまいますね」

「ふふっ、そういうところも可愛いわよ」


 ミレお姉さんが私たちの恰好を見て褒めに褒めてくれる。私も照れてきちゃった。


「お、嬢ちゃんたちの新しい服か。こりゃいいな!」

「随分と可愛らしくなってるじゃねぇか! 似合ってるぞ!」

「こりゃ、ここで食う飯ももっと美味くなるって話よ!」


 その場にいた冒険者も会話に入ってきて、やんややんやと持ち上げてくる。なんだか、恥ずかしくなってきちゃったよ。でも、ちょっといい気分。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今、靴履いてるのかな? 汚しても良い古着を何枚かほしいところだなあ
[一言] お金を貯めずに服などを買って使って見せる事で無意識に金銭目的の窃盗から自衛出来ていますね。小麦も全部売って見せているので物取りの犯行も無いですし、あるとしたら貴重な植物魔法使いを違法奴隷とし…
[一言] もっと物を奪おうとする愚か者の出演機会が多めだとうれしいです。
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