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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
第五章 新しい出会いと交流

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172.創造魔法の活用法

 作物所への納品が終わった。仕事を終えた私は家へと戻ってくると、ダイニングテーブルに座って創造魔法の説明を見ながら考え始める。


 創造魔法:想像したものを物質化する魔法。素材があれば通常よりも簡単に物質化できる。


 創造魔法、何もないところから物を出現させるだけの魔法だと思っていた。だけど、説明を読む限りそれだけの力じゃないことに気づいた。素材があれば、想像したものを作り出せる、と。


 何もないところから何かを出すより、何かの素材を元に何かを作り出す力がある。素材の持つ力を使って、想像したものを作り出す力があるんだ。


 無から有を作り出すのは凄く大変だけど、有から有を作り出すのはそれほど難しくはない。料理だってそうだし、素材を使って何かを作り出すのは誰でもできることだ。


 この創造魔法の説明は誰でもできることを魔法で作り出してしまおうということだ。想像という力を使ってどんなものを生み出すことができるのかは術者次第だろう。


 前世の記憶があるから、それを利用して私は色んな物を作り出せると思う。それこそ、普通では難しいこともこの魔法を使えば簡単にできるようになるかもしれない。


 とにかく、素材がある状態で創造魔法を使うとどうなるか試してみないことには分からない。無から有を生み出す創造魔法はとにかく魔力を使うから使い勝手は悪かった。だけど、今回は有から有を作り出す魔法だ。その辺が改善できればいいのだけれど。


 さて、まず何を作るかだけど……作りたくても作れなかったあの調味料、醤油を作ろうと思う。試行錯誤すれば自分でも作り出せそうだったんだけれど、上手くいかないかもしれなかったから作れなかった。


 醤油があればあんな料理やこんな料理を作り出せるのに、それができなくて歯がゆい思いをしていた。だけど、この創造魔法を使えば面倒くさい行程も一気に終わると思う。


 料理の幅を広げるためにも、ここで醤油を作っておきたい。必要な材料は大豆、小麦、塩だ。まず、大豆と小麦を作っておかないといけないね。


 分身魔法を使って、畑仕事だ。


 ◇


 必要な分の大豆と小麦を生産して収穫を終えた。今、テーブルの上には大豆、小麦、塩が乗っている。それとできた時に入れ物がないと大変だから、深い皿を置いておく。


 いよいよ、ここから創造魔法を使って醤油を作り出す。普通に創造魔法を使うとかなり魔力を消費することになったけど、今回は元となる素材がある。この素材があるだけで使用魔力量が抑え気味になってくれたら嬉しいんだけどな。


「よし、やろう」


 材料に手をかざして、創造魔法を発動させた。創造魔法に必要なのはイメージだ。醤油を作り出す工程を思い出しながら、イメージを固めていき、完成品を思い描く。


 すると、材料が光って一つにまとまっていく。そのまとまった物は置いておいた深い皿に入ると、光が収束していく。そして、光らなくなった後に深い皿の中を見た。


「あ、できてる!」


 深い皿には予想通りの黒い液体が並々と注がれていた。それに他の変化も見られた、使用した魔力が少ないということ。創造魔法を使ったのに、あの独特の脱力感がない。


 体に残った魔力を調べてみると、それほど使った印象はない。


「そうか、素材がある分魔力を使わなかったってことか」


 今までの創造魔法は素材も何もない状態から物を出現させていた。きっと物質を作り出すということに魔力を使っていたに違いない。だから、消費する魔力が多く必要だった。


 だけど、今回は目的の物を作るための素材があったから、その分の魔力を消費しなくてもすんだ。素材から物を作り出す工程にだけ魔力を消費することができたから、使用する魔力が少なく済んだ。


 なるほど、素材があると創造魔法って手軽に物を作れる魔法になるんだ。素材があれば使用する魔力も減り、一日に一回だけの創造魔法が沢山使えるようになる。


「あ、醤油の確認がまだだった」


 肝心の醤油の出来栄えを確認しなくっちゃ。深い皿になみなみと注がれている黒い液体に小指の先をつけて、それを舐める。


「これは醤油だ!」


 やった、本当に醤油ができちゃったよ。この創造魔法があれば、今まで作れなかったものが作れるようになる。材料があれば消費魔力が少なく済むし、材料がなければ魔力で出すこともできる。


 そうやって、臨機応変に使っていけば創造魔法はとても便利な魔法になるね。とりあえず、今日はこの醤油を使って料理を作ってみよう。


「作る料理は……照り焼きだ!」


 ◇


 パンとサラダを作り、メインディッシュの照り焼きを作る時が来た。竈に火を点けて、油を入れたフライパンを熱する。十分に熱すると、鳥の皮部分を下にして皮がパリパリになるまで焼く。


 皮がパリパリになるまで焼けると裏返しにして、反対側も焼いていく。全体に火が通ると、今度は味付けだ。醤油を垂らすと辺りに醤油のいい匂いが立ち込める。その醤油が蒸発する前に砂糖を入れて、煮詰めていく。


 本当は料理酒やみりんも欲しいところだけど、今日のところは無理だろう。また今度、魔力に余裕がある時に創造魔法で作っておきたい。今は醤油と砂糖だけで、照り焼きを作ろう。


 しばらく煮詰めていくと、醤油がトロミを帯びてきた。そこでフライパンを竈からおろし、キッチンカウンターに置く。まな板の上に焼いた鶏肉を移し、包丁で一口大に切り分けて皿に盛り付ける。


 三人分の鶏肉を切り終えると、今度はフライパンの中に余った照り焼きソースを肉の上にかけていく。甘じょっぱい匂いが食欲をそそる。こうして、鳥の照り焼きは完成した。


 ダイニングテーブルの上に置き、時間停止魔法をかけておいた。これでいつでも出来立ての美味しい照り焼きを食べることができるね。


 二人が帰ってくる前にキッチン周りの洗浄や片付けを済ましておく。全て片付け終わると、イスに座って二人が帰ってくるのを待った。しばらくすると、扉が開く。


「ただいまー!」

「ただいま帰りました」

「二人ともおかえり!」


 二人が帰ってきた! 私はイスから立ち上がり、二人に近づいた。すると、二人は不思議そうな顔をする。


「なんだか、初めて嗅ぐ匂いがあるぞ」

「そうですね、うっすらとではありますが」


 どうやら焼いた時に残っていた醤油の残り香に気づいたらしい。


「今日はね、新しい調味料を作って料理をしてみたんだ」

「新しい調味料作ったんですか?」

「香ばしくてちょっと甘い感じの匂いだな。どんな味か楽しみなんだぞ」

「絶対に気に入るから楽しみにしておいて。それじゃあ、洗浄魔法かけるね」


 二人の汚れを洗浄魔法で落とすと、二人は席に着いた。私も席に着くと、かけていた時間停止の魔法を解除する。とたんにパンの香ばしい匂いと照り焼きの匂いが充満した。


「おお、匂いが強くなった! なんだかよだれが出る匂いだな」

「これが新しい調味料の匂い……なんていう調味料なんですか?」

「醤油っていう調味料だよ」

「へー、醤油……ですか」

「いいから、早く食べようぜ! お腹がペコペコだぞ!」


 二人は照り焼きに興味津々だ。挨拶を終えると早速フォークを片手に、照り焼きを食べてみる。


「んっ! 美味い!」

「塩とは違う感じですね、美味しいです!」


 照り焼きを食べた二人はパァッと表情を明るくした。


「しょっぱいけど甘くて、これは病みつきになりそうなんだぞ」

「新しい味ですけど、馴染みやすい味ですね。こんな調味料があったなんて知りませんでした」

「この醤油を使って色んな料理を作れると思うの。だから、今後の料理にも期待してね」

「これとは違う料理も作れるのか! その時が楽しみだなー……でも今はこの料理を味わうぞ!」

「どんどん食べ進められますね。パンとの相性もいい感じで、気に入りました!」


 二人はパクパクと照り焼きを美味しそうに食べてくれた。私も食べると、甘じょっぱい味が口いっぱいに広がった。醤油のこの感じ、懐かしいなぁ。


 今日の食卓も賑やかに過ぎていった。

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― 新着の感想 ―
醤油から照り焼きにいくのは流石です。 次は味噌で、 椎茸を増やして乾燥させて出汁を引いて味噌汁や豚汁擬きですね。トンカツを作りバリエーションでミソカツに行くと1品増やせる。味醂まで行けば豚生姜焼きまで…
[一言] >本当は料理酒やみりんも欲しいところだけど、今日のところは無理だろう  米の酒は無理でも、焼酎ならいくつか作れそうですね。  芋焼酎、大豆の豆焼酎、本当は大麦みたいですが小麦でも多分出来そ…
[気になる点] 照り焼きだから濃い口醤油を作り出したと思いますが(ホントならみりんも欲しいとこ)、何種類かある醤油をピンポイントで作れたのか、ファンタジー世界らしく何にでも合う醤油なのか気になりますね…
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