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愛 二乗  作者: 花ゆき
高校生編
4/37

愛二乗=クリスマスは君と

 


「メリークリスマス!」


 笑顔で私の家の前に立つ彼。

 普段だったら嬉しいかもしれない。

 でも、いくらなんでもこれはない!!


「今の日時と時間を述べよ」

「12/24 23:06だね!」


 こうも無邪気に言われると腹が立つ。


「非常識だとは思わなかったの?」

「クリスマスは二人で迎えたかったんだけど、

 やっぱり迷惑だったよね」


 犬の耳が垂れる瞬間ってこんな感じだろうか。


「クリスマスにデートするでしょ?」


 すでにパジャマの私。夜風がきつい。


「クリスマスに最初に会うのは俺がいーの!」


 カウンターを思いっきりくらった。



「ばーか」


 彼のほっぺに手を伸ばし、軽くつねる。

 彼のほっぺたは冷え切っていた。


 彼はきょとんとしたが、笑いかける果穂子を見て

 安心したように笑った。



「メリークリスマス」


 冷えていた首もとがあったかくなった。

 マフラーだ。しかも手編み。


「部活で作ったんだ」


 誇らしげに笑う。


「普通女が作るものよね?」

「それって偏見だよ。

 誰だって大切な人に送りたい気持ちは一緒だから」


 先を歩いていた彼が振り返る。


「今は君があたたかそうにしてくれるのが、 幸せ」

 彼は街灯の下で笑っていた。



「もうっ!

 馬鹿ばかバカ、ばか!!」


 飛びついて怒鳴る。


「あんたっていつもそう!

 いいとこどりで、私の心をすぐ捕まえちゃう。

 悔しい…」


 おろおろしてた彼は私の背に手を回す。


「君を好きになってよかった。

 こんなに好きになれるなんて思わなかったから。

 君の心が俺にあるなら、俺の心は君が持ってるね」


 彼は自分の胸を指した後、私の胸を指した。




 体は既に冷え切っていたけれど、

 どうしてか寒くなかった。


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