中2のバレンタイン
辻褄がかみ合わないけど、記念です。
「ほほほほっ、彼女がいないからチョコがっぽりゲットね!」
「姉さん、そうやってプレッシャーかけるのやめて」
俺は重い気持ちで家を出る。
クラスでのクリスマスパーティ、出るんじゃなかった。
『大君くん……』
平田さんの声が蘇る。
俺はその声にとらわれて、平田さんのことしか考えられなくなった。
これは困った事態だ。
おかげで新年早々彼女に振られてしまった。
俺って彼氏としてはダメダメなのかな。
どの彼女とも長続きしない。
「お"は"よう"」
すっごいガラガラ声で平田さんが挨拶する。
「おはよう」
「元気ないねー。風邪?」
「そういう平田さんこそ」
「夜遅くまでテスト勉強してたら風邪ひいたみたい」
ずずっと鼻をすする。
平田さんの手が少し震えていた。
寒そうだな。
「平田さん、マフラーあげる」
断られるには分かるから、無理やり平田さんの首に巻きつける。
「そんな、悪いよ。大君くんが寒いでしょ?」
「いいって」
それでも考え込む平田さん。
「あ、じゃあこれ、お礼にあげる」
取り出したのは一つののど飴。
「それで元気出してね!」
笑って元気よく下駄箱に向かう平田さん。
俺はそれを見てのど飴を口に放り込む。
すぅーっとしてチョコとは違って全然甘くない。
それでも俺は妙に嬉しかった。
昼休み、俺は屋上に呼び出される。
「大君くん、チョコもらって!」
勢いよく出された包装紙に包まれたチョコ。
それは受け取ってもらえると分かっているからだろう。
でも、今年は違う。
「ごめんね」
「なんで、どうして!?
去年は彼女がいるから受け取ってもらえなかったのは分かるよ?
でも、今年は彼女いないじゃない!
女の子が告白したら断らない、優しい大君くんでしょ!?
どうしてっ!!」
苦しい。
彼女を見ているのが苦しい。
なら受け取ればいいじゃないかと心の声が言う。
でもそれじゃ駄目だ。
「俺は今まで付き合ってきたどの彼女とも長続きしなかったよ。
振られる時はいつも決まってこのセリフ。
『大君くんは私のこと見てくれないのね』
そう、最近気づいたことなんだけど、確かに俺は一人しか見てなかった。
彼女達に失礼なことしてたんだ」
「それって平田さんだよね。
朝、見てたんだぁ……」
潤ませた目を拭う。
そしてにっこり笑った。
「応援してるよ、頑張って!!」
今年のチョコ0。
家に帰ったら姉に怒られました。
でも俺は満足してる。




