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愛 二乗  作者: 花ゆき
中学生編
36/37

中3のバレンタイン

 


 中3、冬2月。


「1192年」

「いい国作ろう鎌倉幕府」

「645年」

「えっ!?ちょっと待ってよ、えっーと」

「大化の改新」




 今高校受験中です。

 どうしても大君くんと一緒の高校に行きたいから。

 同じ高校を目指すことを大君くんに伝えたら、彼が勉強を教えてくれることに。


「ほぉー、頑張ってるねぇ。

 やっぱり果穂子には無理なんじゃない?県内1の高校なんて」


「くぅっ、その余裕ぶりがムカつく!」

「ふふ~ん。推薦入試で早々に進路決めたからね」


「平田さん、そろそろ勉強再開しないと、やばいよ?

 入試が近いんだから」

「はい、先生……」


 現実は厳しい。




「日曜も勉強だね」

「はーい……」





「へー、あんた達日曜日も勉強?」

「もう勉強嫌だー」


 げんなりする果穂子を横目に携帯を開く皐月。

 携帯のカレンダーには日曜日は2/14となっている。

 その事実にニヤリとする皐月。


「大君くんも考えたわね」





 日曜日、図書館で勉強する二人。

 と言っても一方は教える役である。


「今日はこれで終わりにしようか」

「やっと終わったー」


 窓から見える景色はもう夕暮れになっていた。


「じゃあどこに行く?」

「へ?」


 大君は笑って言った。


「勉強はこれで終わり。これからはデート。

 最近デート出来なかったからね」


 私の不満がよく分かってる。

 そんなに顔に出てたかな?


 ていうかね、大君くん女心掴みすぎだよ。

 でもそんな彼だから好きなのです。





 まずは夕食を食べることになった私達。

 手身近なファミレスに入って食事。



 なんだけど。



「あのー、大君くん。そんなにじろじろ見られるとご飯が食べられません」

「ああごめん。そんなに見てた?」


 ええ、目線が痛くて、いや熱くてろくに箸が進みませんよ。

 ニコニコしながら見てる。

 恥ずかしいっ!


 大君くんの質問には答えず話をそらす。

 本音は言えないから、ね。




「ごめんね、私が食べるの遅いから暇なんでしょ?」


 だから見てるんだよね。


「ハズレ。面白いから見てるんだ」

「お、面白い!?」


 大君くん、それは女の子には言っちゃいけないと思う。

 というか私も女の子。


「平田さんおいしそうに食べるから。

 こんな子と家庭を持ったらきっとご飯がおいしいだろうなぁって」


 訂正。大君くんは大君くんでした。




「で、でも私お菓子だけは壊滅的に駄目なんだよ。

 だから私の将来の旦那さんは苦労するだろうなー」


「俺がお菓子作るから大丈夫。

 それに平田さんの作るものならなんでも食べたい」


 暖房の効きすぎなんかじゃない。

 確実に頬が赤くなってる。


「私の将来の旦那さん希望?」


「あ、気がつかなかった。恥ずかしいな。

 うん。希望します」


 頬が熱い。

 前が見られない。

 でも、言わなきゃ!




「わ、私もき、きききぼっ「ハッピ~バレンタイン~!」


 ファミレスの店員さんがチョコレートケーキを持ってにっこりと立っていた。


「バレンタインカップル企画で当店にいらっしゃったカップルのお客さまに無料でチョコレートケーキをお出ししています」


 コト、と置かれるケーキ。

 チョコレートがふんだんに使われてておいしそう。

 ところで。


「バレンタインってなに?」




 ああやっぱり知らなかったんだ。

 大君はショックを受けつつも納得した。


 店員が慌てた様子でバレンタインを教えている。


「聖バレンティヌスが由来なんだ。

 へぇー。その信念気に入った。

 お悔やみ申し上げると共に天国で安らかに眠って欲しいものね」


 ね、大君くんとばかりに俺を見る平田さん。


 えーーーー!?

 いや、違うでしょ。

 何か忘れてるでしょ。

 ほら、恋人達が愛し合う日なんだからさ。

 チョコとかチョコとかチョコとか……何かないの!?


「どうしたの?大君くん」

「いや、何でも……」


 平田さんからのチョコは諦めるしかなさそうです。





 それからいろいろと店を見て回った。

 けれど平田さんはどこか上の空だ。

 何かマズイことしたかな。

 時々彼女は何か言いたそうにこちらを見て、言うのを止めるのだ。

 そして帰り道、やっと彼女は口を開いた。


「あ、あのっ!」

「うん」

「わわわわ私もっ」

「うん」

「きききききぼっ、希望するから!」


 ここまで言われてようやく分かった。

 彼女がもの言いたそうに見ていたのはずっとこれで。

 それを言うためにずっとタイミングを見計らってたんだ。


 これだから平田さんは可愛い。

 俺だけしか知らない特権。

 そんな彼女に俺は夢中。


「俺のお嫁さんを?」


 わざとらしく聞いてみる。

 かぁっと顔を赤くしながらも頷く平田さん。

 可愛いなぁ。


 だがそれだけではなかった。

 平田さんは俺に近づき、背伸びをする。

 かすかに触れる唇。


「え?」

「……今日のお礼」


 彼女から初めて俺にキスをした。

 彼女と触れた唇だけ別空間にいるみたいで。

 残るのはチョコよりも甘い余韻。


「もう家近いから。じゃあね!」


 走っていく平田さん。

 恥ずかしさから逃げているみたいだった。


 チョコはもらえなくてもそれ以上のものをもらったかな。

 そう思う大君であった。




 おまけ

 ~もだえる雪哉~


 それはバレンタイン前の事。


「あー、デートしたい!!」


 自宅で枕をかかえごろごろする雪哉。


「邪魔。うっとおしい」

「ひどっ!!」

「つうか、その姿見たら彼女幻滅するでしょうね」

「だから家で叫んでるんじゃないか。平田さんーー!!デートしよーー!」


「う・る・さ・い!デートしたいならすれば?」

「でも平田さんの勉強優先だし……」

「うじうじするな!それならご褒美ってことでデートすれば?あんたの株も上がるわよ~」


 うっしっしっと笑う姉。

 しかしあくまでも世間一般では美女。


「よし、じゃあバレンタイン決行だ!」

「うわ~、去年もらえなかったのが相当ショックだったのね」

「う、うるさい!」



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