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愛 二乗  作者: 花ゆき
中学生編
25/37

愛二乗=白紙

 


『好きな子の水着なら、何でもいいよ。その子が着てこそ、だし』


「好きな子の水着なら、ね。お前のその言葉、言い聞かせてるように聞こえる。

 好きにならなきゃいけない。これは義務だって」


 啓一は誰もいない放課後にそう言った。

 実際そうだ。俺は彼女を好きにならなきゃいけない。


「本当に好きになったらそんなこと言えなくなるはずだ。

 お前にとって、好きだから、なんていい訳でしかない。

 感情がついてきてないんだよ」


 俺の親友は全て見破っていた。

 ムキになった俺は彼女と過ごす時間を増やす。

 ……好きにならなきゃ。







「え、クラスで海行くんですか?

 私も行きたいです」


「でもクラスの集まりだからなー」


 暗に駄目だろうと伝える。


「先輩の彼女だから、では駄目ですか?」


 “彼女”。

 その言葉が俺を鎖で絡み取った。


「そうだね。彼女なんだし、いいかな」


 “彼女”という言葉は俺を見動き出来なくする。







「大君くんの馬鹿!大嫌い!!」


 どうして嫌いなんて言われるのだろう。

 俺、何かしたかな。

 女子の中で平田さんとは結構仲良いと思ってたけど。


 そのことばかり考えて、隣に彼女がいることを忘れていた。







「別れましょう」


 だから夏休みに入って呼び出された時、何を言われたのか分からなかった。


 今回俺は何も悪いことをしていないはずだ。

 喧嘩も何もしていない。


「これで私と先輩はただの先輩後輩の仲に戻りました。

 けれど私は先輩が好きです。

 そんな私を知って下さい、好きになって下さい」


 後ろからざっと土を踏みしめる音がする。

 平田さんがいた。




「「これは私と平田先輩(彼女)からの宣戦布告」」



 意味が全く分からなかった。


「私大君くんが好き」


 心が一気に軽くなる。

 嫌われてはいない?

 けれど人は歳をとるごとに慎重になるものだ。


「海では嫌いって……」


「うん、あの時はごめん。

 本当はすごく好きで、どうしたらいいか分からなかった。

 でも大君くんがいいから。

 彼女がいてもいなくても、大君くん、がいい。

 彼女がいないから、なんて理由で選ばないで。

 ちゃんとどちらかを選んで」



 だから宣戦布告。

 果穂子たちは大君の逃げを知っていた。

 だから一度白紙に戻した。

 その上で選んでもらおうと言うものだ。


「大君くんには私達をちゃんと知って欲しい。

 その上で答えを出して」







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