表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚に巻き込まれましたが、せっかくなので異世界を楽しみたいと思います  作者: kyo
第2章 自由時間の過ごし方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/169

76話 罠

訪れてくださり、ありがとうございます。

2章も、この話を含め、あと3話となりました。

この話からメンタル下降が始まり、3章に持ち越されます。

2章を終えましたら、少しの間、更新をストップいたしますので、

あまりよろしくない精神状態ままの放置となります。

1話目は3章のプロローグ的な話で、もう大丈夫だと思うのですが、

物語が動き出すのは3章の2話目からになります。

人により基準は違うと思いますので、なんとも言えませんが;

メンタル下降ままストップしますので、

そういう展開が苦手な方は、どうぞお気をつけくださいませm(_ _)m。

 しばらく歩いてから、探索に影のキーワードをつけて、辺りをうかがう。

 よし、ついて来ていない。


 マジックバッグを呼び寄せる。

 わたしは竹で作ったコップを出して、水魔法で水を注いだ。ちなみに水魔法を使えるのでいらないと言えばいらないのだけど、竹の水筒をわたしの分を作ってもらった。コップが欲しくなり竹でセットのようにコップも作ったら、それもいいということで、こちらはみんなの分も作ることになった。


 木の根に座り込む。

 ん?

 バッグの様子がいつもと違う。わたしが出し入れするとバッグの中の亜空間に自然と入っていくので、手前に何かあるのはおかしいのだ。


 !

 メイの宝物の四つ葉のクローバーと、クリスとベルンの宝物の川底で見つけたガラスのような透明の石だ。わたしがバッグを引き寄せられるって覚えてたんだ。それで一番の宝物をくれたんだ。笑みがもれる。いつか見た光景が唐突に蘇る。


 川で遊んでいた時、踏ん張りがきかなくて、片足だけ川に突っ込んじゃって情けない顔したベルンの顔。その水が跳ねて、顔に飛んできた水が冷たかった。クリスが笑って、メイがはしゃいだ。みんなで笑って見上げた空が真っ青だった。

 ご飯を作るのは生きていくのに必要事項だからと、みんなの当番制にした。みんななぜか調味料を味見したがって、お醤油に決まってスゴイ顔をしてむせた。わたしとチャーリーは肩を竦めて苦笑した。

 みんなで遊ぶのは純粋に楽しかった。鬼ごっこをして、わたしはすぐにリタイヤするけど、火照った体にしんどい呼吸を整えている時、見上げる空は高く感じた。

 帰りが遅い子がいると、なぜかみんなアジト前に集合しちゃって、その誰かが夕焼けをバックに現れると安心した。その時の夕日はなぜか大きく感じて、なんだか怖くなった。

 森に入れば、よく魔物をやり過ごすのに地面にへばりついた。草とかが顔に触れてくしゃみを我慢するのが大変だった。むくっと起き上がっては、みんなで顔を見合わせて安堵の息をついた。

 お風呂の後に、みんなで見上げた夜空が、あまりにキレイで、みんなで声もなく星を見続けた。

 わたしは空を見るたびに、川の水の冷たさを感じるたびに、料理するたびに、森に入るたびに、星を見上げるたびに、あの瞬間たちを思い出すんだろう。

 嬉しいのと淋しいのと辛いのがごちゃ混ぜになった感情で胸が苦しい。嬉しいが一番なのに、なんでこんなに苦しくなるんだろう。目からはボロボロと出てきて止まらないし。止まらなくて苦しい。


 みんなはわたしのプレゼントを受け取ってくれたかな?

 挨拶せずに飛び出してきてしまったことを怒っているだろうか?

 ……もう会えないのかな。

 いや、そんなことない。確かに成長してしまったらしばらくは会えないけど、20代真ん中ぐらいで、わたしの成長は普通になるはずだ。みんながそれぐらいになったら、そしたら会える。場所は知っているんだから、わたしが会いに行けばいい。10年以上会えないのは、長すぎるけど、永遠に会えないよりは、はるかにいい。


 久しぶりのひとりの行動はものすごく淋しかった。テントでひとりで眠るのも、なかなか寝付けない。なんなら団子になってみんなで固まって眠るのでさえ、うらやましく思うほどだ。


 朝が来て、また歩き出す。見たことのある三又に出くわした。

 ああ、ここで道を間違えたのか。

 ここで道を間違わずにいたら、みんなに会えなかったのか。

 そう思えば、自分の残念なところも、少しは慰められる気がした。

 地図をチェックして、レイザーへの道を確かめる。

 よし、こっちだ。



 人がいるなぁと思っていると。

 なんでこんなところに第二王子が? 目の前にいるのはアルバーレンの第二王子、わたしに見てくれの悪い脂ののったババァと評した奴だった。

 周りの空気が無駄にキラキラしている。お城と比べたらずいぶんラフな格好をしているけれど、高貴さは隠しきれてない。


 元の世界だと、王族や偉い人が外国へ行くときは、護衛がつき、受け入れるべき国側も歓待やら安全確保などでものすごいことになるから、王族などは外国へ行きにくいと思っていた。

 ところがどっこい、こちらは王子たちが国を跨いで闊歩している。おかしいだろう、と思う。それに今、アルバーレンは聖女召喚の魔術を盗もうとする輩で大変なのではなかったか?


「お前、一人か?」


 わたしはごくんと喉を鳴らした。わたしもあんたに言いたい。王子がこんなところにひとりでいていいのか?


「そうですけど、なんでですか?」


 軽装だし、王子って掲げているわけではないから、知らんふりするのが定石なはず。


「この先は祠だぞ? 祠を見に来たのか?」


「……はい」


「なんだってまた?」


「不思議な景色に興味があって」


 第二王子はわたしを頭のてっぺんから足の先までじっくりと見る。


「……そうか。案内してやる」


「結構です」


「遠慮すんな。警戒してるのか? 高貴な存在だぞ。お前を害したりしない」


 いや、そうじゃなくて、ただアルバーレンと関わりたくないだけなんだけど。



 第二王子はおしゃべりだった。

 子供相手に自分の近況を話してくる。

 ここにいるのはお兄さんを手伝ってのことらしい。自分が如何に兄から頼られ、できる存在なのかを得々と語ってくる。心底、どうでもいいんだが。


「こんなところにいるのが、何の手伝いになるんですか?」


 わたしは疑問を口にする。


「まぁ、本当のことをいうと、これは罰なんだ、兄から課せられた」


「罰、ですか?」


「私の言動で人を傷つけたから、反省してこいと言われてな。最愛の人から離されて、こんな僻地に飛ばされたんだ」


 コイツはうっかりしてそうだもんな。いい気味だ。


「僻地で何をしているんですか?」


「数えてる」


「数えてる?」


「お前が来てくれてよかったよ。暇で暇でしかたなかったんだ」


 高貴な人が考えることはわからん。王族の罰はよくわからなかった。


 あ、でも聞いたことがある。人は自分のやったことが無意味だと知るとかなりのダメージを受ける。無意味だと知りながらも生命維持のためにやるしかない状況にする罰があったとか。例えば重い荷物をいっぱい、A地点からB地点に運ばせる。監視者がいて手を抜くこともできないし、落とすとか何かあったら食事抜きとか罰せられる。やっとのことでB地点に運び終わると、それを全てA地点に戻させる。全く意味のない労力の提供は、何より心を蝕むそうだ。くわばらくわばら。

 だから第二王子も何か無意味なものを数えさせられているのかもね。肉体労働も嫌だけど、豆を数えさせられるとかもイヤかも。第一王子は無駄なことは嫌いそうに見えたけど。



 一度、休憩を入れて、自分は疲れやすいので度々休んでから行くから、好きにどこへでも行ってくれと含ませて言ってみたが、通じなくて一緒に座り込まれた。お腹が空いたのでおにぎりを食べようとしたら、隣でお腹を鳴らすので、食べますか?と社交辞令で聞いてみたところ、嬉しそうに頷く。庶民のもの食べられるのかな?と見ていれば、おいしそうに頬張った。これはなんという食べ物だ?と聞くから、おにぎりだと答えた。高貴な人は食べ方が上品だ。かぶりつくんでも、きれいに食べている。これはおいしいと評価は上々。そうだろう、そうだろう。ちょっと気分が良くなったので、水も飲むかとコップを出してみれば、水筒とコップに感心された。


 また歩き出すと、王子はさらにヒートアップだ。いい聞き役を手に入れたと思ったのか、ベラベラベラベラ。アルバーレンは聖女召喚のことで大変なのではと思っているのは周りだけで、案外中はそんなことはないのかもしれない。王子は罰を受ける前は、聖女ちゃんの補佐係みたいな役目を請け負っていたみたいだ。王子と聖女だと知らなければ、ただ新人を補佐している人の独り言をボロボロと溢している。その新人さんが最愛の人らしい。


「とても可愛いし、とてもしっかりしていて、可愛いんだが」


 可愛い2回言った。聖女ちゃんにメロメロなんだね。


「彼女はいっぱいの恋をして、その中から伴侶を選ぶというんだ」


「いっぱいってどれくらい?」


「私を含め、7人の男が彼女を慕っている」


 聖女ちゃん、やるなぁ。それって、逆ハーってやつなんじゃないの?


「どう思う?」


「お兄さん、言いたくないですけど、子供にそんな相談持ちかけるところで、アウトです」


「アウトって?」


「ダメダメってことです」


「ダメダメかー」


 頭を抱え込んでいる。

 ちょっといじめすぎたか。でもわたしに暴言を吐いた因果応報だ。謹んで受けたまえ。


「そのお姉さんはなんでいっぱい恋をしたいんですかね?」


「さぁ」


「恋はしたくてできるものじゃないと思いますよ。いつの間にかしているものです」


「お前、本当に私より年下か??」


「って、近所のねーちゃんが言ってました」


「あ、そうか。うん、そうかもな」


「お前、兄妹は?」


「姉がいます」


「私には兄がいる。すっごくいい人なのに誤解されやすくて。……母親が違くてさ。母は私を大事にしたくて、兄にすっごく冷たく当たってたんだよな。私は兄を大好きだけど、そんな弟いやだよなぁ」


 見る限り、王子はロダン王子を嫌ってはなかったと思うけど。


「なんだよ、慰めないのかよ?」


「慰めて欲しいんですか? こんな子供に?」


 ちぇっと口を尖らせている。


「お兄さんはそのお姉さんが好きってことを伝えたんですか?」


「ああ、もちろん会うたびに伝えてるぞ」


 軽薄な感じで言ってないといいけど。


「お兄さんはお姉さんとどんなふうになりたいんですか?」


「彼女はこの世界のために全てを捨ててきてくれた恩人だ。そんな彼女が不自由ないよう、好きに生きられるよう共に在りたい」


 おまけのわたしも同じ目にあってるんだけどね。一度くらい攻撃してやりたいと思ったけれど、聖女ちゃんは大切にしているようだから、(ほこ)をおろそう。


「……恩人じゃなかったら、共に在りたくないんですか?」


「?」


聖女(おんじん)じゃなかったら好きじゃないんですか?」


「…いや、恩人じゃなくても、彼女の考え方は好ましく、人を明るくさせる話し方は元気になれて。……笑った顔が好きだ。だから、いつも笑っていて欲しいと思う」


「それがお兄さんの答え、ですね」


 聖女だから、恩人だから好きと言われて、喜べる人は少ないだろう。


 ロダン王子はここまで言ってあげたのに、まだピンときてないみたいだ。


「お兄さんはお姉さんから恩人だから一緒にいると言われて、嬉しいですか?」


 王子は少し考えて「あ」と言った。


 聖女は聖女で、その能力故に好かれたのかと疑わずにいられない責を負ったんだ。それもしんどいね。


「お前、本当、年下に思えないな」


 ええ、その通り。あんたの親より上だよ。心の中で呟く。


「ここに来た者のことは全員報告しなくちゃいけないんだけど。性別も歳も、ありえないしな。よし、お前のことは黙っててやる」


 ?


 頭を強引に撫でられる。髪の毛がぐしゃぐしゃになった気がしたので、抗議する。


「何するんですか?」


「そんな態度とっていいのか? いいこと教えてやろうと思ったのに」


 ?


 王子はニコッと笑った。


「この先に行っても無駄だぞ。これはどっしりしたおばさん、じゃなかった、気の毒なおまけの女性をおびき寄せるための罠で、そんな景色は見えないんだ」


 嘘。


 一歩、二歩。だんだん早足になって、ついにわたしは走り出していた。


「おい!」


 背中に呼びかけられたが、そんなことはどうでもいい。

読んでくださって、ありがとうございます。


211009>景気→景色

誤字報告、ありがとうございましたm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] まあ、どう考えてもやたら明細な噂だし、転移者を釣る罠だとは思ってた…… 自分が噂を作る側に回った時に気付くかと思ったけど、本人が言うところのヌケサクぶりは、本当にハラハラして胃に悪い!
[一言] 待ってます!お待ちしてます! また執筆たくなったら お願いします(*´・ω・)(・ω・`*)ネー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ