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召喚に巻き込まれましたが、せっかくなので異世界を楽しみたいと思います  作者: kyo
せっかく異世界、後日譚:里帰り編

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里帰り編7 実家に帰らせていただきます④歓迎会

 乾杯はぶどうジュースだ。みんなのコップについでまわった。チャーリーからビュッフェスタイルの食べ方の説明があり、トーマスが乾杯の音頭をとった。


 なんでパーティーなの?という問いかけに「ティアの歓迎会だ」と告げる。みんなふぅんと頷いたが、ひとりだけ異議を唱える。


「ちょっと、おかしくないか?」


「ん? 何がだ?」


「貴族の嫁さんなんだろ? みんな目を見て話すし、名前だって呼びつけてる。そんなことしていいのかよ?」


 案外鋭いね、このトニーって子。


「よく気づいたな。みんな覚えとけ。平民が貴族に話しかけたり、名前を呼んだりしたら、普通は首が飛ぶ。だからとにかく貴族は避けろ。ただ、このスラムにおいて、何人か話していい貴族がいる。そのうち一人は竜侯爵サマだ。帝国に行った時に知り合ったんだが、その縁でよくしてもらっている。失礼な態度はとっちゃまずいが、侯爵サマは信じていい。その嫁さんのティアもだ。それからなんで名前で呼んでいるかだったな。それは俺が勝負に勝ったからだ。会ってすぐに勝負を挑まれてな、勝負に勝ったから、俺たちはこいつの兄貴分になった。だから、俺たちはこいつに兄貴のように接する。勝負のことを知らない奴は、ティアの弟と妹だ。ティアさんとかティアお姉ちゃんとか呼べ。こいつの兄貴になっていいのは俺たちだけだ。わかったな」


 大ボスとなんの勝負をしたか聞かれたけど、秘密と言ってその場をしのいだ。

 パーティーは楽しいものだった。みんなモリっと食べてくれて、おいしーと頬に手をやっている。

 わたしはクーとミミのご飯プレートを作って隅に置いて、クーたちに食べさせる。もうひとつお皿を作って、仕切りの外に出て、小声でルークさんを呼んだ。

 飛び降りてきたルークさんにお皿を渡す。


「携帯食を持っているので、お気になさらず」


と言われたが、押し付けた。


 メイのわたしを呼ぶ声がしたので中に戻る。

 シチューも評判がいい。ふわふわパンは初めて食べた子もいて、すっごい勢いで口に詰め込むので、つまらせないか心配になった。

 まだ来たばかりの子たちから感想は聞こえてこないが、勢いよく食べてくれているので、口に合っているんだろう。

 最後に焼きリンゴンにアイスをトッピングしたものを配ると、シーンとなるほど夢中に食べてくれた。おいしかったようだ。


 みんなで片付けをして、今日だけはみんなでアジトで丸くなって眠ることにした。いつもは男女で仕切りをし分けているそうなので、これは特別なことだそうだ。頭を突き合わせるようにして円になり、眠る場所を確保する。真ん中には夜光虫のカンテラだ。わたしの隣はメイとビスちゃん。

 小さい子からどんどん眠っていき、初期メンバーが残った。クーとミミも籠の中で夢の中だ。小さい子を起こしちゃうのもなんなので、起きているみんなで集まる。近況をきいた。


 メイは頑張って目を開けていたけれど、途中で眠ってしまった。


 10歳未満のリーダーはベルンで、副リーダーがメイだそうだ。主に畑の世話を頑張っている。ベルンは文字や計算など教えてあげる先生役でもあるらしい。教会の学び舎で何年もかけて履修することをベルンは短期間でマスターしたそうだ。ただその後も教会の掃除の手伝いへは赴き、幼いながらも今度は教える側として活躍しているそうだ。


 クリスは外に出ていろんな仕事の手伝いをするのが楽しいそうだ。そしてみんなの癒しキャラになっているように思う。何をしていても楽しそうでニコニコしているからか、大人からも可愛がられているみたいだ。時々吹いているハーモニアの曲は、クリスが作ったものらしい。明日聞かせてくれるというから楽しみだ。


 ホセは大工のサルベさんに本気で弟子入りしたんだって。棚づくりとかなら、もうひとりでも作っていい許可が下りているそうだ。それはかなり認められているってことだと思う。サルベさんから書類などの作り方も習っていて、手続きの書類などでは分野が違ってもトーマスの手伝いができるほどわかっているのだとか。


 リックは洗濯道を極めつつあるとみた。風魔法を使える子やちびちゃんを連れて洗濯の日々らしい。一度竜人さんに連れていってもらった国でアイロンを見てから、それもできるようになりたいと思って、アイロンを買ったそうだ。アイロンを使うようになってから『お店』の顧客ができて、まずまずの利益が出ている。テーブルクロスや料理人の服や帽子なんかはアイロンでピシッとさせるとウケがいいらしい。


 チャーリーは総料理長だ。食堂の料理長であり、みんなの毎日のご飯も統括している。


 ルシーラは変わらず、与えられた仕事を的確にこなしているらしい。


 エバンスは14歳以下のボスだ。森に行きたい子を引き連れて毎日のように行き、稼ぎ頭であるらしい。冒険者ギルドにも登録して、着実にレベルをあげている。


 ケイは美少年になった。その容姿はお姉様方に可愛がられているようだ。かっこいいではなく、かわいいと言われているので、みんな嫌じゃないの?と心配しているようだが、その答えは意外に大人だった。自分を可愛いっと言ってくる女の子たちを、可愛らしいなと思っているようだ。


 ブラウンのことを聞くと商人ギルドの人に連れられて、外国にもよく行っているそうだ。いろんなことを吸収して帰ってきては、スラムを発展させるために動き回っているらしい。


 ナッシュも淡々と仕事をこなしているそうだ。いつもどこかしらにあった小さな傷は見当たらず、それにとっても安心した。


 カルランは居酒屋の給仕をよく手伝っているという。酔っ払いのいろんな話が聞けて楽しいのだとか。色っぽいお姉さんたちも、チップを払ってでも話をきいて〜とやってくるらしい。


 マッケンとソングクは指名の仕事が多くて、てんやわんやなのだとか。でもふたりとも眩しいくらいに自信がついた顔つきだ。


 アルスは大ボスのトーマスの補佐で、主に権力ある人たちからのなんやかんやをこなしているらしい。口調は柔らかいし、絶対に偉ぶったりしないが、それでいて譲らないところはそうできるので、みんなアルスに丸投げらしい。


 トーマスは見ての通りの大ボスで、だからか、休暇をとった時のことを話してくれた。

 他の子は休みを一斉にではなくてもとることはできるが大ボスには休みがない。それで強制的に休みを作ることにしたそうだ。スラムにいると休めないだろうから、竜人さんにお願いして、どこかに連れて行ってくれとみんなで頼んだらしい。その場所が大陸違いの外国だったそうだ。南のホロラルド大陸のカンプスという国だった。大陸は温暖で、行ったのは夏前だったのに、かなり暑かったらしい。トーマスとアルスは帝国の帰りの船旅の間、暇だったので帝国語を学ぶ時間としたらしい。ギルマスに習ったんだとか。ホロラルド大陸の公共語は帝国とほぼ同じらしく、それなので、ホロラルドでも完璧ではなかったが、なんとか聞き取ることができたそうだ。そこでオーデリアの貴族の坊ちゃんと会い、彼も帝国語がなんとかぐらいのレベルだったので、意気投合して補い合っていたんだって。

 王はいない共和制の国で、国民が自分たちで考え、自分たちで国を作っていたという。そのことに深く感銘を受けたようで、わかりやすく興奮していた。

 どうしても意見が割れる時は、馬に決めさせるとかで、え? どういうこと? それで大丈夫なの? とわたしは思ったが、その寛容さも含めてトーマスは感激したらしい。

 いつもみんなのトップということで、自分の感情は後回しにしていたトーマスから見えた、年相応の目の輝きにみんなが嬉しくなっている。


 急にカルランが噴き出して、移ったようにみんな笑いだす。

 アルスがみんなが起きちゃうからと注意を促す。


「何、どうしたの?」


「いや、思い出しちゃってさ」


 カルランがヒーヒー笑って言う。


「そこの住民がさ、暑いから腰蓑で暮らしてたそうでさ。こいつ、土産に腰蓑買ってきたんだ」


「……向こうで見た時はイカしてるって思ったんだよ」


 少し顔を赤くしてトーマスが言う。それを受けてカルランが真剣な顔をする。


「お前、女に贈り物をする時は、絶対ひとりで選ぶなよ。誰かの意見を聞くんだぞ」


「うん、そうするべきだ」


「大ボスのセンスやばい」


 言いたい放題だと思うが、オーデリアで腰蓑はちょっと使いづらいかもね。


「女性の意見を聞こう。ティアも腰蓑は困るだろう?」


 カルランに指名された。


「確かに日常には使えないかもしれないけど、贈り物はさ、それを選ぶのに自分に使ってくれた時間だから、考えてくれたことだから、微妙だったりなんだの感想は持つと思うし、使えなかったりするかもしれないけど、その時間と思いは嬉しいと思うよ」


「贈り物はなんでも嬉しい?」


 ナッシュに聞かれて、サラちゃんに何か考えてるのか?と思いながら頷く。


「うん。それがたとえどんなものでも、相手が自分を思ってくれていることと、それに時間を使ってくれたことは、嬉しいことだと思う」


「お前それ、きれいにまとめすぎ」


 わかっていてだろうけど、カルランからツッコミが入る。


「じゃぁお前、腰蓑使うか?」


「だから使えなかったりするかもってちゃんと言ったじゃん」


「やっぱ、困るんじゃん」


「使えないだけで、きっと嬉しいよ」


「じゃあ、やる」


「それは、いいよ」


「ほら困るんじゃん」


 みんな爆笑だ。


「お前らなー」


 トーマスが抗議の声をあげた。

 そしてわたしたちはお互いに「しー」っと寝ている子たちを起こさないようにとしながらも、こみ上げてくる笑いをどうすることもできなかった。


 わたしのことも聞かれたので、牧場のことを話した。みんな行きたいと言ってくれるので、一度には無理だろうけど、家族はいつでも遊びに来てくれたら歓迎する旨を伝えた。10人ぐらいまでなら泊まる部屋のあることも。


 3年ぶりのブランクは感じず、別れたのは昨日ことだったかのような気さえする。それなのに、みんなが大きく成長していて、それがチグハグでなんだか不思議だ。って、見た目ではわたしが一番成長しているんだけどさ。


 昔みたいにメイを抱きしめて眠ると、深くぐっすりと眠ることができた。朝こんなに爽やかにぱっちりと目を開けられたのも、ずいぶん久しぶりのことのような気がする。

お読みくださり、ありがとうございます。


220112>意義→異議

誤字報告、ありがとうございましたm(_ _)m


240727>分野が違くっても→分野が違っても

適切に、ありがとうございましたm(_ _)m


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