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召喚に巻き込まれましたが、せっかくなので異世界を楽しみたいと思います  作者: kyo
第1章 居場所を求めて

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14話 保護者⑤嘘をつきたくないのは嘘じゃない

 陽の入ってくる宿のベッドの上で、モードさんに確認される。

「お前の、付与じゃないよな?」

 わざとらしく首を傾げる。モードさんは騙されない。


「お前、絶対人前で使うなよ。規格外すぎる。お前みたいな魔力の使い方は聞いたことがない。それでいて、価値がありすぎる。貴族や王族、悪い奴らに目をつけられたら、一生囲われるぞ」


「モードしゃん以外の人の前じゃやらないから、平気でしゅ」

「そうか?」

 疑いの目を向けられている気がする。


「バッグ使ってみましゅたか?」

 モードさんはなぜだか困ったように笑って、わたしの頭を撫でた。

「お前、すごいな。ありがとう」

「いいえ、いりゃいりょうでしゅから。でももっと大きくしゅるつもりだったのに、ドーム30個分ぐらいで魔力が尽きたでしゅ」


「ドームってなんだ?」

 あ、いけね。

「この街の半分ぐりゃいの大きさの建物で、バッグはこの街が15個分ぐらい入りましゅ」

「でかいな」

 ふふふ、モードさんの笑顔いただきました! ちょっと引きつっているけど。頑張った甲斐がありました。本当は100個分と思ってたんだけどね、残念。


「なぁ、付与以外でお前ができるというのは本当に錬金術か?」

 モードさんはわたしの顔を見て察知したみたい。

「お前、錬金術を習え。錬金術に似せて魔力使え」

 ん、確かに一理ある。もどきだからな。目をつけられても困るし。


「元々そのつもりでしゅ。ポーション作りたいんでしゅ」

「ポーションか、ポーションぐらいならまあ、大丈夫か。マジックバッグは売るなら1回にしとけ。それもお前が作ったんじゃなくて、もらって、それだけしかないことにして」

 現品限りか。確かにまだ出てくると思うと、金ヅルにされてしまいそうだ。


「それと、しばらく魔力使うのやめとけ」

「どーしゅて?」

「魔力ゼロになると生命力を食うんだ。気絶したから、生命力がゼロになるまで魔力を使わずにすんだだけなんだぞ。魔力が戻っていてもしばらくやめとけ」

 ふぁ、魔力枯渇なのに使い続けようとすると死ぬってことか。知らんかった。こわっ。


「でも、早く何か作って売ってお金にしゅないと」

 わたし、生きていけない。


「こんな凄いバッグもらっちまったからな、この報酬に見合った上位ランクに恥じない仕事をする。ティア、お前が錬金術と冒険者でひとりだちできるようになるまで協力してやる」

 ……モードさん、いい人すぎだ。


「時間かかっちゃうかもしゅれないよ?」

 わしわしと頭を撫でられる。


「緊急強制依頼がくる以外は、けっこう自由なんだ。上位だから、金もあるしな」

 思わず抱きついてしまった。

 モードさんも受け止めてくれる。


 ひとりで生きていく覚悟だったけれど、この幼児化は想定外すぎた。本当にどうしようと思っていたから、モードさんの存在は、本当に心からありがたい。


「お前が規格外なのはわかってるから、嘘はつかないでくれ。じゃないと守ってやれないからな」

 口を開きかけて、何をどう言ったらいいかわからなくて閉じる。


「今すぐ全部言えって言うわけじゃない。んな泣きそうな顔すんな」

 ごしごし頭を撫でられる。


「お前のために言ってやってんだぞ。嘘つきすぎると花になっちゃうからな」

 口調が軽めのトーンに変わる。


「……何、言ってるんでしゅか?」

 感動していたのに。わたしは冷たい目で、モードさんを見た。


「お前のばーちゃんは教えてくれなかったのか? 嘘つくと花になるだろ」

「はい?」

「嘘つくと神様が怒って、人は花になるんだぞ」


「あ、しゅいかのタネを飲み込んじゃうと、お腹の中で芽が出てくる的なやつでしゅか?」

「ん? しゅいかは知らんが、本当だぞ。お前も生まれる前に、白い部屋で女神様か神様に会っただろう?」

 わたしは瞬きをする。確かに白い空間で神様に会ったけど。


「そんときに、嘘ついたら花になる種を撒かれているんだよ、みんな」

 そういえば、そんなような歌を聞いたような気がする、前に。


「うしょつかないように、子供へのいましゅめでしゅね」

 わたしには通じないけどな! 子供じゃないから。

 モードさんは口を尖らせて、本当なのにとまだ言ってる。

 はいはい。

 わたしだってもちろん、嘘はできるだけつきたくない。


 さてさて。やっとやりたかったことができる! わたしの錬金生活、ここに開幕!

 といってもまだ準備の段階だ。昨日ポーションを買ってもらったのだ。

 これに鑑定をかける。そういえば、鑑定も魔力使っているのかな?

 ポーションは陽月草と水で作られていた。錬金術といえば、錬金釜よね。錬金生活まだ始まらなかった。


「釜が欲しいでしゅ。錬金釜にしましゅ」

 モードさんに錬金術をする釜がほしいと訴える。釜を錬金釜にするための魔力はまだ使えないけれど、準備はしておかないとね。またお金を使わせるのは心苦しいが、先行投資と思って欲しい。


 買い物に行くついでに、受付で今日も素泊まりできるかを聞き、大丈夫と言うのでモードさんが支払う。鍵は預け、買い物に。


 街に出ると、女性が騎士さんに連れられていく、というのを度々目にした。


「何かあったんですか?」

 道具屋さんで釜、物色中にモードさんが店主に尋ねる。


 モードさんの視線の先に目をやって、店主が眉根を寄せる。

「ああ、あれか。どこぞの国が、女性を探していてな」


 結構大きいな、釜。ちびっこには錬金キツイかも。


「女性を、ですか」

 モードさんが相槌を打つ。

 確かに女性ばっか連れて行かれていたもんね。


 一番小さい釜を持ち上げてみる。取っ手の部分が浅くて持ちにくいけれど、これが一番軽いか。


「なんでも王子の側室らしい。攫われたそうだ」


 驚きついでに釜を落としそうになる。危なかった。どこかで聞いたような話だ。そんな異常な出来事、ホイホイ起こることじゃないよね? アレと別件と思うのは希望をいだきすぎ?


「その女性の目印は足のホクロだとかで、街の女性は全員足を確かめられている」

 確定だ。なんてはた迷惑な!


「街の女性全員なんて、よく領主は許可しましたね。攫われたってことは攫った者がこの街にいるって言われてるのと同じですよね?」

 モードさんが驚いている。でも、確かにそうだ。攫われた人がいたら、攫った犯人がいるって言ってるようなもので、ここの住人が攫ったんだろって言ってるようなもんだもんね。


「近隣の国全部でやっているみたいだぞ。拒むと、隠しているんじゃないかとすごい剣幕だったそうだ」

 えー、近隣の国全部って、王子、無駄に行動力ありすぎでしょ。それに国同士でいざこざ起こしたら、喧嘩じゃ済まないんじゃないの?


「でも変じゃないですか? 攫われた側室なら、自由になったらすぐ助けを求めるでしょうし、攫われ中なら見えるところをふらふらしてないでしょう?」

「そうだろ。攫われたにしては変だろう。だからみんな言ったよ。王族の執着で、たまらず逃げ出したんじゃないかって。側室になるなんて、名誉なことだろ、それを投げ打つなんて、それだけ嫌で逃げ出したんじゃないかって。みんながやいのやいの言ったら、しぶしぶ言うんだ。攫われたってのは建前だって。本当は側室が身籠ったのだが命の危険を感じて逃げ出したそうだ」


 吸い込んだ息が変なところに入り、ぶほっ、とわたしは噴いた。こほりと咳するふりをする。


「正室を狙っている貴族たちが、側室とお腹の子供を狙っていて、死にそうな目にあい、側室は魔法で姿を変えて身を隠している、と」


 ごほっと噴いてしまいモードさんに心配される。おでこの熱まで測られる。

 いや、違います。紛らわしいことしてごめんなさい。


 だって、なんか物語っぽくなってる。事実は、『聖女召喚に巻き込まれたおまけが、とんずらこいた』だけなのに、後付け設定がすごすぎる。『(無駄口を叩いたせいで)貴族に狙われている』『姿を変えて身を隠している』はある意味事実で、間違っていない。ただ姿を変えてってなんで知ってる⁉︎


「そういう理由だから、領主様も他の国もどこか身に覚えのあるような話だし、気の毒になって結局協力しちまってるらしいぞ」


 なんてこった。大ごとになってるし。

 それに何なの、身に覚えがあるようなって、ホイホイある話なの?


「王子は側室にベタ惚れなんだと。それでな、ここだけの話、側室は、黒髪に目つきの悪い黒い瞳の、たいそう不器量な、ふてぶてしい丸々肥えたどっしりした女で、王子が20歳過ぎても結婚していなかったのはそういうのが好みで、今までなかなかいなかったのだろうってな。それも不憫だよな。綺麗どころを選び放題できる中にいて、趣味が違ったんだもんなー。貴族たちはそれならば不器量な娘をと、こぞって集めているそうだ」


 容姿についてその噂、事実だけに、わたしにとんでもなく失礼! なんか伝言ゲーム並みに悪口が発展している気がするんだけど!

 そして知っている、『ここだけの話』が、より範囲を広げて羽ばたいていくことも。


 ああ、なんか、すっごく変なことになってる。


「まぁ、理由はどうあれ、確認は免れないもんで。ま、この街には女騎士がいるからまだいいらしいぞ。男の騎士に足を見せることになった村や街もあったみたいだ」

 うわー。それはもう、ごめんなさい。土下座案件だ。


「ディアン、これでいいのか?」

 わたしは持っていた釜を差し出して頷く。


 もっと遠くの街に行きたい。帰ってモードさんに交渉だ。

 モードさんのズボンを引っ張る。

「ちじゅ、みたい」

「地図、か? 」

 こくっと頷く。


 モードさんはお金を払うと、片手で布に包まれた釜を持って、片手でわたしを抱え上げ歩き出す。裏道に入って釜をアイテムボックスに。未来の錬金釜ゲットしました。


「ギルドに簡単な地図があるはずだから、それでいいか?」

 わたしはただ静かに頷いた。


 思い出してしまった、気になっていたことで頭がいっぱいになって、モードさんの呟きは少しも気に留まらなかった。

「地図も文字も読めるんだな」

読んでくださって、ありがとうございます^^

210315バック→バッグ 修正 ありがとうございます

211211>練金釜→錬金釜

誤字報告、ありがとうございましたm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
ほぼ真実?やはり王子の趣味でないと義務感だけであそこまでしない。 
[気になる点] 幼児言葉が解除されているところがある。
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