137話 日常(下)
みんなで好きな物を順繰りにとっていく。家族勢揃いの大宴会をしようと案が出て、そのパーティ用のお魚たちは最初に選ばせてもらった。それと今日の夕食だ。モードさんの合格のお祝いも兼ねている。それらを省きみんなで分けた。それなのにかなりの量の食材ゲットだ。海藻や貝やカツオなどだしにするものはわたしにくれた。みんな気前がいい。カツオは鰹節にしたらみんなに配ろう。
今日はモードさんのSSランク昇進、合格祝いだ! お寿司に、ハマグリのお吸い物。カルパッチョに海藻サラダ。 生牡蠣、イカの塩辛、チーズとグリープ酒を出すつもりだ。山葵、解禁だ、イエーイ! これがあるとないで断然違うからね。
最初におつまみのカナッペを作っていく。チーズだけじゃ寂しいかと、パンにガーリックを塗りつけてガーリックトーストを作る。あと、オリーブの実とチーズと果物。イカはワタも一緒にドロップするから、塩辛作りたかったんだ。熟成の魔法は惜しまないよ。
ドロップした魚だと捌かれているからね。あとは切るだけでいいところが良い。そぎ切りにして、塩をしてスッタイをかけて、その上からオリーブオイルを回しがける。
ハマグリは出汁で煮立てて、ぱかっとしたら醤油で味をつける。三つ葉を散らして完成。
ご飯は酢飯だ。海藻とお刺身を見栄えよく並べて、山葵をちょんとつまんだのを置いておく。コンダイはツマにして、こちらもお皿に。お魚もお肉だからね。一緒に血液をきれいにするもの食べないと。
大根おろしは練金釜でやるのが一番楽だが、念のため摺り下ろし金を作っておいたのが役に立った。荒くなったけど、これでワサビを擦り下ろしたのだ。つんとくる香りと目にくるのが、いい予感しかない。
今日は玄米じゃなくて白米だ。真っ白の艶々ご飯が酢の洗礼を受けて少し生成色になりもっと輝く。ふふふふふ、ベストだ。口の中でほろっと崩れるぐらいの固さに握りたいけど、これは難しいなぁ。いっぱい食べられるように小さめの寿司飯の部分をだーっと作っていく。今度は切り身を上にのっけていく。山葵は好き嫌いあるかもだから、個人個人で任せる。
みんなでご飯だ。パズーさんとペクさんも一緒だ。
グリープ酒で乾杯。モードさんにおめでとうと声を合わせる。ちなみにわたしはレモン水だ。わたしは早速カルパッチョに。うん、うん。ちょっと塩をきかせて寝かせたのが良かったみたい。わたしの好みのねっとり感ながら、オリーブオイルが周りをコーティングするような膜になり、何ともいえない食感と味になっている。海藻サラダも普通に美味しい。醤油ベースの和風ドレッシングがいい。今度はわさびをきかせてみようっと。皆さんもお酒とカナッペで出だしは好調だ。
生牡蠣はクリーンを内緒でかけてあるので、ノロにはならない! わたしはお腹が弱く、あたりやすいので慎重になってしまう。レモンだけでツルッといただく。うー、濃厚! 美味しい。パズーさんとウォルターお兄さんがハマっている。
お吸い物は、いい旨味が出ている。ハマグリもこんなにふっくら。
そしてお寿司。お刺身の上に山葵をのっけて、お刺身の部分にお醤油をつけて、ご飯と一緒にあむり。中トロうまっ。いくらでも食べられそう。山葵がきいてる。お刺身の甘さが際立って、おいしい。酢飯も抜群だ!
わたしはお箸が使えるけど、みんなはフォークを使っている。お寿司はさすがにフォークだと難しいだろうから、手で食べることを推奨する。食べ方を見せてみると、みんなゴクリと喉を鳴らした。
あー、レオンお兄さん、その山葵はキツすぎかも。
反応を見ていると、山葵にツーンとくると鼻を押さえたりしたものの、わたしの食べ方を真似て、無言になる。そして手が止まらなくなる。ルークさんもだ。上品な食べ方をするペクさんも次々と口に運んでいる。モードさんもかなり気に入ってるね。うん、モードさんは山葵好きだと思った! 黙々と食べているがみんな食べ方がキレイ。さすがお貴族様だね。
「「「「「「おかわり」」」」」」
酢飯はいっぱい作っておいたし、お刺身もいっぱいあるからね!
お寿司にするのは面倒なのでここからはちらし寿司にする。お碗にご飯をよそって、お刺身を並べていく。真ん中にちょんと山葵を置けば完成だ。
クーとミミからも急かされて、わたしはおかわりの用意に奔走した。クーとミミはイカがお気に入りのようだ。白いのちょうだいとお替りが続く。黄虎は大トロが好きみたいだ。
お腹がいっぱいになったところで、パズーさんとペクさんは寮へと戻り。
お兄さんたちはグリープ酒を飲みながらまったりするみたいだ。
ナッツの砂糖がけやちょっとしたおつまみを足して、グリープ酒を振舞う。イカの塩辛はモードさんが気に入ったみたい。チーズにのせて一緒にいただくのもオツだよね。
ホリデのダンジョンの話になり、トボムさんのことが不思議みたいで、前に行った時のことを話した。そっか、前にご実家で話した時は、ダンジョンのことはいくつか話したけど、ダンジョンマスターや高位の魔物のあり方とか、そういうのは話さなかったんだっけ。みんな興味深げに聞いてくれたけど、瘴気がありすぎるのは苦しいというところで、やはり驚いていた。
お兄さんたちはほろ酔い気分で帰られた。
朝起きたら、まだ寝ているクーとミミの頭を撫でる。お腹とかも撫でちゃう。ふたりはそれぐらいじゃ起きない。お腹に鼻をすりすりしても起きなかった。お腹に口でフーって息を吹くと、それは起きてしまう。お腹の毛がほわってなるのが面白くて、起こすことになるけどついついやってしまう。起きてる時にはやらせてくれないからだ。
服を着替えて、洗面所に向かう。顔を洗って、口を濯ぎ、髪を結い上げる。
キッチンに行ったら、まず、お湯を沸かす。白湯を少し時間をかけて飲む。今日は何しようかななんて考えながら、静けさを少しだけ楽しむ。
頭がはっきりしてきたら、朝ごはんの支度だ。前の日にある程度の用意はしておくので、朝は温めるぐらいだ。そうこうしているとモードさんが起きて降りてくる。誰もいなければちゅっとしてくれる。
テーブルを整えていると、パズーさん、ペクさんがやってきて、支度を手伝ってくれる。いつの間にかルークさんもいて、その頃にやっとクーとミミが慌てて下りてくる。
みんなそれぞれに食前のお祈りをして、食べながら今日の仕事のことをちょっと話し合う。
ごちそうさまの後は後片付けをして、窓を開けて掃除をする。
寮のお掃除は当番制でやってくれているので任せている。洗濯はまとめてするので、朝定位置の籠に入れておいてもらうことにしている。
洗濯物を持って、外に出れば、ぴーちゃんやモーちゃんたちのおはよう攻撃にあう。最初はぴーちゃんを真似たんだと思うんだけど、魔物も頭を撫でてもらうのが好きな子が多い。ブラッシングも好きで、わたしがお姉さんからもらったブラシは特に気持ちいいらしく、ソレを持って外に出るとみんなやってとすり寄ってきて、人気者気分を味わえる。
みんなの頭を撫でてから、裏の井戸に向かう。大きな樽に水を入れ、洗濯物を入れ、風魔法でぐるぐるとさせる。洗剤を入れてぐるぐるしたら水を捨て、次は濯ぎのぐるぐるだ。それを2回ほど繰り返し、水をきるのにそのまま回転させる。脱水できたら干し竿に干して、牧場の見回りだ。
クーとミミを肩に、セグウェイに乗って、牧場の隅々までチェックだ。これに乗っていると、競争かと思ってみんな一緒に駆け出すんだよね、なぜか。いい運動になってるみたいだからいいんだけど。
孤児院の子供たちがきたら、お仕事を指示して、後はその日気づいたことをやっていく。
畑の世話は、わたしより子供たちの方がよっぽど上手だ。
軽めのお昼ご飯の準備をしたり、暇だったらご飯の作り溜めをしておく。
お昼ご飯を食べたら、買い物に行ったり、森に行ったり、その日その日でやりたいことをやるけど、黄虎とクーとミミに埋もれてお昼寝をすることもある。お昼寝、サイコー!
洗濯物を畳んで、お風呂を洗う。夕ご飯の準備をする。
みんなでご飯を食べて、順番にお風呂だ。お風呂の後は、至高の毛繕いタイム。時にはドライヤーで乾かしながら、黄虎たちのブラッシングをする。キレイにしたところで、顔を埋める。これをやっている時、モードさんもルークさんも、わたしを極力見ないようにしている。なぜ?
次の日の準備をしておやすみなさいだ。
こうやって穏やかな時を過ごすと、こんな幸せがいつまでも続いて欲しいと切に思う。
この日常があるから、この日常を守るために、わたしは何かができるんだと思う。
大好きだと思える日々が、毎日が、どうかずっと続きますように。
読んでくださり、ありがとうございます。
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オリーブオイルが周りをコーティングしたように膜があり
→オリーブオイルがコーティングするような膜になり
適切にわかりやすく、ありがとうございましたm(_ _)m
こんなふっくら→こんなにふっくら
適切に、ありがとうございましたm(_ _)m
鼻を抑えたり→鼻を押さえたり
誤字報告、ありがとうございましたm(_ _)m




