番外編 モーニング・フラッシュ
朝日が差し込むキッチンで、エリーヌは朝食の準備をしていた。
それでもエマニュエル邸から持ってきた日持ちする食材を水で戻してスープを作り、後はパンを軽く焼いていた。
「ひとまず非常用の火おこしでやってみたけど、なんとかなりそう」
エリーヌが焼けたパンを取り出した時、ドアのほうから眠そうな声がした。
「エリーヌ……おはよ~はやいね~……」
「あっ! アンリ様、おはようございます」
そうしてテーブルに食事を並べ終わったエリーヌに、アンリは後ろから抱きついた。
「朝一からエリーヌを吸収~」
「あ、アンリ様っ!」
頬を赤くしてなんとか逃れようとしているエリーヌだが、寝起きとはいえ男であるアンリの力に敵わない。
(これじゃあ、また甘い雰囲気になってしまうわ…)
いつもの甘々アンリの攻撃をかわそうと試みる。
「アンリ様、行ってきますのちゅーを辞めますよ」
「すいません、すぐに離れます」
エリーヌの宣言は効果絶大だったようで、アンリはスパッと手を離して急いで椅子に座った。
(す、すごい……)
実のところアンリの強い要望により、仕事で外出する際には必ずエリーヌからの愛の贈り物をするようになっていた。
しかし、ちゅーを辞めると言われてしまえばアンリにとっては大事件。
彼はおとなしく離れて椅子について食事を始めた。
「いただきます」
エリーヌもパンをちぎって食べ始めた。
「スープ美味しいね」
「ありがとうございます。ありものの乾燥野菜で作ったんですが、干し肉が結構いい感じにコクを出していますね」
「ああ、うまい」
ホッと食事で一息ついていると、エリーヌの表情はどんどん曇っていく。
「この島の調査ですが、どうして国王陛下は私たちに命じたのでしょうか?」
彼女の言葉を聞くと、アンリもまた真面目な顔に変わり答える。
「それは俺も思ったんだ。なぜだろうか、何か国に関係することがあるのだろうかって」
「おじい様の研究についても気になります。この島をどうして調査していたのか、と…」
「ああ、祖父のことはあまり覚えていないんだ」
その時、何かを思い出したようにアンリはハッとした。
「そういえば、おばあ様が昔変なことを言っていた」
「変なことですか?」
「オレンジの小さな実をつける葉はどこにあるんだって……」
その言葉を聞いてエリーヌは頭の中でその葉っぱを想像してみる。
すると、一つの「植物」が思い浮かんだ。
「それって、ニルナ草のことでしょうか?」
「ニルナ草……」
「はい、アンリ様が毒研究で作った解毒剤の材料です」
「どうしておばあ様が…偶然なのか……?」
アンリは少し考え込んだ後、一つの仮説を口にする。
「もしや、おじい様も毒研究をされていた……?」
二人の視線はゆっくりと合わさった。
久々の更新です!
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