5-1:さうろんちゃんねる⑤
「――……はい、というわけでね。そろそろ『もったぶってんじゃねえ』とか『お前の顔なんて見飽きたわ』とかいう心ないコメントで溢れてそうな気がするので、満を持して呼んじゃいましょう。本日のスペシャルゲスト、〝ヘンジンセイ〟の織田典長くんです。888888」
「どうも、よろしくお願いしまっす」
「どもども、おひさー。十層到達記念のパーティーのとき以来だよね」
「あのときは楽しかったっすね。泥酔してあたり構わずゲロする宇宙人って初めて見ました」
「科学者どもに貴重な生体サンプル与えまくっちゃったね。っていうのは宇宙人の自意識過剰で、普通にモップで片づけられたけどね。ははは、イッツエイリアンジョーク!」
「…………」
「はい、開始早々ゲストを困らせたりしてますが、今日は人類最強と名高いプレイヤーチーム〝ヘンジンセイ〟のリーダー、全プレイヤーの頂点に立つ男、織田くんにいろいろツッコんだ話を聞いちゃおうと思ってます。こりゃあ視聴数稼げるぞー、オー!」
「よろしくっす。ハードル上げないでください」
(ジングル……陽気な音楽が流れる)
(アイキャッチ……ポップな字体で〝さうろんちゃんねる〟)
「今年の四月だっけ、レベル8になったの」
「そうっすね。二カ月ちょっと前っすか」
「すごいねー、世界初だもんね。レベル8のリーダーに、レベル7が一人とレベル5とレベル4の四人チーム。そら強いわ、〝ヘンジンセイ〟」
「でも公式記録っすからね。俺らは一応レベルだけは報告してますけど、してない人のほうが多いし」
「さすがに隠れレベル8ってのはいないと思うけどね。いたとしても僕はわからんけど」
「サウロンはどこまでプレイヤーのこと把握してるんすか?」
「把握って意味なら、ダンジョン庁の足元にも及ばないね」
「〝ダンジョンの意思〟ってやつからは情報下りてこないんすか?」
「そういう話はしないね。僕はあくまでダンジョン案内人だから。個人情報はきちんと扱わないと容易に炎上しちゃうからね、今の世の中」
「世知辛いっすね」
「ちょっと話を戻して、ダンジョンのことを聞いちゃおうかね。今のところ、どこまで到達したんだっけ?」
「知ってるくせに、視聴者のためにわざと質問してるんすね」
「さすがでしょ。でもそれ触れられると逆にカッコわるいから」
「はは、さーせん。実はあんまり進んでないんすよ。まだ十一層入ったとこまでですね」
「ファー! 十一層ってすごいね。ダントツだもんね、八層以降の初到達記録は全部〝ヘンジンセイ〟だし」
「まあ、それもまた公式なんでわかんないっすけどね」
「謙遜しなくていいってー。しっかし、あんまり詳しい話聞いちゃうのもアレだけど、十層ともなるとかなり過酷な環境になってそうだね」
「行ったことないんすか?」
「ないよ! マジでない! 一層がせいぜいだよ。僕なんかのこのこ入ってったら、ゆりやんスライム(レベル0相当)にすら瞬殺くらうよ」
「じゃあ、どこで〝ダンジョンの意思〟と話したりするんすか?」
「えっと……スカイポ?」
(ジングル……陽気な音楽が流れる)
(アイキャッチ……ポップな字体で〝さうろんちゃんねる〟)
「はい、変なところで編集入りましたね。ちょっとトイレ休憩がてら、二人で深ーい親密なトークをしちゃったもんで。イチャイチャしすぎてキッズも見られるレーティングだとちょっと無理っていうかなんていうか」
「否定しないほうが女性人気出ますかね」
「君のそういうとこ、嫌いじゃないね」
「んで、なんの話でしたっけ」
「十一層の話かな。最近も結構ダンジョン行ってんの?」
「行ってることは行ってるけど、あんまり深いところには潜ってないですね。せいぜい五層くらいまでっす」
「君、忙しそうだもんね。雑誌のグラビアとかニュースの取材とか、僕より先にテレビCM出たりしてたもんね」
「サウロンは出たことないんすか?」
「準備はできてる。オファーがないだけ」
「そっすか。スポンサーさんの偉い人に相談しときます」
「ぜひ! ぜひ!」
「うわぁ、食いつきエグい」
「んでも、五層までっていうと、君らレベルじゃ日帰りで日光行くようなもんじゃない?」
「いやいや、そんな気楽なもんじゃないっすよ。ダンジョンはいつでもどこでも危険だし、歩くだけで時間食うし。今クエスト受けちゃってるんすよ。D庁公式の」
「えー、それしゃべっちゃっていいの?」
「いいみたいっすよ。っていうか、他のプレイヤーの人たちにも協力してほしいし」
「ああ、公募系の案件か」
「そっす。レベル5以上限定クエスト、エネヴォラ討伐っすね」
「……なるほど……」
「お、初めて顔つきが変わった」
「君も人が悪いね」
「はは。申し訳ないっすけど、ぜひともサウロンさんに直接聞きたかったんす。あいつら――エネヴォラっていったいなんなのかって」




