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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第二章 新たな伝説の武器と娘

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第27話 モノを鍛え上げるという事

「これが例の剣か」


 俺の目の前には、エルフの少女が仕入れてしまった鉄の剣が並べられていた。

 ブリジッドがギルド職員を使って運んでくれたのだ。


【鈍った刃の鉄剣 (ノーマル) 状態:なまくら lv1】


 そしてそれらのステータスは全てこうなっていた。


「ま、こうして見ると、確かに粗悪品だ」


 目の前にある剣は全て、レベル1だ。


 これではもはや、ただの剣のような形をした鉄素材としか言えないものだ。

 特殊な能力もない。ただ、だからこそ、


「うん、問題なく鍛えられそうだ」


 そう言うと、隣のブリジッドが冷や汗を浮かべながら声をかけて来た。


「ら、ラグナ様。本当にこの場所で鍛冶が出来るんですか? 工場や鍛錬場も、言ってもらえればどうにか開けられますが……」

「それだと今使っている人らが大変になるだろ。それに俺の鍛錬には炎は使わんし」


 使うのは鍛冶ポイントと鍛冶スキルだけで良い。

 この部屋でも十分に鍛錬出来る。だからこそ、この場に運んでもらったのだ。


 成果をその場ですぐに見せるためにそうした方がいいと考えてのことだ。ただ、


「ほ、本当に、大丈夫ですか? 百本の鍛錬だなんて、熟練の鍛冶師でも無茶だとおっしゃってましたが」

「ブリジッドはかなり心配性だな。了承して、俺の信用を上げるために、鍛冶ギルドの統括を呼んでくれてるってのに」


 ブリジッドは俺の提案を、少し考えてから頷いていた。だから後は任せてくれればいいんだけれどな。そう伝えると、


「それは……本当に全てやって頂けるなら有り難いことですから、了承は致しました。ただ、先ほど念話で鍛冶ギルド統括と話したら『馬鹿! 無茶に決まってるだろ! 一時間に一本仕上げるのが普通の鍛冶師の限界なんだから。その鍛冶師の体が大事なら無理させるんじゃねえ! 俺の所から人員を貸すから数時間、待っていろ!!』と怒鳴り声を貰ったので……」

「はは、良い人みたいだな、その鍛冶ギルド統括ってのは」


 見ず知らずの鍛冶師を心配するだなんて、相当なお人よしなんだろうな。

 

「ええ、良い人です。そして鍛冶師としての腕も確かですから、もしもその人の言うとおり、ラグナ様の体に何かあったら、私、レイン様やケイ様に顔向けできませんから。彼女たちの大切な人を傷つけたことになりますし。だからもう少し待って、鍛冶師達を待つのもいいかと、思いまして」


 ブリジッドは緊張だか恐怖だかが入り混じった表情になっていた。

 レインの怖さは彼女も知るところだから、そんな顔になるのは分からないでもない。ただ、


「先遣隊が来たって事は、本隊がいるんだろ? そんな長時間、敵は待ってくれるのか?」

「それは……今までの例からするとギリギリ、という所ですね。先遣隊が来て、最速で半日ほどで、本隊が来たので。半日までは、待てると思います。作ったあと、配備する時間を考えると、もう少し早く、完成させたいですが……」

 

 ブリジッドはそう言って顔をゆがめた。そんな彼女に、俺の横に控えていたレインは静かに語りかける。


「ブリジッド。心配しなくても大丈夫ですよ。むしろ、その心配はラグナさんの力に対して、逆に失礼ですよ。このくらい、ラグナさんには何てことないですから」


 レインはほほ笑みながらブリジットにそう告げていた。

 その顔に不安は全く感じていないようだった。強烈な信頼を感じる言葉だった。少しこそばゆいが、信頼されるのは、とても嬉しいものだ。


「まあ、レインの言うとおり、何てことなく終わるさ。むしろ、鍛冶ギルドの統括に信用してもらうために、何てことなく終わらせる必要がある」


 話を聞く限り、悪い人物では無い。無茶する事をしったら飛んでくるような御仁だ。

 是非、信用を勝ち取りたいものだ。

 

「ああ、会うまでにある程度、形にしちまいたいから、ちゃっちゃとやるか」


 そうして腕まくりをすると、ブリジットが今度は心配そうな声を向けて来た。


「ラグナ様。ラグナ様が凄腕なのは信用しています。それで、百本分、鍛えるとするならば、どれくらい時間かかりますか? 下級天魔が来たということは、本隊もすぐに来るので。時間を伝えて頂ければ出来次第、配備に回させて頂こうかと思うのですか」

「おお、そりゃ手回しがいいな。なら、とりあえず十本ずつ仕上げていくことになるかな」

「い、一時間十本……ですか。いや通常の鍛冶師の十倍ですから素晴らしいですが、そうなると、十時間ですか。本隊が来る前には、ギリギリ配備が間に合うかという所ですね……。いや、職員を少し運搬役に回せば、どうにか……」


 ブリジッドはぶつぶつと言い始めたが、何を言っているんだろう。

 とりあえず、勘違いされると面倒なので、最初に訂正しておこう。


「おい、ブリジッド。一時間十本じゃないぞ。一度に十本って話だからな」

「……は?」

「まあ、とりあえずやるか。――《鍛錬》」


 俺は目の前にある鉄の剣10本に手をかざし、全てを撫でるように触れていった。

 すると鉄の剣は光に包まれた。


 数秒もするとその光を全て吸い込まれた。

 そして出来上がるのは、吸い込んだ光を発しているかのような、ピカピカの鉄剣だった。


「はい、十本完成」

「い、今のでですか?!」

「おう。調べて貰っても構わないぞ。あ、よく切れるから気を付けてな」

「で、では、失礼しまして……!」


 ブリジッドは俺が鍛えた剣のうちの一本を拾い上げ、エルフの少女と一緒に見始めた。

 そしてじっくり眺めること数分。


「た、確かにレベル30です。しかも――体力増加の効果までついています、ね」

「え、ええ、私の方も、確認、できました。レベルが三〇倍になった上に、こんな追加効果まで付いているなんて……」


 ブリジッドとエルフの少女は、二人揃って目を丸くして、俺を見ていた。

 どうやら、きっちり良いものが出来たのを確認してもらえたようだ。


「追加効果については、サービスだ。俺の武器で死なれると後味悪いからな。――ってなわけで、ちゃっちゃとやっていくぞー」

「あ、お手伝いしますね。とりあえず剣をラグナさんの周りに纏めておきます」

「いえす、ますたー。ケイもやるー」

「おう、二人とも有り難うよ。まあ、程々に急がずやっていこうや」


 そうして俺はレインとケイの協力を受けながら、目の前に置かれた鉄の剣に触れ、鍛冶スキルを使い続けていった。



 そのドワーフの男は、憤っていた。

 冒険者ギルドの統括から、鍛冶師を壊しかねない連絡を受けたからだ。


 ……武器百本を短時間で鍛え直すだあ? アホな事を考えやがって……!


 連絡を受けた後、男は二時間で複数の職人を呼び寄せ冒険者ギルドに、走り向かった。

 そしてギルドの二階にある部屋に入るなり、彼はまず叫んだ。

  

「ブリジッド! テメエ、鍛冶師を使い潰すような連絡してきやがって……! 無茶を言いだしたバカ野郎は無事だろうな! 無事じゃなかったら鍛冶ギルド統括の長としてタダじゃおかねえ……ぞ……?」 


 だが、威勢の良かった言葉は途中までだった。

 目の前にある光景が、その言葉の勢いを留めたのだ。


 そこにあったのは、立派に鍛えられた鉄の剣。

 長年の鍛冶で鍛えられた目が、その精密で素晴らしい品質であるとうなるほどの武器だ。


 それが、何本も何十本も積み重ねられていた。更には、そんな剣に囲まれるように、一人の男が部屋の中央で輝いていた。


「お、ちょうどいい時にギルドの統括長が来てくれたな。休み休みやっていたけども、ともあれ、これでラストだ。レベル三十の鉄剣百本、全部完成だ」


 連絡を受けて無茶だと、無理だと言った、鍛冶師としての常識。

 それを全て覆す瞬間を、鍛冶ギルド長である彼は見るのだった。


 その鍛冶師はこの短時間で、武器を全て鍛錬し終えることに成功していたのだ。


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こちらの連載も応援して頂けると助かります!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
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