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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第二章 新たな伝説の武器と娘

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第11話 天魔を倒した者の見られ方

 レインとの朝食を十分に楽しんだ後、俺達は外に出て、家の修繕に取りかかることにした。


「さて、どうやって直すかな」


 鍛錬で自宅が直せる事は分かってはいる。材料の丸太はすでに用意が出来ているし、周辺の鉱物系モンスターを倒すことで、鉄材も集まっている。


 このまま鍛錬に入れば直せるのだろうが、


「どうせだったら、当初より綺麗なものに直したいよな」


 夢の中の知識通りならば、(レア)判定の道具は、特定の素材と、レベルの倍数のポイントがあれば鍛えられる。そしてレベルを上げれば性能もあがる。


 それこそレベル80位の家にしてもいいんじゃないか、と笑いながら言うと、レインは申し訳なさそうに頬を掻いた。


「私は別に、ラグナさんと一緒に住めるならどんな所でも大丈夫なんですよ?」

「そうか? でもまあ、どうせ壊れたものなら、もっと良いものにしてやりたいだろ。よりよく鍛えて育てた方が恰好も付くしさ」


 俺の力で鍛えられるものならば、より良いものにしたい。それは俺が普段から思っている事なのだが、


「ふふ、ラグナさんは、本当にラグナさんですね」


 レインは嬉しそうにはにかみ、俺の腕にぎゅっと抱きついてくる。


「……そうですよね。ラグナさんは、錆び錆びだった、私でも見捨てず育ててくださいましたし。ええ、本当に、ラグナさんと一緒に入れて嬉しいです」


 そうして頬を赤らめて、俺の体に顔をうずめてくる。


 その柔らかさを味わいながら、本当にこの娘は可愛いなあ、と思って頭を撫でていると、


「――!」


 背後から、馬のいななきが聞こえた。

 見れば大きな幌馬車がこちらへ近づいてきている。

 それを引く馬には見覚えがあった。というか先日見たばかりだ。

 

「うん? いつもの通販は先日来た筈だが……レインは何か頼んだのか?」

「いえ、私は何も。なんでしょう?」


 俺達が首を捻っていると、幌馬車は眼の前で止まった。

 そして、幌の中から、軽装鎧姿の男たちが降りてくる。


 それはもう、十人単位でぞろぞろ降りてくる。明らかに幌馬車の中に入らないだろうという数だ。


 ……そういえば、夢の中では、ギルド馬車とかあったっけなあ。


 数十人単位でレイドに挑む際、その数十人が一斉に乗って移動できる癖に、見た目は小さな幌馬車というアイテムだ。完全にフレーバーアイテムだったのだが、ロールプレイをするときに良く使われていた。


 そんな事を考えている間に、出て来た男たち数十名は幌馬車の前に、二列に並ぶ。そして、一人の女性がその列の間を歩いてきた。

 

 頭にティアラを被った、とても美人な女性だ。彼女は俺達の前まで来るとぺこりと一礼した。


「こんにちはお二人とも。そしてお久しぶりです、レインさん。お楽しみの所、朝から押しかけてしまってすみません」


 そこまで言われて、俺達は抱きつき合っている状態であることに気づく。

 だが、別に悪い事をしているわけじゃない。それはレインも同じ考えらしく、俺に抱きついたまま、彼女に返答した。


「気にしないでもいいですよ、ブリジッド。私はラグナさんと一緒にいる事に、なんら恥じる事などありませんし」

「そうですか。相変わらず、強い方ですね……。そして、ラグナさん、でしたか? お初にお目にかかります。私はブリジッドと申します。セインベルグという街の冒険者ギルド協会と商会の統括会長をしております。朝からこんなに多くの護衛を連れて尋ねて申し訳ありません」

「はあ……これまたご丁寧にどうも」


 セインベルグはここから南に歩いて三日ほどかかる位置にある街だ。

 夢の中で何度も訪れていたから名前は知っている。そこから通販が届いていると知ったのは最近だけれども。


「それで、そのブリジッド会長? みたいな偉い人が、こんなところに何の御予定で?」

 

 聞くと、ブリジッドは深刻そうな顔をして、俺達を見た。


「街の占術師が炎の天魔王の力と、凄まじい魔力の波動を感じたと報告してきたのです。それで大急ぎで参ったのです。もしかして封印が一部、解けたのか、と思いまして」


 言いながら、俺達の背後にある家と、焼け焦げてまっ平らになった林と岩石地帯を見やる。

 そして青ざめた顔になる。


「これは、天魔王の封印が解かれた、という認識でよろしいんでしょうか。この破壊規模を見るに、かなり暴れまわったようですが……」


 確かに、林と岩石地帯が平ったくなって、家が半壊しているのを見ると何かが暴れた後みたいに見えるな。ただまあ、原因はちょっと違うのだが。


「レインさんが生存しているという事は、また封印は出来たのでしょうが……事情を聴きたいと思って、来たのです」


 ブリジットの言葉にレインは頷いて、しかし首を横に振った。


「そうだったのですか。でも、もはや問題はないですよ、ブリジット。……もう天魔王はいませんから」

「えっと……それは、……どういう?」

「天魔王は倒されました。このラグナさんの手によって」


 その言葉が出た瞬間、


「……え」


 ブリジットは呆けたような顔をして、それから数秒たって息をのんだ。

 周辺の男たちもだ。


「そ、そんな、だって……天魔ですよ? 街を滅ぼし、大陸を蹂躙し、男は殺し、女は犯す。刃は通らず、魔法を受けても回復する、あの天魔を……このお方が?」


 そしてブリジットは唇を震わせながら俺を見て来た。

  

 ……そういえば設定的には天魔は結構やばい奴だったな。


 俺が勝てたのは、攻略方法を知った上で、それをこなせる力があったからだ。


 もしも攻略方法を知らなければ、延々に物理半減自動回復されたまま、溶岩の体で攻撃され続けることになる。


 それで全滅したパーティーなんてものは、夢の中でも大勢いた。


 ……ただ、夢の中は遊びでも、ここは現実だ。


 全滅したら命を落としてそれっきりだ。

 天魔が脅威とされるのはそこが理由だろう。そんな事を思っていると、


「本当に、貴方が倒されたのですか……?」


 言葉を震わせながらブリジットが尋ねて来た。ここで誤魔化しても仕方がないし、頷いておく。


「おう、天魔王ユングなら消滅させたよ。証拠は……この剣になるのかな」


 そして、俺は腰に携えていた赤い剣を見せた。


「これは……封印に使われていた伝説の武器……! レベルが高すぎて、誰ひとりとして触れる事すらできなかった代物なのに……!」

 

 彼女もレベルは視認できるらしく、驚愕の眼をしていた。

 しかし、封印の癖に割と野ざらしになっていて不思議だったのだが、触れる事が出来る人がいなかったのか。


 そういえば、武器レベルを使用者のレベルが上回っていないと使えなかったなあ、と夢の中の知識を思い返していると、


「あ、あの、ラグナ、様、でよろしいでしょうか?」


 ブリジットの話し方が変わっていた。


「いやいや、そんなにかしこまらなくても」

「い、いえ、ですが、天魔を倒した貴方様を呼び捨てにする事はできません……」

「様付けは少し恥ずかしいから、普通で良いのに」


 と、苦笑していると、それを見ていた、背後の鎧姿の男が口を挟んできた。


「そうですぞ、ブリジット様! ギルドの会長である人がそんな、誰とも分からぬ、みすぼらしい者にそのような言葉づかいをする必要はありません」


 とても威勢がいい。どうにも俺にブリジットが畏まっている姿が我慢できなかったようだ。

 そして一度口を滑らしたら止まらないのか、どんどん俺に向かっての暴言が増えてくる。


「その武器を使えている事は驚きですが、天魔を逃がして、倒したとうそぶいている可能性もあります! ですから――」


 そこまで言った男の口は、ブリジットの手によってふさがれた。


「静かに」


 彼女の表情は、とても焦ったものになっている。

 

「今の貴方のセリフは、この方に対する侮辱だけではなく、この場にいる彼を認める人を敵に回す発言ですよ」


 そんな事を言いながらブリジットはレインを見る。


 レインの表情はとても穏やかだったが、しかし、笑っていなかった。

 その体からは火の粉すら出るほどに、真顔で感情を昂らせていた。


「レイン……怒ってるのか?」

「はい、すみません。ラグナさん。私や、剣としての私が何かを言われるのはともかく。私の大切な人を馬鹿にされたのは、許せませんでした」


 そんな彼女を見て、軽装鎧の男は尻もちをついていた。


「ひいいっ……す、すみません!」

「落ち着けレイン。謝っているし、俺は気にしないから、大丈夫だよ」

「はい……」


 俺がレインの頭をなでると、どうにか火の粉は収まった。

 優しくて、物腰柔らかな彼女だが、俺に関する沸点は少し低いようだ。もっと気楽に構えていいのに。なんて思っていると、


「申し訳ありません」


 ブリジットが頭を下げて来た。そして、後ろの幌場所の方を一瞥した。


「謝罪の代わり、というわけではないのですが、大量にお茶や食事も運んできています。ですので、一緒にお食事をさせて頂く事は可能でしょうか? ……色々とお話を聞かせていただきたい事もありますし」

「ああ、まあ、俺は別に。レインもいいか?」

「ええ、勿論。ラグナさんがよろしいのであれば」

「だってさ。それじゃ、ごちそうになるよ、ブリジッド」

「はい、有り難うございます……!」


 そうして俺は、ホッとした表情を浮かべるブリジットから情報収集も兼ねて食事会をする事にした。


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最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
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