六十二、ぶん殴る、必ず
街中に漂う不愉快な臭いに顔をしかめつつ、僕たちは宿屋へと直行した。
臭くて耐えきれない、というのもそうなのだけど、これからの行動を方針を決めるための拠点が欲しいというところだ。
しかし、宿屋すら酷い。
店主のガラが悪い。客層のガラも悪い。宿屋の店員のサービスだけが良いのがなんか変。ちぐはぐ。
みんなで顔をしかめつつ三部屋取り、すぐに集合する。ちなみに部屋割りは適当である。
「で、どう思う?」
僕が狭い部屋に集まった全員に向けて聞いてみる。
全員が地べたに座って円になって顔を見合わせている。ここにリルさん、クウガさん、テグさん、サラヴィとニアナ、ゼロ、レイ、シファルとシューニャと大勢が揃っている形だ。
部屋が狭いっ。
「この街に様子に、臭いに、街の人の様子と、感じることが多いと思うんだけど」
そう切り出してみると、まずリルさんが手を上げた。
「臭い」
「……うん、臭かったですね」
「あれ、多分歓楽街とか怪しいお店とかに使われる、幻惑薬の一種だと思う。楽しい気分にさせる奴」
んぁ!? そんなヤバい薬の臭いなのアレ!?
驚きのあまりあんぐりと口を開けてしまったところに、クウガさんも手を上げた。
「街の市場や店に並ぶ食品の質が悪いわ。ありゃあ多分、食品取引よりも金になるもんに商売の手を伸ばして、そっちが疎かになっとるんやと思う」
「……聞きたくないですけど、何に手を伸ばしてます?」
「そらあんな臭いが街中に漂うんやったら、そういうことやろ。裏稼業やらなんやら。ワイは用心棒として見たことがあるからわかる、ありゃあ食品よりも金になるもんに目が行っとるんやな。けど、人間は食わな生きていけへんことを考えると、段々とみんなの食うもんの質が悪うなっていくと気分が落ち込んで嫌な奴になるもんやで」
なんかわかる気がする。美味しいものを食べる余裕のない生活は、気分が落ち込むし周りの人に八つ当たりしたくなる。それしか気分が紛らわせられなくなるんだろうな。
そして、テグさんも手を上げた。
「あと荒くれ者も多いっスね。治安を悪くするだけのアホばかりっス」
「なんででしょうね」
「そりゃあ裏稼業で稼ぐなら、そういう人物が揃うのは当然っスわ」
決めた、僕は必ずガングレイブさんをぶん殴る。
この街をそんなことにしやがった報いを受けさせねばならんと、心に強く誓った。




