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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京

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第88話 一網打尽

 約二時間、俺が近くのビルの屋上から見張り続けていると、遠くから車のエンジン音が聞こえて来た。俺の仲間が来ているはずは無いので、明らかに違う誰かが運転する車だろう。それが盗賊なのか俺達以外の生存者なのかはわからない。俺が見下ろす道路の先に光るライトが見えてくる。


 だが予想に反して車は一台。光るビルの前に差し掛かると速度を落とし、何かを確認しているような様子だった。だがその車はそのまま行きすぎて、どこかに行ってしまった。


 何もしないで行ったな、もしかしたら盗賊の類じゃないのか?


 俺達が罠を仕掛けたビルはまだ派手に光り輝き続けている。発電機がどれくらい持つのか分からないが、位置を確認していった事でお役御免だろう。しかし、それからしばらくは動きが無く、俺は再びじっと待つ事になる。


 盗賊ならば今日動くだろう、もし他の生存者ならば様子見するかもしれないが…長丁場になるかもしれんな。


 だが俺の心配をよそに、すぐに動きがあった。再び車の音が聞こえて来たと思えば、数台の車と数台の護送車が現れたのだ。俺は盗賊だと確信するが、そのまま成り行きを見守る事にする。すると車から銃を持った数人が下りて来て、ビルの入り口のドアを開いた。そして、そこに袋に詰められた蠢く物を置いた。男らは、その袋に対して何かをしているようだった。


 なにをしてる?


 その男達がその場から離れると護送車がビルに横付けされる。男達がドア付近に置いた袋に繋がった綱を引くと、袋の中から二人の人間が出てきて周りを見渡している。男達が護送車のドアを開いた瞬間、置き去りにされた二人からピーピーと高い音が鳴り始める。


 護送車の中からぞろぞろとゾンビが現れ、袋をかぶせられていた二人は慌ててビルの中に逃げて行った。ゾンビはピーピーという音を追うように、次々とビルの中に入って行く。すぐさま次の護送車が横付けされ、ドアを開くとゾンビが音に反応してビルの中に入って行った。そして再び次の護送車が横付けされる。


 空港をやった手口はあんな感じだったのか。ならばビルの中のゾンビは始末しておくべきだった。今俺が助けに入っても、囮にされた人間はもう助からない。

 

 案の定三階付近で、人間の気配は消えてしまった。恐らくゾンビに食われてしまったのだろう。俺がそのまま様子を見ていると男達はビルのドアを閉めた。皆が車に戻るとそのまま車の列はビルを離れて動き出す。


 俺は急いでビルの屋上から飛び降り地上に降り立つ。


 このまま終わりか?


 俺が身体強化と脚力強化でその車を追って行くと、車列は大きな川の上にかかる橋の上で止まった。そしてぞろぞろと下り出て、両方の入り口に向かって銃を構え始める。どうやらゾンビから避難してビルの様子を伺うようだ。俺はすぐに橋の下に潜り、橋を支える構造物を伝って盗賊の真下に出た。よじ登って橋の脇にぶら下がり盗賊達の話を盗み聞く。


「ゾンビは入れたけどよ。アイツら上まで逃げ切れるかな?」


「どうだろうな。そもそもビルの中にもゾンビがいる可能性は高いしよ」


「ならゾンビは上まで上がって行かねえだろ?」


「いやいや。上の連中はそこまでは考えてねえみてえだぞ。あのビルを拠点にしている奴らを袋の鼠にするらしい。ゾンビがうようよしててビルからは出れねえだろうってよ」


「じゃあ、俺達はいつまで待つんだ?」


「そりゃ指示があるまでさ」


「すぐに襲わねえと、物資なんか食いつくされるんじゃねえのか?」


「今回の目的は物資じゃないらしいぜ。どうやら襲われた支部の犯人捜しみてえだ」


「物資回収じゃなきゃ意味ねえ気がする」


「面倒な事、考えてねえでゾンビを見張れよ」


「わーったよ」


 なるほど。どうやらあのビルに生存者がいると仮定して、兵糧攻めにするつもりらしい。更にこれは物資回収が目的ではなく、自分らの支部をやった犯人捜しか。ならば俺が殺した奴らの仲間という事だ。


 それで俺の次の行動が決まった。橋の下を移動し、陸に戻ると俺達が罠を仕掛けたビルまで走る。そして俺はそのままビルの中からでは無く、外から上層階に登っていく。屋上に到達し罠を仕掛けた最上階に降りて、おもちゃのスイッチを切っていく。最後に発電機のコンセントを抜いてイルミネーションを止めた。


 これで奴らは動く。


 俺はすぐさま屋上からビルの外を伝って降り、隣りのビルの屋上の高さまで到達し飛び移った。そこでしばらく待っていると、空が薄っすらと明るくなってくる。


 まだ、動かないか?


 そう思った時だった。車がこっちに向かって来るのが聞こえた。やはりビルの灯りが消えた事に気が付いた奴らが、すぐに行動に移したらしい。するとビルの下の路上に二台の盗賊の車が到着する。


 どうする?


 男達は車を降り罠を仕掛けたビルのドアを開く。そして車に戻り車から大きな音を出し始めた。それにつられてビルの中からぞろぞろとゾンビがはい出して来た。周辺にいたゾンビもぞろぞろと集まって来る。車はそのままゆっくりと前に進みだし、前方のゾンビを銃で排除しながら進んでいった。ゾンビ達は車の音に反応し、どんどんビルから出てくるのだった。


 随分巧妙に考えられたものだ。


 ゾンビはうようよと車を追いかけていくが、少しずつまばらになって来る。しばらくすると、今度は五台の大型トラックが反対側からやってきた。恐らくはここまでが作戦なのだろう。荷台が開けられると、ぞろぞろと銃を持った男達が出てきたのだった。男達がビルの前に集まるのを見ると、ざっと百人は超えていた。


「行くぞ!」


 男の一人が号令をかけて、次々にビルの中に突入していく。するとビルの中から銃声が聞こえ、ゾンビ達を銃で掃討し始めたようだった。


「さてと」


 ようやく俺の出番が来た。俺はすぐさまビルの一階まで走り下りる。トラックの周辺にはまだ、数人の銃を持った男達が見張っていた。逃げる為のトラックを守っているのだろう。


 俺は皆からの死角に立っている、トラック最後尾の荷台付近にいた男に近づいて脳天を突き刺した。音をたてないように地面に寝かせ、次の標的に目をつける。一瞬にしてそいつに近づいて、気づかれる前に脳天を貫いた。前方の離れた所に居る男が振り向いたが、俺は殺した男を立たせて生きているように見せる。前方の男がむこうを振り向いた瞬間に近づいて脳天を貫いた。


 トラックの運転席の男が鏡越しにこちらをチラリと見たので、俺は死んだ男を立たせたまま生きているふりをする。するとトラックの運転席の男が目を逸らしたので、すぐさま助手席から潜り込んで脳天を刺した。前方から見れば無傷に見えているだろう。そのまま男を運転席の窓にもたれかけ、すぐさま助手席から降りて次のトラックに向かう。



 俺はトラック周辺にいた奴らと運転席にいた奴らを含めた十五名を、音も無く殺した。念のため周辺を気配探知するが、他の百名余りは全てビルの中でゾンビを討伐しているようだ。


「思ったより早く片付いた」


 俺はぽつりとつぶやいた。そして罠を仕掛けたビルを気配探知で探る。中に入った連中は上へ上へと向かっているようだった。俺がトラックから離れてビルを見上げると、最後尾あたりの男が十階辺りからこちらを見下ろし俺と目が合ってしまった。


 俺はその男に手を振ってみせた。男は俺を指さして、俺の事を仲間に教えているようだった。


「さて」


 俺は腰だめに日本刀を構えて気を蓄えていく。


「龍破斬!」

 

 俺はビルを斬った。そして次に魔法剣撃を繰り出す。


「テンペストソード!」


 バグゥゥゥゥン! と斬ったビルの上部分が吹き飛び倒れていく。


 ズッズズズズゥーン!!!


 物凄い砂ぼこりと共にビルが倒れて崩壊した。


「大地裂斬!」


 ビルの下の地面が大きく割れて、ビルの残骸が地下へと落ちて行った。


 ボゴォォォォォ!


 割れた地面から強く土煙が上がる。ビルが完全に消えたのを見届けて、俺はすぐさま踵を返し再び近隣のビルへと身を隠すのだった。自分が考えた罠がすんなり決まるのは気分が良いものだった。

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