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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京

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第86話 おもちゃ屋

 ユリナが病院で回収してきた点滴により、アオイはかなりの回復を見せる。父親と母親の埋葬の時は号泣していたが、今は落ち着いたようで女達と共に食事をとるようにもなった。


 そして俺は自分で考えた作戦を皆に伝える為に、皆を俺の部屋に集めた。


「みんな集まってくれてありがとう」


 俺がそう言うとタケルが聞いて来る。


「なんだよ改まって」


「ああ。まずはアオイ、体の調子はどうだ?」


「うん。だいぶ良くなったよ」


 アオイはそう言うが、顔色は優れない。


「無理はするな。甘えて良いんだ」


「ありがとう。お兄ちゃん」


「皆もアオイをよろしく頼む」


 皆が頷いた。そして俺は皆を見渡して言う。


「このまま籠っていても、どうしようもない事は皆も分かっていると思う。そこで俺は、盗賊集団の討伐作戦を敢行する事にする」


「とうとうか…」


 タケルが呟き、皆が俺の次の言葉を待った。


「そこで、一番効率の良い方法でやろうと思っている」


「どんな方法だ?」


「罠を仕掛ける」


「罠?」


「ああ。最初はタケルが言うアクアラインで待ち伏せをしようと思っていた。だが不明確な敵のアジトの数と戦力、複数の組織がある事を鑑みてそれはやめる事にした」


「罠ってどうするんだ?」


 そこが問題だった。より効果的な方法を皆に考えてもらいたかったのだ。


「それなんだ。罠を仕掛ける為には皆の協力が必要となる」


「ヒカルも何か良い案が浮かんでんだろ? 単刀直入に言ってくれよ」


「わかった」


 そして俺は地図をテーブルに広げて、赤いペンを持って話を始める。


「敵の潜伏する場所はおそらく、このどこかだろう」


 そう言って東京湾の周辺を赤い線で囲む。


「まあそうだろうな」


「だが張り込みは効率が悪い。なぜならばこの前、俺が幕張の拠点を壊滅させてしまったからだ」


 するとミオが手をあげる。


「どうして効率が悪くなるの?」


「敵はいま最大限の警戒をしているだろうからだ。恐らく敵は動きを潜めて、壊滅させた犯人を探っている頃だろうと思う。それに潜伏した盗賊を探し出すのは、実は容易ではないんだ」


「そっか…」


 俺は地図の上にバツをつけて説明をした。


「敵がいる可能性のあるところは、以前話した通りだ」


 皆が地図を見て頷いている。


「だがどこにいるかは分からない。ならば呼び寄せてやろうと思っている」


 黙っていたヤマザキが難しい顔をして言う。


「おびき寄せる? 一体どうやって」


「実はそこからが相談なんだ。どうすべきか? その知恵を皆から借りたいんだ」


 タケルが立ち上がり張り切って言った。


「おー、わかったわかった! 敵を集めりゃいいんだよな?」


「何か案があるのか?」


 するとタケルがしたり顔をして言う。


「虫ってな、何に集まっか知ってっか?」


 すると小さいアオイが手をあげる。タケルが指をさして指名した。


「はい! 葵ちゃん!」


「光と甘い蜜」


「正解!」


 なんとなく、タケルが言わんとしている事が分かった。ユミがそれに質問する。


「タケル。虫と盗賊は違うのよ? どうやって集めるのよ」


「何言ってんだ由美? そのままやるんだよ」


「そのまま?」


「光で集めんだよ。光で」


 するとポンと手を叩いてヤマザキが言った。


「なるほどな! そう言う事か?」


 ミオがヤマザキに聞く。


「どう言う事?」


「俺達は最上階に居て、気を付けている事があるよね?」


 すると皆が頷いた。そしてユリナが言う。


「懐中電灯で外を照らさない…あっ…」


「そうだ! それをやるって言う事だろ? タケル?」


「正解!」


「えっと拠点でって事?」


「違う! そんな馬鹿な真似はしねえよ! 敵が来ちまう。とにかくヒカルの引いた線を見ろよ」


 皆が地図を見つめる。そしてタケルが指を指して言った。


「大体このあたりで、海沿いから見える高層ビルかホテルを探すんだ」


「そこに誰かが行って光で照らすと?」


「いや、誰かがいたら危ねえだろ? だから誰かがいるみたいにするって事さ」


 マナが言った。


「もっと詳しく言ってほしい」


「あー、あのよ。ハリウッド映画でホー〇ア〇ーンっていうの知ってっか?」


 すると皆が合点が言ったように言う。


「「「「「「「「あー!」」」」」」」」


「あれだよ! あれ!」


 するとユミがタケルに言う。


「タケルにしてはすっごい良い案じゃん!」


「俺にしては、は余計だ。とにかくそれをやろう」


 俺はその映画を見ていないので、どんな事をするのか分からなかった。だが皆はそれを分かっているようだ。


「決まりだな」


 ヤマザキがそう言うので俺が聞く。


「どうするんだ?」


 するとタケルが言った。


「おもちゃ屋に行くんだよ! いろんな動きをするおもちゃがあるんだぜ」


 皆は何をするのかが分かっているようだ。


「葵ちゃん。良かったら一緒に行くかい?」


「危なくないの?」


「ヒカルがいりゃ、全く危険なんかねえよ。なっ! そうだろ? ヒカル」


「任せろ」


 俺が答えるとアオイが俺を見て笑う。俺はアオイの頭に手を乗せてポンポンと叩いた。


「なら、明日の昼間に決行する。何人かで行く事になりそうだな」


「俺は行くぜ!」


 タケルが名乗りを上げるが他は躊躇している。だがユミが手をあげた。


「なんか面白そうだし、あたしも行く」


 次にミナミが手をあげた。


「私も行くわ。あの映画好きだったし」


 するとミオも手をあげる。


「私も行く! 葵ちゃんはどうする?」


「あ…」


「無理はしなくていいよ」


「行く!」


 アオイが意を決したように言った。するとツバサも手をあげる。


「葵ちゃんが行くなら私も」


 そして…結局全員で行く事になってしまった。まあ都心部には盗賊は居ないので問題はないが、それならばと俺が提案する。


「皆で行くなら、全員銃を携帯していく。とにかく訓練が必要なんだ」


 皆が渋々頷いた。そして俺達はおもちゃ屋に行く事になったのだった。朝方になり、皆でホテルの地下駐車場に下りる。ワゴン車二台に別れて乗り込み、俺がバイクで先頭を走る事にした。相変わらずタケルが俺のバイクの後ろに乗っている。


「いくぞー!」


 タケルの掛け声とともに、駐車場から地上に出た。地上にはゾンビがウロウロとしていたが、それを全て飛空円斬で切った。バイクに乗りながらも剣技を発動させる事に慣れてきている。


 おもちゃ屋とやらには十分もかからずに到着した。


「ヨド〇シなんて久しぶりだぜ」


「有名なのか?」


「ああ、みんな知ってるよ」


 どうやら有名なおもちゃ屋らしい。ゾンビがうじゃうじゃいたので好都合だった。ちかくのゾンビだけは俺が日本刀で斬り捨てた。


「よし! みんな車を降りろ!」


 俺が言うとアオイ以外が銃を持って車を降りる。


「タケルとヤマザキとユリナが撃ち方を教えてくれ」


 俺が指示をすると三人がそれぞれに銃の操作を教えた。


「ゾンビは頭を狙わなければ倒れないぞ」


 皆が一斉に銃を掃射し始める。人数がいるので次々にゾンビが倒れていくが、音につられてビルの角から次々とゾンビが出て来る。これでは弾が無くなってしまうだろう。


「よし! 皆! 撃つのを止めろ」


 皆が銃を撃つのを止めた。どんどん集まって来るゾンビを引き付け、俺が飛空円斬ですべてを切り倒した。波が襲うようにゾンビが倒れていくのを見てアオイが言う。


「うわ! 凄い!」


 アオイにタケルが答えた。


「だろ? すげえだろ?」


 するとユミが呆れて言う。


「あんたがやってるんじゃないでしょ!」


「へいへい、すんません」


 するとアオイが笑った。


「ふふっ」


 それを見て皆が目じりを下げる。まだ気持ちは戻って来ては居ないが、笑えるのであればなんとか持ち直す事が出来るだろう。俺がおもちゃ屋を見ると、正面玄関から向かって右側に鉄の扉があった。


「ここから入る」


 キン! と鍵を斬ってドアを開く。中を気配感知で探ってみるが、ゾンビの気配は感じられなかった。それから皆がおもちゃを物色し始め、自分のリュックに詰め込んでいく。各自はおもちゃの挙動を見ながら、必要そうなものを選んでいくのだった。


 俺はおもちゃの事を良く知らないので、きょろきょろしているアオイのもとに行く。


「アオイは、なんか欲しいのがあったか?」


「勝手に持って行ってもいいの?」


「誰も咎める者はない」


「じゃあ…」


「俺のリュックがあいているから、欲しいものはどんどん詰めろ」


 するとアオイはキラキラした目を俺に向けて来る。


「ほら、俺がついていてやる。好きなものを集めろ」


「うん」


 皆は敵をおびき寄せる罠に使うおもちゃを探していたが、俺だけはアオイの好きなおもちゃを一緒に探した。箱ごと入れようとするアオイに俺が言う。


「出せる物は箱から出した方が、よりいっぱい持っていけるぞ」


「うん」


 そして次々にアオイが俺のリュックにおもちゃをいれ、パンパンになった頃に皆が集まって来る。そしてヤマザキが言った。


「皆十分か?」


 するとユリナが答える。


「多分ね。みんなそれぞれが楽しみながら集めていたわ」


「そいつはよかった」


 俺達はおもちゃ屋で必要となるであろう物を回収した。拠点に戻りそのおもちゃの稼働確認を行う。この世界のおもちゃは凄い物ばかりで喋る人形までいる。皆がおもちゃをみながらあれこれと罠を考えていくのだった。

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