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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京

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第73話 敵拠点の推察

 俺とタケルが新宿を巡回しブランド服を大量に持ち帰った日の夜だった。食事を終えた後に俺が話をした結果、恐らく盗賊は都心部へは入っていないと言う結論に至った。普通の人間がゾンビを回収するには、ゾンビが多すぎる都心部は危険だからだ。


 ヤマザキが言う。


「おそらく主要な町ではなく、多少閑散としたところでゾンビを回収してるのだろうな」


 それにユリナが答えた。


「と言う事は、渋谷方面でも新宿方面でも、ましてや港区や中央区でもないって事?」


「そうだろう」


 タケルが言った。


「ヒカルと一緒に賊を見つけた所は、千葉方面に抜ける高速だったな」


 そして回収して来た地図を広げて指をさす。


「回収場所は品川区、もしくは大田区って所か?」


 するとツバサが言った。


「あ、まって。大田区っていうと羽田があるわね?」


 俺が分からないので聞いた。


「ハネダとは?」


「空港よ。私達がいた千葉の空港のような場所」


 それに対しユミが言う。


「ここからそう遠くも無いし、嫌な感じね」


 地図を指さしてみると、確かに今俺達がいるところに近いようだ。そしてヤマザキが話を戻す。


「ヒカルは、賊から拠点の一つは幕張って聞いたんだよな?」


「ああ」


 ヤマザキが地図を指さしていくと、どうやら幕張は海を囲むようにした地形の縁にあるらしい。空港はその対岸にあるようだ。


 タケルがそれを見て言った。


「もしかしたらよ。東京湾を囲んでアジトがあったりするんじゃないか?」


「なるほどな。アクアラインもあるし、それだと賊も行き来しやすいか」


 そしてヤマザキが怪しそうな所に、赤いペンで丸を付けていく。


「アジトにしやすそうなのはまず幕張メッセ、そして羽田空港、お台場、下手をすると千葉のテーマパークも怪しいだろう」


 するとミオが不服そうな顔で言った。


「え! 夢の国なのに! 私大好きなのに!」


 皆がミオを見ると、ちょっと恥ずかしそうに頬を染める。


「あ、あの、キャラがすきなの」


「そう言えばディ〇二―好きって言ってたもんね」


「う、うん」


 ヤマザキはそれを流して話を続けた。


「大人数で拠点にしやすいと言ったら、そう言ったところだと思う。幕張と聞いた時点でそうじゃないかと想像は出来た」


「確かにそうだよな。車両も確保しやすいし、バリケードとか作れば俺達がいた空港のように守りやすいもんな。俺達だってそうした訳だし」


「そう言う事だ。そして拠点を広げる為に、やつらは俺達の空港を襲ったんじゃないかと思う」


 ヤマザキの言うとおりだろう。そう考えると辻褄があう。更に縄張りを広げて食料や物資を強奪していく。その為にヤマザキ達の仲間は犠牲になったのだ。それを聞いてユリナが言った。


「幕張に五十人くらいって言ってたよね? ということはかなり大人数の可能性ない?」


「あるだろうな…」


 ヤマザキの答えに皆が静まり返る。それに俺が言った。


「もしかすると俺達は敵から逃げて来たんじゃなく、敵の懐近くに入って来たと言う事か?」


「あくまでも推測だがな。それに新宿はとてもじゃないけど、人間が活動できる場所じゃなかったんだろ?」


「そうだな」


「東京湾周辺に拠点を構えた奴らが、食糧と拠点を増やすためにやっていると考えるならば、湾岸沿いのどこかでゾンビを回収して、周辺地域に運んでいると見るのが妥当だ」


 タケルが言う。


「まあ、そこいらでも地方よりゾンビがわんさかいるからな。ベッドタウンならいくらでもゾンビを捕まえられるだろうよ」


「そう言う事だ」


 それに俺が言った。本当に敵はこちらに足を入れてくる事は無いのだろうか? 疑問に思った俺は聞いてみる。


「アイツらは都心に入る事はないという事か?」


「まあ危険だからな。もしかしたら俺達は敵の盲点に居を構えているのかもしれないぞ」


 ヤマザキの言葉に皆が頷いた。


 ミナミが言う。


「灯台下暗し、というやつね」


ユリナがそれに同意して言う。


「それが証拠に、都心部の食料品店が荒らされていない」


 するとマナが言う。


「うわ…私達が前に東京に来た時、よく盗賊に会わずに生きて帰れたよね?」


「運が良かったんだろう」


 確かにヤマザキの言うとおりだ。そして賊も活発に動いているわけではないと言う事だ。そうでなければ、ヤマザキ達は見つかっていた可能性が高い。たまたま生き延びたというのが正しい。


 タケルがヤマザキから赤ペンを受け取って地図に記しながら言った。


「つーことはだ。こことこのあたりで待ち伏せすれば、アイツらの情報がつかめるってことじゃねえか?」


 それをみてヤマザキが言う。


「湾岸線とアクアラインか」


「ああ。普通の人間の感覚なら、あんなおっかねえゾンビだらけの都心部にゃ入らねえし、湾岸線とアクアラインで行き来してるって事だろ?」


「その確率が高いな。そしてジャンクションを降りた辺りでゾンビを回収し、周辺の人間達を襲っているって感じだろう」


 俺はそれを聞いて、今いる場所が敵に近い事を知った。彼らはここが安全と思っているようだが俺は違った。


「ヤマザキ、俺達がいるここに灯りが灯れば、敵から丸見えになる事は無いか?」


「東京は真っ暗だからな。その危険性はあるだろう」


「そうか。ならばこの拠点を捨てた方が良いだろう」


「「「「「「「「えっ!」」」」」」」」


 タケルも含んだ全員が声をそろえて言う。


「敵に近すぎる。もし盗賊が徒党を組んで来たらまずい」


 それにミオが答えた。


「せっかくここに拠点を構えたのに? ここを捨てるって事?」


「そう言う事だ。盗賊の目と鼻の先だからな、この周辺にあいつらが現れないとは限らない」


「確かにそうだけど…」


 恐らく皆はここが安全と思っているのだろうが、それは対ゾンビに関してだ。盗賊に対してはかなり守りづらい場所となる。


 ヤマザキが皆の言葉を代弁して俺に聞いて来る。


「というか、ヒカルは何処に拠点を構えようと思っているんだ?」


「新宿だ」


「新宿?」


「ここと何ら変わりはない。ゾンビは多いが、更に西へ行った分だけ盗賊から離れる事が出来る」


「確かに新宿にも高層ビルはあるが…」


 ヤマザキは俺が考えている場所とは違う場所を想像していた。そこで俺が言う。


「俺が考えているのはビルじゃない。まだ調べてないから分からないが、巡回でゾンビの居ない場所を一カ所だけ見つけたんだ」


「それはどこだ?」


「アカサカゴショという場所だ」


「「「「「「「「!!」」」」」」」」


 俺の言葉に皆が絶句してしまう。やはり王の住みかは不味いのだろうか?


「まずいのか?」


「いや…それは…」


「王の住みかだからか?」


「まあそれもある。だが、高層ビルの方が安全じゃないか?」


 ヤマザキが言うのはあくまでもゾンビ対策でという意味だった。もし盗賊が襲ってきたらビルには逃げ場がない。


「もし盗賊からゾンビの居ないビルに入り込まれたら、敵は好き放題上がって来る」


「確かにそうか…」


「一度、アカサカゴショを調査に向かう。それが可能であれば皆で移ろう」


 皆はうんと言わなかった。考え込んでそれぞれが話し込んでいる。だがタケルが付け加えて言った。


「つーか、ヒカルの言う事にも一理あってな。御苑とか赤坂御所付近はここよりもゾンビが少なかった。そんで、敵がいると推測される場所からも離れるしよ、考えてみても良いと思うぜ」


 だが皆は迷っているようだった。


「答えはまだ決めなくていい。調査をして、移住が可能なようなら決めよう。もちろんゾンビの危険性が無いわけではないからな」


 するとミオが言う。


「みんな。ヒカルがここまで引っ張って来てくれたんだし、ヒカルも人命第一で考えてくれているわ。恐らく生存に関してヒカルの意見は間違っていないと思うの」


 それにツバサが答えた。


「そうね。前の世界ではもっと過酷な戦いをしてきたヒカルが言うんだから、きっと生き残れる可能性は上がるんじゃないかしら?」


 その言葉に皆が渋々頷いた。恐らく板金屋やリサイクルセンターのように囲まれた場所がある。ゾンビは防げるだろう。そのゾンビの数だけが問題なのだ。そして、むしろゾンビ達が天然のバリケードとなって俺達を守ってくれる。


「今夜中に俺が調べて来る。皆はその答えを待っていてくれればいい」


俺が言うと皆が頷いた。


 盗賊の目と鼻の先に暮らすのは絶対に危険だ。俺はすぐ出発の準備に取り掛かるのだった。

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