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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京

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第72話 新宿御苑を抜けて

 まず俺達は手始めに都内を巡回する事にした。都内の何処にあいつらが現れたのかは分からないが、東京の状況を網羅しておく必要があるという結論に至ったのだ。あの集団以外にも賊がいるかもしれない、その可能性も確認する必要があった。


 その為に俺はタケルと一緒に昼間に動く事となる。俺が都内の地名を見ても、どこがどこかが分からないからだ。そして都内を巡回する為に俺がタケルに提案したのは、馬のエンブレムとやらが付いた赤くヘラべったい車の運転をしてもらう事だった。タケルが運転するとなると、夜では見えないので昼に巡回する事になったのだ。


 タケルがはしゃいでいる。


「すんげえぞヒカル! やっぱフェ〇ーリは速えええ」


「良かったな。バイクが運転できないなら、これが良いと思ったんだ」


「なんだよ。ヒカル、俺の為にこの車を持ってくる事を提案してくれたのか?」


「そうだ。どうだ? 気に入ったか?」


「そりゃもちろん。生きててこれを運転する事があるとは思わなかったからな」


「そいつは良い」


 俺達は首都高の上を走り、すぐに目的地の標識が見えて来た。


「新宿だ」


「この街もデカいのか?」


「そうだ。おそらくゾンビが、うじゃうじゃいると思う」


「わかった」


 首都高の降り口から下り、都内に入るとタケルの言う通りゾンビの大群がいた。俺達がいる街とほとんど変わらないかそれ以上のようだ。


「うわわわ! いるぜ! めちゃくちゃいる!」


「ひとまず停めろ」


「いいのか?」


「問題ない」


 そして俺は車のドアを開けて周りを見渡した。数えるのも馬鹿らしいくらいのゾンビが、俺達に気づいてこっちに向かって来るところだった。そして腰に携えた日本刀に手をかけて、体を低くする。


飛空円斬ひくうえんざん


 シュゥイン! 剣撃が俺を中心にして広範囲に飛んでいく。見える範囲の百八十度にいるゾンビ達が、腰から真っ二つになり地面に落ちた。


「よし」


 そして今度は車の反対側に行き、同じく飛空円斬で見えるゾンビを全て斬った。こちらも体を半分にさせてゾンビが崩れ落ちていく。俺はすぐさま車の助手席に戻った。


 車に乗ったと同時にタケルが興奮して声をかけて来る。


「凄んごくなってねえか? なんだよ今の!」


「いや、タケル。凄いのは日本刀だ。だいぶ昔の武器らしいが、俺の剣技に耐えてくれる」


「相当なもんだな」


「冥王斬だと、ビルごと斬ってしまう可能性があるからな」


「へっ? てことはこの前、車を斬ったのとは違う技なのかよ」


「そう言う事だ。広範囲には飛ぶが、鉄や岩を斬る事はない」


「使い分けてるって訳か」


「そう言う事だ」


「斬ったゾンビを燃やさねえのか?」


「兵隊として使えないようにすればいいだけだ。むしろ上半身だけでも残しておけば、人間は活動しづらいだろう」


「ヒカルもいろいろ考えてんだなぁ」


「俺の目的は賊達の阻害だ。それに東京じゅうのゾンビを消すのは時間がかかるだろう?」


「時間はかかりそうだけど、確かにヒカルなら東京じゅうのゾンビを消す事も夢じゃねえな」


「その前に、まずは賊対策を終えてからだな」


「ま、そう言う事か」


 俺達の車は更に新宿の奥へと進んだ。タケルが標識を見て進んでいく。


 俺は素朴な疑問をタケルにぶつける。


「しかし皆が皆、東京の地名を覚えているんだな」


「渋谷、原宿、新宿、池袋、東京、上野、秋葉原、日暮里、巣鴨…。有名なところは確かに覚えてるな。別に東京に住んだわけでもねえのにな」


「やはりテレビか?」


「そうだな。テレビの影響が大きいだろうな。平和な時はテレビでよく放映されていたからな」


「その世界を見て見たかった」


「そうか。ヒカルは知らねえんだもんな」


「ああ」


 タケルが標識を見て言う。


「もうすぐ新宿駅だ。しっかし、ゾンビが多いな」


「車の進行を妨げなければ無視して行こう」


「わかった」


 そしてタケルが言った。


「このあたりが新宿駅周辺だ。アルタ前って言や人がごった返す場所だったんだ」


「なるほど。ここは普通の人間がゾンビを回収するにしては危険すぎる場所だな」


「だな。多すぎる」


「ここに、ゾンビを回収しには来ないだろう」


「そうだな」


 これだけゾンビが多ければ、護送車と言えどもひとたまりもないだろう。実際俺達のスポーツカーの周りにも相当の数のゾンビが集まって来た。


「停めろ」


「わかった」


 流石のタケルも緊張気味だった。かなりの数が迫ってきているので、俺もバールでは対応しきれなかったかもしれない。そしてすぐに日本刀の柄に手をかけた。


「飛空円斬」


 見える範囲に剣撃が広がっていき、波討つようにゾンビが斬れていく倒れていく。車の反対側も同じように斬り、そしてすぐさま車に乗る。


「はははは!」


「どうしたタケル? 何がおかしい」


「まるでドミノ倒しだ」


「なんだそれは?」


「板を並べて順番に倒していくのさ。こう、パタパタパタパタってね」


「なるほど。一度見てみたい」


「なら、どっかおもちゃ屋とかでドミノを回収していこうぜ! 拠点に帰ったら皆でやろう」


「それはいい」


 そして俺達は新宿アルタ前を抜けていく。


「ここを真っすぐ抜けると、新宿御苑つう公園がある」


「公園か、ならそこに向かってみよう」


「まあ、そうだな。行ってみっか」


 更に道なりに進んでいき、俺が窓の外のゾンビの様子を伺っている時だった。


「おい! タケル!」


「な、なんだよ! びっくりした! 何かあったか?」


「服屋だ!」


 タケルが車を停めた。


「おっ! ヒカルお気に入りのル〇ヴィ〇ンじゃねえか」


「降ろしてくれ!」


「へいへい」


 そして俺は再び飛空円斬で周囲のゾンビを斬り飛ばした。タケルが車の窓を開けて聞いて来る。


「どうすんだ?」


「持って行っても良いか?」


「いいんじゃね? ゾンビしか居ねえ街だし」


「なら、入り口を斬るから、車を中に入れよう」


「は? 店の中にか?」


「ちょうどそこから車が入れるだろう」


「確かにな…まあ、やるけどよ。その…なんだ…、店先にちっさい小屋みてえのがあるだろ?」


「ああ」


「四谷警察署とかって書いてあるんだけどよ」


「なに? これは警官の詰め所か?」


「そういうこった。なんか気がひけるよな」


 だが俺が知っている警察はミナミを撃った賊だ。俺は全く気にならない。


「賊の仲間になっているかもしれん」


「いや、警察の服を着てるから警察って訳でもねえかもよ」


「まあ…そうか。さっ! 早く車を入れてくれ」


 俺は気にせず車を店の中に入れてもらう事にする。


「へいへい」


 タケルは俺のお願いを聞き入れてくれた。俺は車が通れるように入り口のガラスを斬ると、タケルは車をゆっくりと建物の中に入れる。


「あの時は、リュックだったが今日は車だ」


 タケルが苦笑いをして言った。


「わかったよ。詰め込めるだけ詰め込むんだろ? ヒカルは、ほんとハイブランドが好きだな」


「これは良いものだ」


 そして車を店の中に入れて、かかっている服を全部外し人形が来ているものも全て入れていく。するとタケルが言った。


「なんかよ。フェ〇ーリでル〇ヴィ〇ンに突っこんで、狭いトランクと車内の隙間という隙間に高級な服を詰め込むつーのは背徳感がすげえな」


「つべこべ言うな。ゾンビが来るぞ」


「へいへい」


 そしてめぼしい物を全て詰め込んで、俺はゾンビの気配がする店の入り口に行く。すると四方からゾンビが迫っていたので、飛空円斬でゾンビを斬り捨てた。すぐに店内に戻り車に乗る。だが俺の座席の足元にもビッチリ服が詰まっているので、そのまま膝を折り曲げてドアを閉めた。


「あははははは!」


 タケルが笑う。


「何がおかしい」


「そんなにしてまで、ヴィ〇ンの服を確保したいなんてな!」


「皆からもお願いされているんだ。次にあったら私達のもお願いするとな」


「なんだよ! やっぱあいつらも欲しいんじゃねえか!」


「女とはそういうものなのだろう?」


 俺には良く分からないが、彼女らは遠慮をしてハッキリ言わない。だから俺は関係なく高級な服は回収すると決めているのだ。


「しっかし窮屈そうだな!」


「仕方がない」


 俺は服やバッグに押しやられながらも、新宿御苑に向けて出発した。新宿御苑は店から目と鼻の先ですぐに到着する。


「で、どうするよ?」


「俺が柵を斬る。そのまま中に入ろう」


「ははは、フェ〇ーリで都心の公園に入るつーのも背徳感あるわ」


「まっていろ」


 そして俺は車を降りて、公園に続く道の柵を斬る。


「そこから入れる」


「わかった。歩道を走るのもまたあれだな」


 タケルがブツブツ言いながらも公園の中に乗り入れる。するとまるで田舎と同じように、木々が生えており広い空間が出て来た。中にもゾンビがいたので、直ぐに車を降りて飛空円斬で全て切り倒す。運転席からタケルが俺に向かって言った。


「どうだ? 東京には、こういう場所もあるっちゃあるんだぜ」


「草が生えている。そして思いの外ゾンビが少ない」


「まあゾンビは人間のいる場所に向かうからな、こういう場所には少ないのかもしれねえ」


「そうだろうな」


 車で公園内を走るが特にめぼしい物は無かった。ところどころに低い建物があるものの、こんなところにわざわざ人間が訪れる事は無い。


「ここは確認の必要がない。先に進もう」


「わかった」


 公園を出て、道路を少し進むと壁に囲まれた場所が見えて来る。


「タケル、あれは板金屋か?」


 壁に囲まれた場所は以前にもあった。車のリサイクルとやらをしている場所や、コンクリートを作る工場がそれだった。だがタケルが言う。


「違う違う。こんなところにリサイクルの工場なんてねえよ。こりゃ、なんだろな? 俺も詳しくねえけど」


 そしてタケルが壁の周りを車で走りある看板を見つけた。


「えーっと、ここは赤坂御所だってよ」


「なんだそれは?」


「日本の偉い人が住んでいたところだな」


 ここは壁が高くかなり堅牢な作りになっているようだった。


「城みたいなものか?」


「まあそんなところだ」


「タケル!」


「あ、待て待て! 天皇の建物にフェ〇ーリで入るのはちょっと勘弁な!」


「なるほど。王のいる場所に馬車で入るようなものか?」


「まあそんなとこだよ」


「わかった。一旦引き上げるとしよう」


「ああ」


 タケルはアカサカゴショの周りを周り、再び首都高速の上り口を見つけて拠点に向けて走り出すのだった。だが俺は、あの場所…アカサカゴショとやらが凄く気になっていた。あそこの中にゾンビの気配がない場所があったからだ。もっと内部に行かないとはっきりとはわからないが、もしかすると安全圏があるのかもしれない。


 タケルが嫌がったので無理に入らなかったが道は覚えた。バイクで回収作業をする折に、ここを調査してみるのはありだ。服でパンパンに詰まった車内で俺はそんな事を考えるのだった。

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