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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第661話 東京の再現、試験体繁殖現象を確認する

 俺達はアッシュバーンに入る前に、装甲トラックを停めて、あるおぞましい状況を皆でみていた。


「最適化……してる」


 研究員の一人が、おぞましいものを見ながらそう言った。


 視線の先で、ゾンビがゾンビを喰らっているのである。一度も、こんな状態など見たことが無かった。あたりは不気味に黒く染まり、この世の終わりのような人間が生きれるとは思えぬ光景が広がっている。そんな背景を背にして、ゾンビがゾンビを食うという異常事態。流石に皆は、身震いを隠せなかった。


 タケルが、薄気味悪いものを見るように言う。


「てか、あれ、食うって言うのか? 刺してる? なんだありゃ」


 一体のゾンビの腕が、二体のゾンビに突き刺さっている。刺されているゾンビは、ただ痙攣していて、少しずつやせ細っていってるようだ。それを見て、アビゲイルが青い顔をして言った。


「身体を変化させてます……。あれは、手から吸収しているのです」


 ボコッボコッっと、喰らっているゾンビの体が膨らんでくる。


「なぜだ?」


「弱い個体を淘汰して……強くなるため……」


「他の個体を喰らって、進化だと?」


「その……ようです」


 その異常事態は、アッシュバーンに近づくほどみられるようになり、俺達は、それを確認するために、止まって観察していたのだった。


 ズルゥ……。


 やせ細ったゾンビが、皮のようになって地面に落ちた。吸い込んだゾンビが、どんどん形を変えて大きくなっていく。そこで俺の気配感知に、違いが現れてきた。


「試験体と、同等の個体になりつつある……」


 そう言うと、皆が驚愕の声を上げた。


「科学的に開発しなくても、自分達だけで進化してるって言うのか!?」


「そのようだ。クキ」


 頷きながら、オオモリが言う。


「バイオリンク……急速進化じゃないですか」


 アビゲイルも頷いた。


「これで確定です。予め、放射線に対応するように、作られた新型の株です」


 アビゲイルの言葉に、研究員が小さくつぶやく。


「バイオ・ユニバーサル・リンク・インターフェース……完成してたんだ……」


 それを聞いて、クキが苦虫を嚙み潰したような顔をした。


「これは……東京と同じだな」


そうだ……俺達は、一度これを経験している。核弾頭で焼けた東京には、進化したゾンビが大量にいた。皆は、あの時を思い出して身震いしている。


 マナが呟いた。


「東京……あれこそが、奴らの実験の第一段階だったんだ……」


「そうですね。愛菜さん」


「全ては、集約されていくってわけ?」


「そう考えるのが妥当じゃないですかね」


オオモリとマナの会話を聞いて、アビゲイルが尋ねてきた。


「話に聞いていた、核攻撃の後の東京が、こんな感じだったんですね……」


 クキが頷いた。


「そうだ。俺は、それを東京で見た。だが、それよりさらに、進化しているようだ」


 シャーリーンが首をすくめる。


「世界でのことは、全て奴らの掌の上で行われているという事ですね……」


 ベルリンやローマでは、俺達が事前に防いだが、奴らはこれを作り出すためアメリカを実験場にした。ゾンビが少しずつ知恵をつけ始めたり、試験体へと進化するバケモノを大量生産するために。


「まずは、片付けよう」


 俺が、トラックから降りる。新しく生まれようとしている試験体に、剣技を振るう。


「屍人、乱波斬!」


 シュパパパ!


 試験体になりかけのそいつはバラバラになって、人間の肉片へと戻っていく。細胞を死滅させる屍人斬で無ければ、何度も蘇る可能性があった。トラックに乗り込み、皆に告げる。


「ここからは、更に過酷な状況が待ってるだろうが、俺が何とかする。安心してくれ」


 黙って、全員が頷いた。そこでタケルが、俺に言う。


「こりゃ、闇雲に走ったらあぶねえな」


「そうだタケル。いきなり試験体の巣窟に入る可能性がある。俺が何とかするがトラックが壊されると、皆が歩きになってしまう」


「了解。んじゃ、ゆっくり行くぜ!」


「そうしよう。ミオ、ツバサ、お前達も周辺の気配感知と、聴覚強化で聞き分けるんだ。自動で生まれて来る試験体が、どう進化するのかが未知数すぎるからな」


「わかったわ」

「了解」


 ゆっくりと、黒く染まった街を走り出すトラック。今までのように、快調に飛ばす事が出来なくなり、俺は前世の魔王ダンジョンの下層に向かった事を思いだす。あの時少しずつ仲間のレベルを上げながら、神器をそろえて進んでいった。俺は既に魔王ダンジョン最終層をクリアできるレベル、いざという時は、全てを一人で対応せざるを得ないだろう。


 そして、俺とミオが顔を見合わせた。


「この先の町で試験体が……増えている」


 案の定、あちこちで新種が生まれているのを察知した。気づかれれば、派手な戦闘になる。


「タケル! ゆっくり走ってくれ! 俺は、屋根の上に登る」


「あいよ」


 トラックを出て、屋根の上に這い上がり、気配感知をしながらあたりの様子を伺った。運転席のタケルに合図を送ると、トラックが停まる。


「前方の集落が、試験体だらけだ。大量破壊する事も出来るが、来たのを敵に悟られるかもしれんから、迂回して市街地の周りを回ろう」


「りょーかい」


 車は道路を右折して、未舗装の荒れ地に進んだ。大量除去すれば、気づかれてモーガン・ウイリアムに逃げられてしまうかもしれなかったからだ。


「厄介な……」


 もはや……生存者の生きれる環境ではない。試験体になれば、緩慢な走るだけのゾンビではなくなる。奴らの動きは立体的になり、窓や屋上から入り込んで来るだろう。左手の市街地は……完全に死の町だ。奴らがアッシュバーンに拠点を置いたのは、米軍が易々と踏み込めなくなるから。完全に、こうなる事が分かっている行動だった。


 すると、防護服に包まれたオオモリが、顔を出して言う。


「ヒカルさん。このリーズバーグという都市を迂回すれば、アッシュバーンの前に出ます」


「分かった」


 雑木林が前に出て来たので、俺は剣技を振るった。


「重推撃!」


 木々を吹き飛ばしながら、軍用トラックが走る道を作る。すると、その先に川が見えてきた。


「ヒカル! 川だ。迂回して橋を探すか?」


「いや。いい、一旦止めろ」


 俺が車の中に入り、スーツと靴を脱ぎ去る。パンツ一丁になると、女達がじっと俺を凝視している。


「……川を越えるぞ」


「「「「はーい」」」」


 そして俺が先に川に入り、タケルに手招きをした。俺に向かってトラックが進んで来たので、そのまま俺の上に乗っかるようにしてもらう。そのトラックを持ち上げて川に入り、沈まないように担ぎながら、泳いで川を渡り切った。そのまま、陸地に乗った車輪が、また動き出して向こう岸へと渡る。


「重推撃!」


 剣技で木々を吹き飛ばして、そこをトラックが進んでいく。


「タケル、一旦、停めろ」


「あいよ」


 そして俺がトラックの中に入り、タオルで体を拭いた。なぜか、女達がじっと俺を凝視している……。すると、ミオがすこし嬉しそうに言った。


「パンツぬれたでしょ? ほら、新品あるわよ」


 そう言って、俺に袋に入った新品のパンツをくれた。


「おう。気が利くな」


 そのままパンツを脱ぐと、更に女達の目が、釘付けになっているような気がした。俺はお構いなしに、パンツを履き替えて濡れた物を外に放り出した。


「スーツを」


「あ、ああ……そうね……」


 するとそこで、突然、デルが口を開いた。


「……は、始めてみたけど……すげえな」


「なにがだ」


「ヒカルの身体というか、全部がすげえ」


「そうか。まあ、鍛えたからな」


「き、鍛えられるもんなんだな、それ」


「そうだ」


 そうして俺はまた、トラックの上に這い上がって、タケルにゆっくり進むように指示を出すのだった。

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